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牛乳

牛乳は白い
なぜ白いのか、なんて考えた。
脂肪か、カルシウムか。
光に反射して白く見えるのだと
ガゼインミセルは言う。
その白さがガゼインミセルだろうが、
シロインミセルだろうが、多くの人にとってはあまり問題でない。
その成分が何であるか、牛乳も多分知らない。
自らの白さの理由を忘れて
この白さこそ私だと、
みずみずしく並んでいる。

私もそう。君の存在した事実も忘れて、
初めからそうでした、という顔をして
平凡な社会の一員をやるのだ。

その身に、君の流れるのを忘れて。
君以前と君以降、私は別人であるのに。

私の成分表には
はっきりと、そして慎ましく
君が刻まれている。
しかも君は、他の成分達を引き連れて
先頭に慎ましく立っている。

君を除いてしまえば、私は私と言えないようだ。気味悪いっちゃそうだけど。

君を含有しているから
成分無調整の私が存在する。

コーヒーと踊ろうと
シチューと寝ようと
ケーキに愛されようと
君ほど近しいものはいない。

だって主成分君だからね。
気味悪いっちゃそうだけど。

君は私で、私は君みたいなものだから。
私は私を愛するほど、君を愛することになるだろう。

白くみずみずしい牛乳と
ガゼインミセルみたいな

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