「Jump of Chicken」企画書

【キャッチコピー】
失敗を恐れる少年に熱をもたらしたのは、絶対に失敗から逃れられないスポーツだった。

【あらすじ】
 その身1つで自分の身長を優に超える高さを跳ぶ走高跳。3回連続で失敗すれば競技終了。誰にも挽回のチャンスが与えられる反面、誰も失敗からは逃れられない。

 過去のトラウマから人前で失敗することに強い恐怖心を持つ小学6年生、影間永翔。そんな彼を臆病者と呼ぶ転校生、日高尽との衝突から、永翔は走高跳の世界にのめり込んでいく。

 他者の上に立つことを至上命題とする者。楽しさを優先する者。ミスを許さぬ完璧主義者。様々な勝負観を持つライバル達がしのぎを削る中、永翔は1つの思いを胸に立ち向かう。
「勝ってみせる。全ての失敗を成功の一部に変えるために!」

【第1話ストーリー】
 体育の授業。100m走で良いスタートを切る永翔だが、中盤で尽に追いつかれる。スパートをかけようとするも、永翔は失敗を恐れて力を抜く。結局、1位は尽に。
 尽は永翔になぜ手を抜くのかと掴みかかる。体勢を崩しただけと言い訳する永翔。級友の仲裁でその場は収まる。が、永翔はわざと手を抜いていたと尽に見透かされ動揺する。

 肩を落として帰宅する永翔。心配に思った母に促され、永翔の部屋に様子を見に来る父。永翔は、ためらいながらも父に思いを話す。
 過去の運動会での失敗がトラウマになっていること。以来、何事も手を抜いてやり過ごすようになったこと。
 永翔は、父との会話の中で、失敗を恥じるより、失敗から逃げる自身を恥じる気持ちの方が強いと気づく。

 翌日、体育の時間。種目は走高跳。砂場前にバーを設置して「はさみ跳び」を行う。初めてだったが、永翔は一定の手応えを感じる。
 永翔も尽もクリアを重ね、高さは上がり1m20に。怖気付く永翔に、尽はチキン野郎と悪態をつきながら挑戦に向かい、難なく成功させる。
 尽の悪態に悔しさを感じるも、何も言い返せない永翔。もう自分を恥じたくない。そう感じた永翔は、気がつくと尽に続いて跳躍していた。
 ギリギリ成功して着地する永翔。尽は驚きの表情で永翔を見る。見返す永翔は、勢いのまま尽に勝負を持ちかける。走高跳で俺が勝ったら、チキン野郎を撤回してほしいと。尽はそれに応じる。ただし、永翔が負けたら一生チキン野郎とあだ名するとの条件で。そこでチャイムが鳴り授業終了。勝負は週明け月曜の体育に持ち越された。

 勝負に向け、公園でゴムを使って練習する永翔。彼の前に中学陸上部のジャージを着た男女が現れる。ジャージ女は、未来の後輩への助言だと、高く跳ぶヒントを永翔に授けるとともに、全力で失敗しろと伝える。走高跳は、それができるかにかかっていると。
 ヒントを頼りに1人練習を続ける永翔。最初は人の目を気にしていたが、試行錯誤するうちにジャージ女の言葉の意味に気づき始め、やがて永翔は周りを忘れて熱中していく。ただ、高く跳ぶコツを掴んでいく一方で、永翔はこれだけじゃ尽に勝てないとも感じていた。

 月曜日。恐怖心を抑え込み、永翔は尽と向かい合う。勝負は単純。高さが上がっていく中、先に3回連続で失敗した方が負け。尽を見返し、そして自分自身を見返すために、永翔のプライドをかけた戦いが始まる。

【第2話以降ストーリー】
 尽との走高跳勝負に挑む永翔。速い助走スピードと力づくの踏み切りで跳躍を成功させていく尽。永翔は、思い切りジャンプしない、バーから離れて跳ぶ等、尽とは異なる跳躍でミスをしながらも食らいついていく。次第に高さも上がり、スピードとパワーを全開にして勝負に出る尽。一方永翔は、尽とは逆に勝負所で助走スピードを緩める選択をする。果たして勝つのはどちらなのか。

 永翔は尽との勝負を経て、度重なる失敗も、それを超えて成功を掴めばその一部に変えられると実感する。そして、同条件での試技が複数回与えられる走高跳なら、そのチャンスがいくらでもあると気付く。
 一方尽は、何事にも全力を出し切ることを旨としていたが、永翔との勝負でそれだけでは超えられないものもあると知る。尽はもはや永翔を見下してはおらず、自分とは違う方法で戦う彼をライバルとして意識し始めていた。

 永翔と尽は、中学に上がり2人揃って陸上部に入部する。再戦を誓う2人を待っていたのは、かつて永翔に助言を与えたジャージ女の岩貫冴と、彼女とともにいた丸井拓史だった。冴と拓史は走高跳を専門とする3年生で、冴は昨年全国3位の強豪。そんな冴に因縁がある様子の永翔たちの同級生、小林愛梨を加えた5人体制で陸上部走高跳パートが動き出す。

 陸上部として活動を行うにあたり、目標を問われる5人。3年生の冴は全国1位、拓史は自己ベスト更新を掲げる中、入部したての永翔、尽、愛梨はすぐには言葉にできない。冴が競技をするなら1番を目指さなければ意味がないと述べる一方、拓史は楽しんで競技ができる目標にすべきではと言う。

 5月の中頃にある地区の学校交流試合に向け、背面跳びの形を身に付けたい1年生3人。尽は冴の考えに賛同し、彼女の指導により練習を行うことに。目標に迷う永翔、冴に教えを請いたくない愛梨は拓史に指導を受ける。冴に魅かれながらも、拓史の言うことも間違いではないと感じる永翔は、目下の目標を交流試合で尽に勝利することと定め、練習に励む。

