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渇きと偽り 監督: ロバート・コノリー

渇きと偽りというタイトルは邦題で原題はTHE DRYというらしいが、日本側の担当者が渇きだけではなく偽りを付け足した気持ちも分からなくもない。本作は渇きというより、偽りの方がしっくりくる物語だ。主要な登場人物はそれぞれ嘘を抱えて生きている。その嘘が、田舎特有の閉鎖性により、暴かれる事なく、澱のように堆積している。
主人公は友人の死をきっかけにその閉ざされた生まれ故郷に戻り、蓋をしていた自らの嘘に否応なく向き合う羽目になる。逆に彼はそこで様々な関係者の嘘を暴いていく。嘘を抱えて逃げる様に街を去った男が、なんの因果か他人の秘密を暴いてまわることになる。その行為が彼自身の蓋をしていた記憶を呼び覚まし、彼自身を苦しめる。
最後、彼は彼自身が嘘をつき続けるきっかけとなった女の子のカバンを発見し、彼女の死の真相を知ることになる。そのことが彼にとって救いとなったのか、嘘の呪縛から解放されることになったかは曖昧なままで、正直なところよく分からない。
田舎の閉鎖性は渇きというより、ジトッとした陰湿な目を連想させる。常に誰かに見られている感覚が、嘘を纏って生きていく事を余儀なくさせるのかもしれない。そんな空間で、最も忌み嫌われる行為である嘘を暴くということをして回ったのに、最終的にはに街の英雄と称えられるのは何とも皮肉な話だ。

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