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戦術分析【BCL Round of 16】 SIG Strasbourg - Lenovo Tenerife

現地時間2022年2月3日に行われたバスケットボールチャンピオンズリーグ、Best of 16グループLの第2戦、今回Lenovo Tenerifeが対戦したのは、フランスの古豪でかつてEuroleagueにも参戦していたSIG Strasbourg。2011-2012シーズンから10年(2016年に一度退任したが、再契約)、フランスの名将Vincent Colletが率いて、2012-2013シーズンから5シーズン連続でフランス国内リーグ2位という成績をあげている。昨シーズンからColletのもとでACを務めていたフィンランド人Lassi Tuoviがチームを率いている。日本に馴染みのある選手と言えば、2019年W杯で日本と対戦したチェコ代表のヤロミール・ボハチークが所属している。

Strasbourgは今シーズンのチャンピオンズリーグ、Group phaseではグループFを3勝3敗、トルコのTofas Bursaに次いで2位でPlay-inに進出。Play-inではギリシャのPAOKに2連勝し、Round of 16に駒を進めた。Round of 16 Groupの初戦ではRytas Vilniusに76-71で勝利している。共に初戦を勝利したチーム同士となったこの戦い、連勝したのはどちらか。Tenerifeの戦術を中心に分析していく。

第1Q : 序盤からTenerifeのシェルマディニが無双!

スターター、Tenerifeはウエルタス(🇧🇷)、サストーレ(🇪🇸)、シェルマディニ(🇬🇪)、トドロヴィッチ(🇷🇸)、ドーネカンプ(🇨🇦)、Strasbourgはテイラー(🇺🇸)、ミッチェル(🇺🇸)、モーリン(🇫🇷)、ボハチーク(🇨🇿)、マイユ(🇫🇷)。

Strasbourgの1stショットはミッチェルのドライビングレイアップだったが、シェルマディニがブロック。Tenerifeはシェルマディニのインサイドアタックを中心に攻撃し、残分7分19秒、トドロヴィッチがレイアップを決めて9−2となったところで早くもStrasbourgが1回目のタイムアウト。

タイムアウト後ははシェルマディニのインサイドに加え、トドロヴィッチの3ポイントもコンスタントに決まり、26−14、Tenerifeリードで第1Q を終える。

Tenerife : 【オープニングセット】Stack out into UCLA  Re-screen / PnR into Pin down

トドロヴィッチがスタックアウトで左Wingへ。PGウエルタスはUCLAカットに。

UCLAカットと見せかけ、ドーネカンプがRe-screenしウエルタスがTopへ戻り、ボールを再びレシーブし右サイドのシェルマディニとPnRへ。

PnRからシェルマディニはRimへダイブ、そのままドーネカンプのDFへPin down screemへ。Pin down screenを使いドーネカンプはTopへ。

シェルマディニはPin down後、自分のDFをシールし、Topからボールを受け、フックショットを決めた。

Tenerife : 【DF】Hard hedgeからBlitz、そして早いHelp

第1Q、目を引いたのがTenerifeのインテンシティの高いDFだ。前の試合のSzombathely戦同様、相手のPnRに対してScreener DFが積極的にハードヘッジを仕掛けそのままダブルチーム(Blitz)へ。さらにペイントアタックに対してノーチャージセミサークル手前できっちりとHelpし、Strasbourgのイージーバスケットを許さなかった。

第2Q : 開始早々フィティパルドのターンオーバー続くも、早めの火消し!

第2Qのスターター、Tenerifeはフィティパルド(🇺🇾)、サリン(🇫🇮)、ロドリゲス(🇪🇸)、スレイマノヴィッチ(🇧🇦)、ウィルティエ(🇨🇦)、Strasbourgはキャバリエ(🇫🇷)、ウダノウ(🇳🇬)、ランズドーン(🇺🇸)、ボハチーク(🇨🇿)、キュリエ(🇫🇷)。

第2Qの出だし1分でTenerifeはフィティパルドがまさかの2ポゼッション連続ターンオーバー、残分8分58秒、28−18で素早くタイムアウトで修正を図る。ウエルタス、シェルマディニをコートに戻したあとはサリンが2本の3ポイントを決め、Strasbourgの追随を許さず。残分5分36秒でStrasbourgがタイムアウトをとった後もサリン、ウィルティエ、サストーレがそれぞれ3ポイントを決め、結局47−32、点差を縮められずに前半を終えることができた。

Tenerife : 【Half court set】Horns flare into pin down

Tenerifeがサリンに3ポイントを打たせるためにデザインしたセット。Hornsのアライメントから右Slotウィルティエにパスし、PGウエルタスがそのままハンドオフ、ウィルティエは逆サイドのシェルマディニのflare screenを使って左ウィングヘ。

Flare screenの後、シェルマディにはウエルタスのDFへPick、そしてそのまま右コーナーのサリンのDFへPin down。サリンがパスを受け、このクォーター2本目となる3ポイントを決め、Strasbourgはたまらずタイムアウトをとった。

Tenerife : 【Half court set】Pin down into hand off / Pick & short roll

右ウィングのゲラ(🇪🇸)が右コーナーのサストーレへPin down、右ウィングでボールをレシーブ。

サストーレはTopのウエルタスにハンドオフ。

ハンドオフしたサストーレは左エルボーのドーネカンプがセットしたフレアスクリーンで左コーナーへ。ウエルタスは右エルボーのゲラとPick & rollへ。ゲラはshort rollし右エルボーでウエルタスからパスを受ける。

左SlotのボハチークがゲラにHelpしてきたので、ゲラは左SlotのドーネカンプへKIck out、ドーネカンプは左コーナーのサストーレへextra pass。サストーレが見事3ポイントを決めた。

第3Q : ウエルタスの上手さが光り、Tenerifeがさらにリードを広げる!

