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「Liberty」 No.5

「grow」の前まで来て、ふと思った。
喜んで、付いて来てしまったけど、
よく考えたら、店内に男の人と2人きり…。

これって大丈夫なの?
考えてもわからず、
恋愛経験のない自分を恨んだ。

「どしたんですか?」

水野さんは、何も気付いていないみたいに、
鍵を開ける。

店内に入ると、レジ横の台の上にドサっと段ボールを置いた。

「さっきから気になっていたんですけど、
何が入っているんですか?」

思わず聞いた。

「ああ、これね。
ほら来月クリスマスでしょ?
今年はもみの木を仕入れたんで、
飾りを色々選んでたら、
こんな量になっちゃって」

そういえば、もう11月も終わりに近づいていた。

「今、ちょっとやってみて良いですか?
片瀬さんは多肉でも見てゆっくりしてて下さい」

なぜか少しほっとした。

水野さんが、ガサガサと音を立てて、
奥からもみの木を出してくる。

カッターを使って、段ボールを開けると
中には色とりどりで、キラキラと光る飾りが
沢山詰まっていた。

「綺麗…!」
思わず呟いた。

水野さんが、無骨な手で、
飾りをひとつひとつ木に結んでいく。

寂しげだった木の枝が、華やかに輝く。
何だか魔法みたいだった。

ーーーーーーーーNo.6に続くーーーーーーーー



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