プレスキックの重要性
前回、キッカーの話をしてこの選手のことを一言も出さないのは失礼だ。
イングランドの至宝
「ジョニー・ウィルキンソン」選手。
第5回ラグビーワールドカップ優勝のメンバーだ。
ラグビーワールドカップの優勝チームはこの第5回大会以外全て南半球が優勝している。
北半球勢唯一の優勝だ。
そしてこの優勝は彼のキックがなければなし得なかっただろう。
この時のイングランド代表は第4回大会終了からの4年間、ほぼ固定メンバーだった。
4年もあれば若いメンバーが入ってくるはずだが、そういった選手がいなかったのか?あえてメンバーを固定していたのか?「知らんけど」メンバーが変わることはなかった。
とても珍しいことだ。
イングランドとしてはジョニー・ウィルキンソン選手がいる間にワールドカップを優勝するため、ある種賭けだったのだろうと想像する。
だがイングランドは4年をかけて強さを増していった。
その強さは他の代表チームとは違うものがあった。
当然イングランド代表もジョニー・ウィルキンソン選手を含め、スター選手ばかりだった。
だかラインアウトの精度、スクラムワークなど、皆が皆をわかりあっているような寄せ集めのチームとは違うものがあったのだ。
このイングランド代表の優勝と最近日本でも同じようなことがあったのを思い出す。
それは2021年の天理大学の日本一だ。
天理大学も4年間かけてシオサイヤ・フィフィタ選手がいる間に日本一のチームを作ろうとしていたように思う。
そしてフィフィタ選手と同じように、スタンドオフに1年から出場していた松永拓朗選手がいた。
松永選手が4年後に素晴らしいスタンドオフに成長していたことが優勝を導いたといっても過言ではない。
そして今も東芝ブレイブルーパスでも活躍し安定したプレスキックも持ち味のひとつだ。
第5回の準優勝チームは我らがオーストラリア代表であった(泣)。
僕は、今でもこの時のオーストラリア代表は歴代最強チームだと思っている。
この決勝戦は歴史に残る名勝負だった。
この試合は80分では決着がつかず、延長戦となった。「ラグビーで延長戦って殺す気か?」と心から思ったものだ。
両チームとも足がつる選手が続出していた。
まさに死闘であった。
最後にこの勝負に終止符を打ったのがジョニー・ウィルキンソン選手のドロップゴールであった。
オーストラリア代表は負けはしたが、涙を流しながら拍手したのを覚えている。
このころはサッカーイングランド代表のデビッド・ベッカム選手の人気も凄かったが、イングランドの人々から至宝と呼ばれていたのはジョニー・ウィルキンソン選手のほうであったようだ。
ワールドカップを優勝に導いた功績だろう。
彼らはCMで共演もしている。
日本でもベッカムヘヤーが溢れ、イングランドのユニホーム7番を着た若者がたくさんいた。
そんな中、僕はラグビーイングランド代表の7番ニール・バック選手のジャージを着て、丸坊主で街をねり歩いていたのを思い出す。
気づく人は気づいただろうが、大半は「あいつバッタもん着てるやん!」と思われていたかもしれない。イングランドはサッカーもラグビーも白と決まっているが模様は異なる...。
当時はオーストラリア代表の7番ジョージ・スミス選手の大ファンだった僕が少しだけニール・バック選手に浮気をしていた時期でもあった...。
ミーハーだったのか。若気の至りだ。
ワールドカップやテストマッチ、ラグビーの勝敗を決めるのは「プレスキック」だ。
トライで5点、プレスキックをミスしてしまったら7点にならない。
ペナルティキック2本でトライを上回るが、トライでキックを決めていたら上回れない。
当たり前のことを言っているが、この得点のバランスを考えながらラグビーを観るとどれたけプレスキックが重要かがわかってくると思う。
何度も言うがペナルティキックやトライ後のキックは、入ればラッキーのボーナスゲームではない。「確実に決めなければならないのだ。」
ティア1の選手が何故緊迫したゲームでプレスキックを外さないのか?
それは観客の目が肥えているからだと私は思っている。
キックを外した選手に野次を飛ばすわけではない。
それよりも厳しい視線を送られるのだろう。
フォワードが命を削って確保したボールだ。それを簡単に得点することができる武器を外してはいけないと誰もがわかっているからだ。
フランスワールドカップまであと1年。
日本代表はまだまだ強くなる。
そしてラグビーを深く知ることで、観客の目が肥えれば、さらに日本代表は強くなる。
それが世界を代表する名キッカーが生まれていくことに繋がると信じている。
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