スターター、Tenerifeはウエルタス、サリン、サストーレ、シェルマディニ、ドーネカンプ、Strasbourgはキャバリエ、テイラー、モーリン、ボハチーク、マイユ。後半の出だしはとにかくウエルタスの時間だった。ハーフコートオフェンスの中での彼のスキル、視野が遺憾なく発揮され、Tenerifeが一気にスパートし、残分4分で59−40と点差をさらに広げた。

タイムアウト後はウィルティエやゲラらバックアップのインサイドプレーヤーが活躍。結局65−44とリードを広げ、第3Qを終えた。

Tenerife : 【Marcelinho Huertas】Pass fake & pull up jumper

第3Q、ウエルタスが光った。まずは残分8分31秒で決めたPull up jumper。
シェルマディニが右lowでボールを持つとStrasbourgはダブルチームで対応。アウトサイドはZone likeに守っている。シェルマディニはすかさず対角にいるウエルタスへKick out。

左LowにいるStrasbourgの選手がウエルタスに対しClose outするが、ウエルタスがコーナーに向かってPass feke。

Pass fakeに引っかかったDFはコーナーのサストーレへマッチアップ。ウエルタスがノーマークとなりさらに左Elbowに大きなgapができる。

ウエルタスはすかさずgapへドリブル。Elbow付近から見事Pull up jumperを決めた。

Tenerife : 【Half court offense】Stack & re-screen (rip screen)

次はウエルタスの視野が光ったプレー。左サイドでドーネカンプがサストーレにStack screen。サストーレのDFがファイトオーバーしハードにディナイしてきた。

すかさずドーネカンプはサストーレのDFにバックスクリーン(rip screen)をかけサストーレはゴール下にあいたgapへcut。ウエルタスはドンピシャでゴール下へロブパスを投げ、サストーレがレイアップを決めた。StrasbourgのDFは全く対応できなかった。

Tenerife : 【Half court set】Fake spain flare

こちらは今やTenerifeの十八番ともいえるSet offense。
シェルマディニがPGのウエルタスへHigh pickへ。ゴール下にいるサリンがScreenerのシェルマディニのDFへrip screenに行くふり(Fake spain PnR)からflareで左サイドへ。

左サイドでボールを受けたサリンへシェルマディニが再びpickへ。サリンはそのままドライビングレイアップを決めた。

このセットはTenerifeがEnd of gameやATOでサリンに3ポイントを打たせるためによく使うセットなので以下に挙げておきます。


第4Q : StrasbourgのプレッシャーにTenerifeがターンオーバー連発も時既に遅し。

スターター、Tenerifeはウエルタス、サリン、シェルマディニ、トドロヴィッチ、ウィルティエ、Strasbourgはウダノウ、ランズドーン、ミッチェル、ボハチーク、キュリエ。

第4Q序盤からStrasbourgのインテンシティの高いハードなディフェンスでTenerifeはターンオーバーを連発。開始3分半でTenerifeは4つのターンオーバー、スコアも3-9のRun。

残分2分37秒にはキャバリエのフックショットで11点様で縮まるが、試合終盤はTenerifeがゲームを再びコントロールし、終わってみれば85-67とTenerifeが快勝する形となった。

Tenerife : 【Half court set】Double stagger 77 (Double drag)

残分1分36秒でTenerifeが見せたセット。PGウエルタスが右サイドをドリブルで上がり左サイドでドーネカンプとシェルマディニがサリンに対してDouble staggered screenをセット。サリンがTopまで上がってきて、そのままウエルタスのDFへpick、シェルマディニもスクリーンをセットしDouble drag(77)の形に。

ウエルタスはDouble dragを使ってTopへ、その後シェルマディニがRe-pickからshort rollし、ウエルタスからパスをレシーブ。

右コーナー、サストーレのDFがshort rollへtagしてきたので、シェルマディニはサストーレへKick out。さらに右Wingサリンへエキストラパス。サリンが落ち着いて3ポイントを決めた。

まとめ : この試合を数字で読み解く

この試合のスタッツ、4 Factors、OF rating、DF ratingなどをまとめてみた。

前節Szombathely戦に引き続き、POSSは両チームそんなに変わらないが、Tenerifeの3PTのFGMが倍以上なのと3PT%が圧倒的に高い。よってeFG%に大きな差がついている。TOV/POSSはTenerifeの方が高い。またFGAもStrasbourgの方が高い。ORB%もStrasbourgが上。しかしTenerifeは圧倒的に効率の良いオフェンス(OF rating=125.49)を展開していることがわかる。TenerifeのHC Txus Vidorretaのウエルタスを中心に緻密に組み立てられたオフェンスシステムがうまく機能した結果がこの数字なのであろう。Tenerifeの次戦はホームでリトアニアのRytas Vilnius。勝って3連勝としたいところである。

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