15.手話と出会って、未来の夢が生まれました
10年前から学び始めた手話のご縁で、私は今、一週間に一度、地元の聞こえない、聞こえにくい人と一緒に活動し、情報提供などの生活支援をする仕事をしています。
(近年は聴覚障がいのある方をこのように言うことが増えてきました)
支援スタッフは、その日その場に集まった方々と一緒に、昼食をはさんで、体を動かしたり手芸をしたり、いろいろな活動を楽しみながら、健康や行政、防災などの暮らしに関わる情報を伝えています。
その活動を通じて、本当に貴重な経験をたくさんさせてもらっていますが、残念ながらその内容をnoteの記事として公開することはできないので、またおいおい整理して可能な範囲で書けたらと思っています。
今日は私と、そこでのメインのコミュニケーション手段である手話との出会いのことをお話させてください。
手話の勉強を始めたのは2014年の秋でした。
人生にいくつかあった“運命の出会い”の中でも、これは間違いなくトップ3に入ります。
きっかけになったのは、その前年の2013年10月、私の住む鳥取県で全国で始めて手話言語条例が制定されたことでした。
その日、県議会でこの条例が成立したというテレビのニュースを見た時は、正直なところ私の中で「手話」と「言語」という二つの言葉が結び付かず、ただ不思議に思うばかりでした。
それまでは、ドラマで俳優さんが手話で演じるのを見たことがあるくらいで、手話を使う聞こえない人との接点は何一つなく、全く無知だったのです。
なのに、なぜかその日から条例成立時の歓喜に溢れた映像が胸に焼き付いて、「手話」という言葉が頭の中をぐるぐる回り始めました。
手話を学んでみたいけれど、私はもう50歳が目前、この歳で始めたって上達は覚束ないだろうな……と一年近く迷いましたが、結局諦めきれず、翌年から地域の手話通訳者養成入門講座に通うことにしました。
そうして続けてきて10年。
手話の世界は予想以上にずっと魅力的で、深くて、楽しくて、学ぶほどにもっと知りたい、自在に使えるようになりたいという気持ちが強くなります。
でも、やはりそう簡単にはいきません。
私の場合は何よりも、頭で覚えたように体が動いてくれないもどかしさと、読み取りの難しさに突き当たり、悩みました。
実を言えば、モチベーションが限りなく下がり、とても辛い時期もありました。
もともと手話通訳者養成講座で学び始めたこともあり、学ぶ目的がいつの間にか、「聞こえない人のために頑張らなければいけない」という意識にすごく寄ってしまったのです。
手話と日本語の間を瞬時に行き来して同時通訳するというのは、私には高い高いハードルでした。でも求められるのは、通訳として聞こえない人の生活に役立つことのできる“人材”。
「もっとろう者に会って付き合いを深め、生きた手話を学びなさい」とアドバイスされるのですが、なかなか思うように時間とエネルギーを割くことができず、毎日もがいている感じでした。
聞こえない人の耳の代わり、口の代わりになって情報保障をすること、権利擁護のために共に活動することが、手話を勉強する者の役割。それが十分に果たせないのは、努力も能力も足りないから。
誰に命令されたわけでもないのに、一人で勝手に思い込んで、行き詰まって、評価を気にして、自分にがっかりして。
手話を見ても楽しい気持ちがしなくなり、あわやドロップアウトというところまで行きました。
そんな私を引っ張り上げて励ましてくれたのは、最初に書いた生活支援の場に通われている聞こえない、聞こえにくい方々です。
それは言葉による励ましではありません。
そこでは大半の方が高齢であるにもかかわらず、皆さんが何に対しても意欲的で、次はあれをしたい、あそこに行ってみたい、と常に言われます。
予算の関係もあってできることは限られますが、その中で目一杯集中し、かつ楽しむ姿勢は驚くばかり。まさに年齢は人を図る物差しではないと実感し、たかが50歳60歳で自分に限界を作るなんてもったいない!と思うようになりました。
そして手話に関して言えば、上手下手よりも、一生懸命コミュニケーションしようとする姿勢そのものを、温かく受けとめてもらいました。それがどれほど有り難かったことか。
(もちろんそれは、病院などの生活上必要不可欠な差し迫った場ではないからなのですが)
私は形の上では支援する立場だけれど、決して一方通行ではなく、関わりの中では必ず互いに学び合い、支えて支えられるものなのだということも知りました。
そのうち「一気に外側にある理想の型に合わせようとするのではなく、私にできるやり方で、時間はかかってもひとつずつコツコツ積み上げて、力をつけていこう」と考えられるようになり、徐々に手話を大切に思いながら楽しむ気持ちが戻ってきました。
そうして今に至りますが、相変わらず七転び八起きで学び続けています。
ただし今は、続けている限りわずかずつでもポテンシャルは上がっていくと確信できるので、希望を持って楽しめています😊
そして目下妄想しているのは、いつか私の住む町に、誰でも気軽に手話と出会って学べる場所を作ること。
聞こえる人も聞こえない人も、ふらっと立ち寄ってお喋りして、互いに知り合って、ささやかなつながり(強制や束縛でなく)が広がっていく場にする。
(わーお、初めて文字にして言ってしまいました~💦)
この先実現したい望みが持てるのは幸せです。
私の人生に許された時間がどれくらいあるかはわかりませんが、今こんな気持ちでいられるきっかけになってくれた手話との出会いに、改めて感謝したいと思います。
読んでいただきありがとうございました🐪
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