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【シュート力の秘訣】ーボグダノビッチとシモノビッチの場合
まえがき
シュート力をつけるにはどうすればいいのか。
自分が現役の頃は、シュートは打てば打つだけ入るようになるから、とにかくたくさん打ちなさい。と言われてきました。
果たして本当でしょうか。それが本当なら、誰でもNBAレベルのシューターになっているはずですよね。
今回はその問いのヒントになるであろう興味深いインタビュー記事を見つけたので、その記事から自分なりの答えを出したいと思います。
興味深い記事を読んで
その記事はこちら。セルビア人ジャーナリストによる2016年のリオ五輪で銀メダルを獲得したセルビア代表シューター、ボグダン・ボグダノビッチとマルコ・シモノビッチのインタビュー記事です。リオ五輪後に書かれたものです。
その記事のタイトルは「Training as a science: How to perfect your shooting」、日本語に訳すと「科学的なトレーニング:完璧なシュートを手に入れる方法」みたいな感じでしょうか。
その記事で、ボグダノビッチとシモノビッチが自らのトレーニング方法や最高のシューターたらしめている理由を自ら語っているとあったので、興味深く読みました。
ボグダン・ボグダノビッチの場合
ボグダン・ボグダノビッチは現在NBAのアトランタホークスに所属しています。2019年のワールドカップでもセルビア代表に選出され、大活躍でしたね。スリーポイント力もさることながら、ハンドリング能力、ゲームメイク能力にも優れたNBAを代表するコンボガードです。
インタビューから、彼のシュート力の秘訣は以下の3点にまとめることができます。
①絶対的なシューティング量
②集中力を維持する工夫
③試合を意識した練習
絶対的なシューティング量
彼は2010年、18歳のときにパルチザン・ベオグラードというチームでプロ生活をスタートさせました。
そこで出会ったDuško Vujoševićというコーチが彼に言いました。
「オートマティックにシュートできるようになるためには毎週5000~6000回繰り返す必要がある」
パルチザンでの彼のシュート練習は、
【ウォーミングアップ】
①ゴール下から手首だけを使ってシュート
②ゴールから少しだけ離れた位置6〜7ヶ所からシュート(1ヶ所20〜30本)
ーここまででだいたい150本
③自分でボールをトス、それをキャッチしてシュート
④トリプルスレットからワンドリブルシュート、ドリブルからダンクをそれぞれ左右10本ずつ
ストレッチタイム
【ここからが本番】
⑤両コーナー、両ウィング、トップからそれぞれ3ポイント50本、終わったら逆のリング
⑥試合のシチュエーションを想定したシュート
ーここまでで800本から900本
⑦フリースロー
⑧位置を決めてスポットシュート
ー1日1000本で終了
ボグダノビッチはこれを毎日チーム練習とは別に行っていたそうで、練習がオフの日も行っていました。
集中力を維持する工夫
ボグダノビッチはシュート練習が単調になると、集中力が失われてしまうので、そうならないためにバリエーションに富んだシュート練習を行っています。
ビッグボールを使ったり、三本指で打ったり、手ぶくろをはめて打ったり、他に怪我をしていれば、たとえばイスからシュートを打ったり。
試合を意識した練習
ボグダノビッチはゲームのシチュエーションを意識した練習もたくさん行っています。その際ポイントにしているのが"フットワーク"と"ボールハンドリング"です。
フットワークについては、その選手がゲーム中にどのようなシュートを打つかによって異なったものになってくるというのが彼の考え方です。
ボールハンドリングについて、彼は誰でも粘り強く打つ込めば良いドリブラーになることができること、そしてドリブルからのシュートで一番基本的なことはボールコントロールであると言っています。
彼のロールモデルはカイリー・アービングで試合中に起こり得る1on1シチュエーションから色んなドリブルからのショットを練習しています。
2014年から所属したフェネルバフチェでは、練習後にイスをピックに見立ててのシューティングを50〜60本打っていたそうで、その際に彼は
・ディフェンスをイメージしながら
・どこが悪いかを修正しながら
シュートを打っていたそうです。
最後に彼は自らのシュートの秘訣についてこう言います。
最大の秘密は信念と精神的な準備です。1000本のシュートを打つだけでなく、自分自身がどこに向かって進歩したいのか、またそのために何をしているのかを本能的に感じている必要があります。
マルコ・シモノビッチの場合
マルコ・シモノビッチは現在セルビアのレッドスター・ベオグラードに所属するベテランフォワードです。17歳の時、セルビアのクラブチームでプロ生活をスタートさせ、その後、ベルギー、モンテネグロ、ドイツ、フランス、ロシア、スロベニア、スペインとヨーロッパの強豪クラブを渡り歩き、2020年からレッドスターに戻ってきました。2014年のW杯、2016年のリオ五輪の銀メダルメンバーです。
インタビューから、彼のシュート力の秘訣は以下の3点にまとめることができます。
①シュートメカニクスの完成
②ゲームシチュエーションでの練習
③壊れるまで腕を”こらしめる(Punish)”
シュートメカニクスの完成
シュートメカニクスの完成のために必要なことを
・問題が体のどこの部分にあるのか
・段階的な修正
・再現性
の3点をあげています。まずは、自分のシュートフォームのどこに問題があるのか、腕なのか、ボールの持ち方なのか、あるいは下半身なのか。
問題のある場所が明らかになれば、それをどう修正するのかですが、例えば上半身に問題がある場合は、
①ゴール下から脚を使わずに片手のみでシュートを打つ
②反対の手を添える
③2〜3m離れた位置から椅子に座り、スピンを意識して打つ。
このように段階的に修正することをすすめています。
そして、すべてのショットを同じ動作で行う、つまり再現性を重視しているのですが、そのために
同じショットを10億回繰り返すことです。笑わないで!文字通り10億回!
と言っています。
ゲームシチュエーションでの練習
ゲーム中にそのプレーヤーがどんなシュートを多く打つのかで、練習の方法が決まってきます。シモノビッチは椅子をスクリーンに見立てて、色んなフォーメーションの形でシューティング行います。その際に重要なのが、
最大のスピードで、多大な労力を払って行われることが不可欠
ということです。
壊れるまで腕を”こらしめる(Punish)”
シモノビッチのこの表現、とても好きなんですが、ボグダノビッチのところでも書きましたが、やはり絶対的なシューティング量は必要ということですね。
シモノビッチはフランスのPau-Orthezに所属した'14-'15シーズン、毎日チーム練習以外に500本inのシューティングを行なっていました。週に最低でも2000本、多い週は4000本のシュート練習を自らに課していたそうです。
最後に彼は一番伝えたいこととして、このように言いました。
最終的に努力は報われる
まとめ
ボグダノビッチにしても、シモノビッチにしてもシュート力の秘訣として
①絶対的な量のシューティング
②試合の状況を意識したシューティング
をこなしています。
あるBリーグのコーチのクリニックに参加したとき、そのコーチが「日本人の特に男子選手はシューティングの量が圧倒的に少ない。欧米は練習量が少ないと言われているがそんなことはない。個人スキルの練習量は圧倒的に欧米の方が多い」と言われていました。本当にその通りだと思います。
二人のセルビア代表シューターのインタビューから、質と量のどちらが大切かという議論ではなく、質も量もどちらにも重きを置いてトレーニングを行うことが大切だということが改めてわかりました。
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