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「メロンソーダ」No.7
青空に、入道雲が綿飴のように浮かび、
蝉の声が響く。
沢山の向日葵はみんな同じ方向を向き、
陽を浴びている。
白のノースリーブのワンピースから出た腕が、
ジリジリと熱い。
カメラをセットしていた小池さんが、
こっちを見た。
「そうだ、いいもの持ってきたんだった。
ちょっとこっち来てください。」
ゴソゴソとキャリーケースから何か取り出し、
私の頭に被せた。
「帽子?」
「そうです。
この間、古着屋さんを見ていたら、
向日葵がついた麦わらみつけて。
やっぱり似合いますね。
大人っぽさと少女っぽさの、バランスが絶妙」
そのまま、
カメラを向けて何枚か写真を撮っている。
「理央さん、向日葵の中に立ってください。
…そそ、その辺で、麦わら帽子を摘んで、
少し俯き加減に」
私は言われた通りポーズをとった。
「元気な向日葵と、憂いのある理央さんの、
コントラストが良い感じです」
私は小池さんのセンスが、すごく好きだと思う。
「ジャーン!こんな小道具もありますよ」
「わぁ!シャボン玉だぁ」
また子供っぽいと笑われそうだけど、
すごくワクワクしている。
「これを、この辺でやってみて」
私は、思い切りシャボン玉を吹いた。
「んーもうちょっと優しく吹いてみて。
少しずつ、長く吹くと、沢山飛ぶから」
ふーーーーっ…すぐに途切れてしまう。
小池さんが歩み寄る。
「見ててください」
小池さんが、沢山のシャボン玉を飛ばす。
だけど私は、小池さんの口元に釘付けで固まっていた。
「もっかいやってみて」
小池さんがシャボン玉を差し出す。
「うん…」
私はシャボン玉の吹き棒を見つめ、ドキドキして
少しの間動けなかった。
小池さんがハッとした表情になる。
「あ…ごめん」
「まあ…別に嫌…じゃないけど…」
私はそのまま、シャボン玉を吹いた。
今度は途切れることなく、沢山のシャボン玉が
青空に飛んでいった。
ーーーーーーーーNo.8に続くーーーーーーーー
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