これだけは言わせてほしい‼️「交渉人・遠野麻衣子」は新装版じゃないっす

・私は過去に「1985年の奇跡」と「誘拐」の2作を新装版として出したことがあります。(どちらも双葉文庫)
・「1985年の奇跡」はほぼ直さないまま、そして「誘拐」は結構手を入れました。これはある登場人物に希望を持たせるためで、あのままじゃ可哀想過ぎる、と思ったからです。
・何てわたくしは優しいのでしょう。笑笑。
・ただ、どちらも時代背景は変えていません。「1985年〜」はタイトル通り時代を変えると意味のない小説ですし、「誘拐」にも似たようなところがあります。
・しかし「交渉人・遠野麻衣子」では、2003年に出た本にもかかわらず、時代を現代に変更しました。
・これ、簡単に聞こえるかもしれませんが、私の認識では2003年と2023年では話し言葉も違いますし、風俗、文化、風習も変わってます。警察も同じで、時代の変化はどんなジャンルにも平等です。
・風俗というのは、ファッションも含まれます。もちろん刑事は今も昔も背広が多いと思いますが、何しろ遠野麻衣子は女性捜査官ですから、そりゃ着る服も変わりますがな。
・その辺りのバランスも踏まえつつ直しを入れるのは面倒な作業であり、セリフひとつ変われば、前後の会話も変わります。私は決していい作家ではありませんが、細かいことにうるさい性格で(イヤな人だな、おい)、結構な時間をかけて直さざるを得ませんでした。
・何でそんな面倒なことを、とお思いでしょうが、小説は常にアップトゥーデートしていくべきだと考えているからです。
・もちろん、そんな機会はめったになく、建前としては「重版したら直せる」のですが、これだけ大幅な直しは出版社が嫌がりますし、暗黙の了解として、作家もそれはしないことになっています。
・それでも、私としては「交渉人」を現代の警察ミステリーとして通じると信じてましたし、その思いは今も変わってません。
・今回、河出書房新社、そして編集者の皆さまのお力添えもあり、全面的な改稿が可能になり、それならストーリーもある程度改変し、冗長な部分をスリムにしたり、より良い形にしましょうとなりました。
・それが私や編集者の義務であり、責任だからです。読者の皆さまに対し誠実でなければならないと信じているからです。
・おや、何だか偉そうになってしまいました。たかが五十嵐貴久ごときが。申し訳ありません。
・ともあれ、「交渉人・遠野麻衣子」は単なる復刻、復刊ではなく、ほぼ新刊本と同じでございます。
・そこんところを理解していただきたく、このように駄文をしたためる私です。よろしくお願いします。

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