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戦術分析【B2リーグ '21-'22 Season 第16節①】福島-奈良

前節、大黒柱グレッグ・マンガーノを欠き、B2西地区上位の西宮に連敗し、8連敗となかなか浮上のきっかけをつかめないバンビシャス奈良。まずは何とか1勝をもぎ取り連敗を脱したいところ。対するはB2東地区上位の福島ファイヤーボンズ。現役フィンランド代表のマーフィー兄弟、B1経験も豊富な7フッター、ジェイソン・ウォッシュバーンら強力なフロンコート陣を揃える。マンガーノ不在の奈良が、その福島にどのように戦ったのか、オフェンスを中心に見てみたい。

第1Q:奈良がインサイドを支配、福島はA・マーフィーが奮闘

スターティングラインナップ、福島は#30水野、#6長谷川、#9神原、#12A・マーフィー、#42ウォッシュバーン、一方の奈良は#0横江、#24鈴木、#8薦田、#4マブンガ、#14オトゥーレ。第1Q、奈良はオトゥーレのローポストにボールを集めインサイドを支配、さらには鈴木などの3ポイントがコンスタントに決まり、ゲーム優位に進めた。一方の福島はA・マーフィーのドライブからの得点、さらにウォッシュバーンがインサイドでオフェンスを牽引した。22-24、奈良が2点リードで終了。第1Qで際立った奈良のオフェンスをいくつか紹介する。

奈良のオープニング・セット Ghost to veer / Elevator door

奈良のオープニング・セットはPG横江に対してオトゥーレがHigh pickに行くフリをして右ウィングの鈴木へオフボール・スクリーン(Ghost to veer)。

奈良ー福島.002

横江から2ガードポジションに上がった鈴木へパス。同時に右エルボー付近のオトゥーレとそして右ウィングから右エルボーに上がってきたマブンガがスクリーンをセットし(Elevator door)、左ショートコーナーの薦田のDF長谷川がそのスクリーンを先読みしたので、薦田はElevatorの上を通り右ウィングでボールをレシーブ。

奈良ー福島.003

ボールをレシーブした薦田はミドルドライブを仕掛け、TopのDF神原がHelpしてきたので、左ウィングへDriftしていた鈴木へキックアウト、鈴木がきっちりと3ポイントを沈めた。

奈良ー福島.004

奈良の頻出エントリーFloppyからのAngle post

これは奈良がこのゲームでよく使ったエントリー、Floppy。サンアントニオ・スパーズなどでお馴染みのエントリー。このポゼッションではFloppyから左Wingに飛び出した鈴木へパス。薦田は逆サイドへ。

奈良ー福島.005

Floppyからオトゥーレがミドルポストでポストアップするのに対して、ウォッシュバーンはフルフロントで守る。すかさず逆サイドローポスト付近にいたマブンガがハイポストフラッシュ。

奈良ー福島.006

フラッシュしたマブンガがボールをレシーブし、アングルを変えてオトゥーレにパスし、オトゥーレがポストでのショットを沈めた。

奈良ー福島.007

奈良は第1Qだけで、このエントリーを4度使い、Angle post、Directにローポストへフィード、左ウィングで薦田がアウトサイドショット、オトゥーレの逆サイドウィングにボールが落ちた場合はLow-Lowのクロススクリーンなどのオプションが見られた。

オトゥーレがRim to Rim:アーリーピック(Drag screen)

福島のミスショットからオトゥーレがリバウンド、横江が素早くボールレシーブしドリブルでフロントコートへ、リバウンダーのオトゥーレがトレイルのポジションから横江のDFへピック。そのままRimへダイブし、横江からパスを受けショットを沈めた。オトゥーレのRim to RimのRunが光った素晴らしいトランジションOFであった。

ゲーム分析 B2.001

Double drag to stagger → Elevator door

三森、オトゥーレが2ガードポジションでDouble drag  screenをセット。PG木村がそのスクリーンを使って右サイドへ。

奈良ー福島.008

Double dragを掛けた2人はそのまま左サイドへ移動し、左コーナーの藤高へスタッガード・スクリーンをセット。スタッガード・スクリーンを使い左2ガードポジション出てきた藤高へパス。

奈良ー福島.009

スタッガード・スクリーンをそのままElevator doorに利用し、右ショートコーナーから鈴木が左ウィングへ出てボールをレシーブ。3ptショットを沈めたいところだったが、福島の橋本がElevator doorの上を通り、激しくコンテストされ、ショットは打てず、このポゼッションはターンオーバーで終わった。しかし第1Q、3ポイントが当たっていた鈴木を使うための良いアイデアではあった。

奈良ー福島.010

第2Q :福島の3ポイントが爆発!! 奈良はリズム掴めず逆点を許す。

第2Qは早い時間に、後述の福島のセットなどからE•マーフィー、橋本らの3ポイントが3本決まり、さらにはウォッシュバーンのインサイドでの頑張りなどで福島がコンスタントに点を重ねたのに対し、奈良は1on1中心のオフェンスでペイントアタックするもなかなかイージーにショットが打てず、第2Qチームでの得点が7得点と第ブレーキ。48−31、福島が逆点から奈良を突き放し、このクォーターを終えた。このクォーターで福島が見せた面白いセットオフェンスをいくつか紹介する。

