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戦術分析【B2リーグ '21-'22 Season 第16節②】福島-奈良

2022年1月9日に行われたB2第16節のゲーム2。前日、福島に大敗を喫し、泥沼の9連敗となった奈良。やはりインサイドの要、マンガーノの不在は大きな痛手。どのように修正しこの日のゲームに臨んだのか。一方、好調を維持する福島。前日同様、快勝することはできるのか。

スターティングライナップは、両チーム昨日から変更なく、福島#30水野、#6長谷川、#9神原、#12A・マーフィー、#42ウォッシュバーン、一方の奈良は#0横江、#24鈴木、#8薦田、#4マブンガ、#14オトゥーレ。それでは第1Qからキーとなったプレーを中心に見ていく。

第1Q : 福島のハードなDFに奈良、思うように攻撃できず

第1Q、どちらもハーフコートマンツーマンでスタート。奈良は鈴木の3ポイントで先制する。序盤、奈良はオトゥーレと鈴木が中外バランス良く得点を重ねる。一方福島は水野、神原、長谷川の日本人アウトサイド陣が奮起。残分6分30秒頃から、福島はディフェンスのギアを一段階上げフルコートでプレッシャーをかけ始めると、奈良のターンオーバーやタフショットが増える。福島はウォッシュバーンのスイッチが入り、さらには第1Q 終盤、リバウンドやスティールからの速攻を立て続けに決め、23−12福島リードで第1Q を終える。

福島がDFのギアを上げた残分6分30秒からのDF

ボールマンDFの長谷川が奈良PG横江へのパスコースを消し、奈良はSFの薦田へインバウンズ。

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フロンコートに入っても福島はボールマンプレッシャーをかける。さらに奈良PG横江へのパスをハードにディナイし、簡単にエントリーさせない。

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アイバーソンカットで右ウィングから左ウィングへボールをレシーブしにきた鈴木に対し長谷川がハードにディナイ。

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右Low種市のスタックスクリーを使い薦田が右Wingへ出ようとすると、薦田のマークマンであったA•マーフィーと種市のマークマンであった神原がスイッチ。神原が薦田に対しハードなディナイ。

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ウィングにボールが落ちない奈良はオトゥーレが横江へHigh pick。このPick & rollをスクリナーDFのウォッシュバーンはドロップ/コンテインでハンドラーのアタック、そしてスクリナーのダイブをしっかりと守る。

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ダイブしたオトゥーレにパスが出せず横江は逆サイドウィングの鈴木へ展開しようとするも長谷川がそれをハードにディナイし、横江はダブルドリブルのバイオレーションを吹かれてしまいターンオーバー。

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福島の徹底したアウトサイドへのハードディナイ、Pick & rollへの適切な対応により奈良のターンオーバーを誘発したGood defenseとなった。

オトゥーレには持たせない!

第1Q  中盤、奈良のオフェンス。藤高がスタックアウトのような形で左ウィングへ。

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藤高へのパスを福島の神原がハードにディナイし、苦しい状況でボールを持たせる。左Low postの鈴木が逆LowのオトゥーレにCross screen。

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左 Lowでポストアップしたオトゥーレに対し福島のウォッシュバーンはフルフロントでパスを遮断。さらにその裏を長谷川がきっちりSagしケア。右ウィングの木村をマークするA•マーフィーもオトゥーレに対してミドルラインまでSag。全員でオトゥーレを守ろうとする意識が見える。奈良はハイポストの種市がトップへポップアウトする。

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ボールをつないだ種市が逆サイドの木村へハンドオフに行く過程でブロッキングのオフェンスファウルをコールされてしまい奈良のターンオーバー。福島のナイスチームディフェンスが光った。

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福島、奈良のハーフ3-2ゾーンをあっさりと攻略

残分2分20秒、奈良はDFをハーフ3-2ゾーンに切り替える。福島はTopと左Wingでパス交換をし、

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右Wingの橋本と左Wingの神原がお互い逆サイドへカット。神原が右Wingでボールをレシーブ。E•マーフィーは右Elbowへ。

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右ElbowのE•マーフィーに対しマブンガがマッチアップ、Topに位置取る藤高もSag。福島はTopの水野へパスをリターン。