 冴とともに競技場で練習する尽。小柄ながらも器用さを活かし徐々に上達する愛梨。そんな中、永翔は中々上手く跳べず悪戦苦闘していた。拓史に励まされ、彼の考え方に触れながら、永翔は今の自分にとって「成功」とは何なのか、「失敗」とは何なのかを考える。
 交流試合までに背面跳びが形にならなければ、はさみ跳びでの出場となる。しかし、尽はきっと背面跳びを習得してくるはず。尽に勝つため、に永翔は背面跳びを身に付けられるのか。

 交流試合には近隣の3校が参加。永翔たちの所属する南中と、北中、西中。他校のライバルとの初対戦に湧く永翔たち。優勝候補は北中の3年生、北口凛太郎。4種競技を専門とする選手だが、走高跳の記録は拓史よりも上。凛太郎に傲りを見た永翔と尽は彼の鼻を明かすため、やる気を漲らせる。
 また、西中には永翔たちと同じく1年生の西宮恭介が走高跳にエントリーしていた。負けん気が強い恭介は、永翔たちへの対抗心をあらわに一方的に絡んでくる。凛太郎を強く意識する永翔たちに、相手にされていないと気付かずに。

 一方、女子選手は冴が圧倒的実力であるため、他校の選手は萎縮していた。北中の1年生、高木遥もその中の1人だった。遙は初めての試合への緊張に長身を縮こまらせる。そんな遥に愛梨は敵意を募らせる。でかいだけのやつには負けない、身長がなくても跳べることを冴の前で見せつける。冴に走高跳をやめさせられた姉の代わりに、と。

 交流試合が開会し、各競技が始まる中、走高跳の選手にも招集がかかる。時間の都合上、低い高さから男女混合で行われる。各選手は跳び始める高さを申告。愛梨が1m10、永翔と尽が1m35、拓史と冴が1m45からのスタートを選ぶ。また、恭介は1m35、凛太郎は1m50からのスタートを選んだ。

 1センチ、0.1秒のズレがミスに繋がる走高跳。遙を意識して自分の跳躍に集中できていない愛梨と、そんな愛梨の目を気にして萎縮する遥は、思ったような跳躍ができずにいた。先に自分を取り戻すのはどちらか。

 男子では、西中の恭介が1年生ながらもはさみ跳びでダイナミックな跳躍を見せつける。対抗心を燃やす永翔と尽。尽は未完成ながらもスピードを活かした背面跳びを披露。そして背面跳びの習得に苦戦していた永翔は、今の自分が最も高く跳ぶために、ある跳び方で勝負に臨む。
 実力が拮抗する1年生の3人。もし記録が同じだった場合、失敗の数で順位が決まる。どの高さに何回挑戦するのか。順位がかかった試合の緊張感を3人は体験する。

 そして、拓史、冴、凛太郎がトップを争う。拓史の自己ベストは1m55。冴は1m60。拓史が自己ベスト更新を目標に掲げるのは、これまで負け続けてきた冴にせめて追いつきたいという思いがあったからだった。
 全国大会に向けて調子を上げている冴、磐石の跳躍を見せる凛太郎。拓史は彼なりの意地で2人に食らいつく。交流試合を制するのは誰なのか。

 拓史との練習、そして交流試合を通じて、自分が納得できる目標として、やはり全国1位を掲げることに決めた永翔。全国大会に出場するためには、指定された試合で参加標準記録を上回らなければならない。永翔は、尽とともにまずは標準記録の突破を目指すこととする。
 愛梨は、かつて姉を走高跳から引退させた冴に勝つことを目標とする。しかし冴は全国トップクラスの選手。結果的に、愛梨も全国レベルを目指すことに。

 各々の目標を見据え、公式大会へ臨んでいく5人。1年生の3人は徐々に異なるスタイルの跳躍を身に付けていきながらも、中々勝ち上がることはできない。同地区の同級生達とも出会い、永翔は尽以外にもライバルを得ていく。

 3年生の2人は中学最後の夏。冴は全国大会出場権を獲得するため、拓史は自己ベストを更新するために試合に挑む。そして、永翔は全国を舞台に戦う選手の凄まじさを目の当たりにする。上級生のハイレベルな戦いに己の未熟さを痛感する永翔。全国大会への参加資格を得るための試合にすら出場できない現状に道のりの遠さを実感する。

 他校との合宿を通じ、永翔は自分に何ができて何ができていないのかを明確にするため、「失敗の細分化」を行う。強みと弱みを自覚し、更なる成長に繋げることができるのか。

 尽は、スピードを活かした自分の跳躍スタイルにはフィジカルの強さが必要不可欠だと自覚するも、一朝一夕で身につけられるものではないと苦悩する。彼は現状のフィジカルを100パーセント活かすための動き方を模索する。
 愛梨は、背面跳びの形を綺麗にマスターし始めているものの、記録は伸び悩んでいた。かつて同じく小柄ながらも健闘していた姉の姿を胸に、練習に打ち込む愛梨。悩みながらも、決して冴には教わろうとしない。やがて、2人わだかまりが顕在化し、ぶつかり合うこととなる。

 それぞれが課題に向き合いトレーニングを重ねた冬が明け、永翔たちは2年生に。新たに男女1人ずつの後輩を迎え、新体制となった陸上部。
 永翔、尽はそれぞれ試合で練習の成果を見せ、全国大会出場権を得るための試合への参加権を得る。決められた競技日に結果を出さないといけないため、コンディションの調整が鍵となる。2人はともに全国大会に出場することができるのか。

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