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象は静かに座っている 監督: フー・ボー

辺見庸さんが絶賛していたので興味があった。Amazonプライムにあったので視聴。かなり長く暗い。全編を通じて、どうしようもない不条理が支配しており、生きることへの諦めというか虚無感が漂っている。そこに描かれるのは希望の何もない世界。自分の境遇を何か他人のせいにでもしていないと、自分の存在さえ許容できない世界。ただ、結局は他者に責任を押し付けようとしてもそれが成立しないほど、人々は互いに無関心で、親子だろうが、兄弟であろうが、それは変わらない。この世界には何もない。ただスマホだけがある。その事実にゾッとする。そもそもきっかけも、その大切なスマホが盗まれたのなんので始まっているのもある種の皮肉なのかもしれない。また、監督がこの作品の完成と共に、自ら生命を絶ったという情報に接して、改めて、この世界を覆う不条理の厄介さ思い知らされた。映像も独特なものがあり、とにかくピントが合っていない。それが登場人物それぞれの孤独と孤立を如実に表している。象が座っているという満州里にたどり着いた後、結局そこに何もないとしたら、彼らはどうするのだろうか?それでも、ただただ生き続けていくのだろうなと思う。思いの外、簡単に死んでしまうのが人間であり、死んだようであってもどうにかこうにか生き続けていくのも人間なのだから。

追記
本日参加したというか、させられたセミナーにてどんな境遇も捉え方次第、逆境もチャンスと捉える事で成功に繋がるという有難いお話を拝聴する。セミナー中、私はずっとこの映画の事を思い出していた。圧倒的な不条理のことを。


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