「メロンソーダ」No.4
体がグラッと右側に傾いた。
「危ない!」
小池さんに腕を掴まれる。
「理央さん!
下駄で縁石を歩こうとしないで下さい!
顔に似合わず、子供っぽいとこあるんだから…」
眼鏡の奥で、わざとらしく睨んでこっちを見ているが、元の顔が優しすぎて全然こわくない。
「はーい。縁石があると、
体が勝手に乗っちゃうんですよね」
撮影が終わり、近くでランチを食べようと、
お店に向かっている時の出来事だった。
「あ、あれです。
鎌倉のレトロな喫茶店行きたくて」
小池さんが指差す先には、
古民家風の喫茶店があった。
重い扉を開けて中に入ると、
女性の店員が気付き、案内してくれた。
どうやら距離感から推測して、
奥で調理している男性と夫婦のようだった。
「私はオムライスと、メロンソーダにします」
「理央さん…食べものの好みも、
なんか子供っぽいですね。
私は、カルボナーラとアイスコーヒーにしようかな」
(子供っぽい子供っぽいって…)
「どうしたんですか?」
顔に出てたのだろうか。
小池さんが、不思議そうに聞いてきた。
「だって、顔は大人っぽいけど、
中身は子供って言われてるみたいだから」
私もわざと睨んでみた。
「そうですよ。…そうだけど、
そのギャップが可愛いなと思ったんです」
運ばれてきたメロンソーダと一緒に、
写真を撮ってもらったけど、
ぼかし強めにしてと頼みたかった。
だって、顔が真っ赤だったと思うから…。
ーーーーーーーーNo.5に続くーーーーーーーー
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