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Topでパスをレシーブした水野はE•マーフィーへのSagで空いたGapにすかさずドライブ。Rim protectorの三森がHelpに出ると市岡ショーンに合わせてFinish。奈良のハーフ3-2ゾーンをあっさりと攻略した。

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第2Q : 福島のアウトサイド落ち始めるも、奈良のDFのマズさが目立つ

第2Qは福島の3ポイントが落ち始めて、奈良のリズムになるかと思われたが、奈良のトランジションDFが崩壊。奈良が得点してもトランジションで失点してしまう場面が多く見受けられた。逆点できるチャンスをみすみすと逃してしまった。結局44−33と点差は縮まらなかった。

奈良のHorns flare / Stagger

第2Q、奈良の最初のオフェンスはターンオーバー、2ndオフェンスがこのHorns flare / Staggerだった。Honrsの形から本来マブンガがPGにピックを仕掛けてflareに移行する(画像青線)のだと思うが、マブンガと木村が何か意思疎通できていない感じがした。結局ピックなしでそのままflareへ。

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flareで広がったマブンガと三森でStaggered screenをセットし、板橋が左2ガードポジションへ。

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ボールをレシーブした板橋に三森がピックスクリーン。三森はダイブ。

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板橋はダイブした三森へパス。福島の市岡ショーンはドロップ/コンテインで、ゴール下をケア。

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ここで三森はショットにいかず、右サイドからHelpにくるE•マーフィーが気になったのか、サイズのない板橋へリターンパスしてしまう。結局板橋はミスショット。三森の判断が非常にまずいプレーとなった。

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これなら、三森にショートロールさせコーナーカット/ミッドレンジショットを狙うか、もしくは三森から右コーナーの藤高へのキックアウトが妥当ではなかったか。

奈良SLOB : Elevator door / Spain PnR

右エルボー付近でマブンガ、オトゥーレがElevator door screenをセット。木村がトップでボールをレシーブ。

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インバウンドした板橋が逆ウィングへカット、マブンガは右ショートコーナへ広がる。オトゥーレはトップの木村へピックスクリーンへ。

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木村&オトゥーレのPick & rollでダイブしたオトゥーレのマッチアップマンに左Lowにいた藤高がRip screenをかける(Spain pick & roll)。木村はそのままリムへアタックし、シュートを沈めた。しかしこの後、福島の素早いトランジションですぐに点を奪い返される。

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奈良のマズいトランジションDF

ということで、ここで第2Qに顕著だった奈良のマズいトランジションDFのシーンをいくつか検証する。下の場面は先ほどのSpain PnRが決まった直後、奈良がピックアップミスをして福島に悠々と3ポイントショットを決められた場面。

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続いては右ウィングを走る福島のプレーヤーをマークする木村がボールマンだけを見てマークマンから目を切った瞬間に、このプレーヤーにインフロントカット→シールされ得点されてしまう場面。福島のプレーヤーの判断が素晴らしいが、ボールマンとマークマンを捉えられていない木村の不注意だ。

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続いては奈良が得点した後、福島の素早いインバウンドで2パスでショートコーナまでパスが通ってしまい、ショートコーナーからウィングにリターンされ、慌てて藤高がクローズアウトし、カウンタードライブされファウルで止めた場面。

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これは奈良のショット後、福島のガードを奈良のプレーヤーが誰もケアせずワンパスで速攻を出されてしった場面。基本的なセーフティができていない。

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ということでこの第2Qは福島の素早いトランジションに対する奈良のDFがほぼ崩壊状態であったと言える。

福島 : 1−4 Double elbow screen / Zipper / Seal

福島が第2Q終盤に見せた秀逸なセット。1−4のアライメントからウォッシュバーン、A•マーフィーのDouble elbow screenで友利が逆サイドのウィングへ。

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A•マーフィーは左ウィングへ、ガードの水野は左コーナーへそれぞれ広がり、ウォッシュバーンはゴール下へカットしていた橋本へPin downスクリーン。

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橋本がトップでボールをレシーブすると、ウォッシュバーンがオトゥーレをシールし、パスを受けショット。

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奈良SLOB : Zipper Away → ???