Stagger twirl

E•マーフィー、市岡ショーンが右サイドで縦並びにスクリーンを仕掛ける(Staggered screen)。コーナーの菅野が1枚目のスクリナーを通り過ぎたら、カールして逆サイドへ(Twirl action)。

名称未設定.001

1枚目のスクリナーのE•マーフィーが2枚目のスクリナーを使ってウィングへ。

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E•マーフィーがそのままボールレシーブし、綺麗に3ポイントを沈めた。

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Weave / Maccabi action / Stack out

村上→E•マーフィーがハンドオフ。村上はショートコーナーへカット。

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次にE•マーフィーと左ウィングの菅野がハンドオフ。

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トップでボールを持った菅野が右サイドへ、右サイドの橋下がバックドアカットか中抜けのようなカット(Maccabi action??)でリングへ。そしてハイポストの市岡ショーンが橋下にピンダウンスクリーンを仕掛け、橋下はトップへ(Stack out)。右ウィングへ移動した菅野からパスをレシーブ。

名称未設定.006

そのまま橋下はリングへアタックし、ファウルをもらった。このセットは前後半通じて福島が使ったセットだった。

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Hand-off / Chin cut / High-low

続いては、このクォーター頻出のエントリー。E•マーフィーが高い位置でボールを繋いでハンドオフ。

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ハンドオフ後、ハイポストのウォッシュバーンのバックスクリーンを使い、Princeton offenseのChin cutのような動きでLow-postへ。

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PGからパスをレシーブしたウォッシュバーンからLow-postのE•マーフィーがSpin / Sealでボールをレシーブ。綺麗なHigh-lowが決まった。

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Elevator door / Ram / Ghost / Slip

第2Q終盤に見せたセット。右エルボー付近に山内、ウォッシュバーンでエレベータードアのためのスクリーンをセット。そのスクリーンを使って長谷川が右ウィングへ。スクリーン後山内は左コーナーへ。左サイドのウォッシュバーンはペイントへ。

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左エルボーを通過したE•マーフィーに対してウォッシュバーンがオフボールスクリーン、E•マーフィーはそのスクリーンを使って長谷川にピックしに行く(Ram screen)。

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E•マーフィーはピックに行くと見せかけ(Ghost)、そのままSlipしリングへカット。長谷川からボールをレシーブし、レイアップを決めた。

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第3Q :福島、橋本・長谷川の3ポイントで奈良の追随を許さず! 

第3Q、何とか点差を縮めたい奈良はオトゥーレが奮闘しインサイド中心に得点を重ねる。一方の福島は橋本の3ポイントが止まらず、またウォッシュバーンもインサイドで着実に点を重ねていく。残分6分56秒で58−36、22点差がついてしまう。たまらずタイムアウトをとった奈良だが、タイムアウト明けもATOセットのドリブルでのペイントアタックがタフショットになってしまう。なかなかオフェンスがうまく回らない状況にマブンガがフラストレーションをため、テクニカルファウルを吹かれてしまう場面も。奈良は残分3分44秒に木村、板橋の2ガードを投入し、何とかペースアップを図って点差を縮めたいが、福島は長谷川が立て続けに3ポイントを3本沈め、奈良の追随を許さない。79−54で第4Qを終えた。ここでは第3Q、奈良がBLOBから板橋が3ポイントを沈めたプレーを紹介する。

奈良BLOB : Rip / Iverson / Zipper

左Low postのオトゥーレがエルボーへRip(Back screen)、鈴木はリングへダイブ。

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右Wing藤高が、両エルボーのScreenを使い逆WingへIverson cut。インバウンズパスをレシーブ。

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インバウンズした板橋が左エルボーのオトゥーレのスクリーンを使いZipper cut。Topでボールをレシーブし3ポイントショットを沈めた。

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第4Q :集中の糸が切れた奈良、点差縮まらず敗戦。

第4Qスタートは、両外国人選手をベンチに下げ、三森にインサイドを任せるも、E•マーフィーには歯が立たず、インサイドにアウトサイドにやられたい放題であった。またアウトサイド陣、特に藤高のターンオーバーがとにかく多かった。その中でもルーキーの板橋が気を吐きチームを鼓舞。その後は完全に集中の糸が切れ、点差縮まらず、最終スコア102−74の大差で奈良の敗戦となった。奈良は9連敗、マンガーノの不在の中、なかなか連敗脱出の糸口が見つけられず。最後に第4Qに福島が見せたセットを紹介する。

Pin down / Maccabi / Double screen

右WingでA•マーフィーがピンダウンし、菅野が右Wingでレシーブ。PGの友利はペイントへカット。

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ハイポストにいたウォッシュバーンがポップアウトし、パスをレシーブ。

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逆サイドWingの山内がMaccabi actionでペイントへカット。友利が左Wingへ出てきてボールレシーブ。

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ペイントの中で山内がウォッシュバーンのDFをバックスクリーンしそのままPop out→ボールレシーブ。右コーナーのA•マーフィーはハイポストへ移動。右Wing菅野はコーナーへ。

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Topでボールをレシーブした山内は、A•マーフィー、ウォッシュバーンのダブルスクリーンを使いエルボーへアタック、ジャンプショット。

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