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おまつりの味

GW後半の初日、大崎上島に行った。
いつもお世話になる釣り船の船長一家が毎年『漁師祭り』でお店を出すので一度行ってみたかったのだ。
大崎上島には橋がかかっていないのでお祭りの会場へはフェリーに乗らなければ行けない。祭りで酒が飲みたい私たちは港のある安芸津までJRで行くことにした。乗り換えが2回あり、2時間近くかかる。ちょっとした旅である。そしてその途中には私が結婚するまで住んでいた町がある。海沿いの小さな町。私の釣りの原点でもある場所なのだが、実家が引っ越してからは立ち寄ることがほとんどない。良い思い出がないからだ。窓の外を眺めながら夫が「ここもだいぶ変わったな」と言った。確かに私が住んでいた頃、将来この町にモスバーガーなどができるとは夢にも思わなかった。そしてしばらく夫とその町の地理的な話をしながら列車の窓の外に広がる海を見ていた。
その後、乗り換えを経て安芸津駅に到着。
安芸津駅から徒歩5分で港に着き、そこからフェリーに乗った。フェリーの窓から「万」と大文字焼き的に書かれた山が見えて、なにあれ、となり、スマホで調べたらこの辺りのことを詠んだ歌が万葉集におさめてあるそうで、毎年11月にやはり大文字焼き的な祭りが行われていてその焼きの跡らしかったが、その祭りが「火とグルメの祭典あきつフェスティバル」という万葉集に一切ちなまない名前をしていてびっくりした。
出港から30分ちょっとで大崎上島に到着。
港から祭り会場までは少し遠いのだけれど、ウォーキング代わりに歩くことにした。知らない場所を歩くのは楽しい。そこが海のそばならなおさらだ。水温が低くまだ海藻もまばらな海にのんびりでかいチヌが泳いでいたりして心が和む。夫と海の様子や人の畑についてあれこれ話しながら歩き、これまた30分くらいで祭り会場に到着した。
漁師祭りは魚の直売や鯛めしや魚のフライや島の野菜などが売られているこじんまりとしたお祭りだった。会場で釣り船での知り合いや船長のご家族に挨拶などしながら鯛めしと魚のフライとタコスとビールを購入し、会場横の港に移動して階段に腰掛けてそれを食べた。鯛めしは船長のお母さんのレシピで炊かれていてとても美味しい。米なのにビールがすすむ。目の前に広がる海はものすごく凪いでいて、明るくて、初夏だった。海の中まで日差しが入ると魚がよく釣れる。今日釣りに行ってたら鯛がつれたかな、などと考えた。
島の中学生たちがクレープの移動販売車に大行列を作っているのを微笑ましく見ながらビールを飲んだ。お祭りのチープな甘味は思い出の味になる。
祭りには1時間程度滞在し、また歩いて港まで戻ることにした。途中でラーメンで有名な食堂があることを思い出し、そこでラーメンを食べてフェリーとJRに乗って帰った。


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