いつか働かなくてよくなる日まで・・。
5月31日(金)
不覚だった。
朝、起きれなかった。
僕は覚悟を決めて、午前半休する旨を上司にメールした。
そして、トーストとコーヒーという簡単な朝食を済ませた後、久しぶりに息子とスマブラで対戦をした。
相変わらずまったく歯が立たなかったけど、思いがけず朝お家で一人ぼっちにならずに済んだせいか、息子は、いつも以上に楽しそうに見えた。
その後、行きがかり上、僕が虫になって彼を追いかけるというお戯れが始まった。
キャッキャ言いながら狭い家の中を逃げ回る息子を追いかけて、ようやくつかまえた僕は背中越しに彼をぎゅっと抱きしめる。
肋骨と肋膜の凹凸を感じるくらい痩せた躯体を感じて僕はハグする腕の力をゆっくり緩めながら、愛おしさで胸がいっぱいになった。
時間になったので、仕方なく家を出た。
しかし、外は小雨が降ってたから、慌てて傘を取りに家に戻ったら、玄関先まで息子がやってきて
「どうせまた忘れ物したんでしょ?」
とニヤニヤしながら話しかけてきた。
気を取り直して、傘をさして、駅までの道のりを歩く。
この数日、スタンフォードとMITの偉い先生たちが書いた生成A Iと労働に関する最新の論文の内容がずっと頭から離れずにいる。
彼らの仮説が正しければ、おそらくそう遠くない未来に僕ら人間は(真の意味で)働かなくてよくなる時代が来そうである。
「ぎりぎり間に合ってよかった・・」
というのが正直な僕の感想だ。
実際、僕らがこんな風にまだ仕事でアタフタと悪あがき出来る最後の世代になるかもしれない。
そんな風に思いながら駅前を歩いていたら、突然、セーラー服姿の白髪のオジサンが目の前に現れた。
「なんか時代を先取りしているなあ・・」
と僕は思わず感心してしまった。
確かに毎日無理して働かなくて済むならば、僕らも人目なんか気にせず、こんな風にもっと好きなように伸び伸びと自分らしく生きられるのかもしれない。
悲しいような嬉しいような、そんなちょっと複雑でアンニュイな気分になる。
きっと小雨混じりの灰色の空もそんな僕のムードづくりに一役買っているのかもしれない。
改札を抜け、階段を登り、駅のホームに立って電車を待つ。
そして、奥歯の奥の方をそっと噛み締める。
カチリ…。
気持ちが切り替わる音がした。
さあ、今日も午後からバリバリ働きますか!
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