第2Qの最終盤、奈良が決めたSLOBが面白かった。玉井のスクリーンでオトゥーレがZipper cut。

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逆サイドで三森が横江にPin down screenし、横江がボールをレシーブ。

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その後、インバウンドした薦田へオトゥーレがPin down(上から)、玉井がRip(後から)それぞれスクリーンをセットしに行く。

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薦田はオトゥーレのPin downを使ってカールカット、エルボーでボールをレシーブしショットを決めた。シューターに出口を二つ用意する(もしくはFake screenか)面白いセットであった。これ、何ていうプレーかしっている人は教えてください。

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第3Q : 福島、日本人選手のアウトサイドショットで奈良の追随を許さず。

奈良はマブンガ、オトゥーレ、横江、藤高、薦田、福島はA•マーフィー、ウォッシュバーン、水野、神原、橋本でスタート。奈良はハーフ1−3−1のマッチアップゾーンを敷く。薦田の3 ポイントショットで口火を切った奈良に対し、福島はA•マーフィーのダンカースポットへボール落としそこを起点にゾーンアタック。奈良はファストブレイクや1on1でショットチャンスをメイクするも、タフショットになってしまい点にならず。特にマブンガの1on1の攻撃がことごとく失敗、非常に効率の悪いオフェンスとなった。福島は中盤以降、長谷川、橋本、水野、村上の日本人プレーヤーが立て続けに3ポイントショットを決め、結局点差は詰まらず63−53で第3Qを終えた。

奈良1−3−1に対し、福島A•マーフィーのダンカースポットでの位置どり

奈良のハーフ1−3−1のマッチアップゾーンに対し、福島はA•マーフィーが位置取るダンカースポット(ショートコーナーの深い位置)にボールを集めそこからのアタックや開いたGap(逆のlow)へのハイポストへの合わせでゾーンアタック。この場所に位置取ることでリムプロテクターのDFポジションを下げたり、ブラインドに入れる。また、逆のlow(ダンカースポット)が空いたりペイントにGapができるのでゾーンアタックには非常に有効だと感じた。

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第4Q : 奈良、集中力が求められる場面で痛恨のトランジションDFのミス

奈良はマブンガのスリーポイントでスタート。木村のペネトレイトやオトゥーレのプットバックなどで得点を重ねていく。一方福島はE•マーフィーのスリーポイント、さらにオフェンスリバウンドの頑張りなどで得点を重ね、奈良は7点差以下に点差を縮められない。逆点に向けて集中力が要求される局面でまたもや、福島の素早いトランジションから得点を許してしまう。マブンガの3ポイントをコンテストしたE•マーフィーがそのままゴールへラン。シューターのマブンガはそれをケアすることなく、みすみすと走られてしまった。

ここから連続得点で二桁差とされてしまう。さらに残分3分 には奈良がショットミスし福島のリバウンドから素早く左ウィングにボールをすすめ、市岡ショーンがゴールtoゴールの走りでアリウープショットを決めた。奈良はゾーン特有の引き継ぎのミスでオトゥーレが最後まで市岡ショーンをケアしなかったためこのようなプレーを許してしまった。この二桁差を詰められず、87−77で奈良は福島に2連敗。結局このゲームがフェルナンド・カレロ・ヒルHCが指揮する最後の試合となった。

奈良 : Chin / Spain PnR

奈良が試合終盤に見せた面白いセットを2つ紹介。まずはChinカットからのスペインピックアンドロール。木村がマブンガへパスしTop of the keyのオトゥーレのスクリーンを使いChin cut。

オトゥーレはマブンガのDFへピック、Chin cutした木村はオトゥーレにつくウォッシュバーンの背後からスクリーン(Spain pick & roll)。オトゥーレがゴール下でフリーとなり、ショットを沈めた。

奈良SLOB : Flare Leak / Hand off / Pin down

トップの位置のマブンガがPG木村にフレアスクリーン。そのマブンガにSTSの形で右lowにいた薦田がRip screen。

Rip screenをかけた薦田に左lowのオトゥーレがSTSの形でスクリーンに、薦田はコーナーへ(これがLeak action)。オトゥーレはトップは2ガードでボールをレシーブ。

インバウンズした木村がオトゥーレのところへハンドオフしに行き、ハンドオフ後オトゥーレはコーナーの薦田へPin down screen。薦田がスクリーンを使って3ポイントショットを放った。


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