「Liberty」 No.2
「その子が気になりますか?」
顔を上げると、水野さんが少し首をかしげ私の手元を見ている。
私が手の中には、小さな鉢があり、蜜柑の房のような形の灰色の多肉植物が植えられていた。
「この子も多肉植物なんですか?
なんだか、小さくって石ころみたい」
小さくて目立たない筈なのに、
何故か惹きつけられた。
水野さんは、
しゃがんでいる私の隣にしゃがみ込む。
「そうですよ。
この子はリトープスという多肉植物で、
動物などに食べられないように、
石に擬態しているんです」
いつもは、
フワフワとした天然な雰囲気の水野さんが、
多肉植物のことを話す時は真剣になり、
別人のようだ。
突然、水野さんはふっと笑って
「でもね、可笑しいんです。
この子、擬態してまで隠れているのに黄色のお花を咲かすんですよ。
一体何を考えているんでしょうね」
愛しそうにリトープスを見つめる。
「誰も見てくれなかったら、寂しくて、
誰かに見つけてもらいたくなる時が
あるんじゃないかな…」
気付いたら、そんなことを言っていた。
リトープスを見つめていた水野さんが、
少し驚いたような表情になり、
私の方を見た。
「もしかしたら、そうかもしれませんね。
だとしたら、命懸けで自分を表現している、
ということになりますね」
…命懸けか。
私はそんなに、何かに一生懸命になったことが
あっただろうか。
ーーーーーーーーNo.3に続くーーーーーーーー
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