信用創造でマネーストックを増やせ

異次元緩和の象徴、マネタリーベースとは? 減少のワケ

 マネタリーベースとは、金融機関が決済などのために日銀に預けている当座預金残高を指す。9月の平均残高は前年同月比3.3%減の634兆1934億円となり、日銀が2013年に始めた異次元緩和下で初の前年割れとなったそうだ。だが依然として莫大な金額が日銀当座預金に据え置かれている。

 政府・金融機関以外の企業、家計など民間部門が保有する通貨の総量を示す「マネーストック」という概念と区別しなければならない。いくら日銀当座預金が増えても、マネーストックが増えなければ意味がないのだ。使えない預金がたまったところで、家計や企業に恩恵なぞあるわけがない。つまりマネタリーベース側面だけの議論は無意味どころか有害ですらある。永遠に正しい解が得られないからだ。

 ちなみに日銀の異次元金融緩和が行われ始めた2013年から現在までのマネーストック(M2=現金通貨+預金通貨+準通貨+CD(預金通貨、準通貨、CDの発行者は、国内銀行等)の推移をグラフにしたのが下記である

出所:日本銀行
https://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/md02_m_1.html

 日銀当座預金は急激に増えたのに対し、マネーストックの増え方は比較的緩慢なのが見て取れる。要するに、家計や企業は金融緩和の恩恵を受けていない。

 マネーストックを増やすには、銀行は貸出を繰り返し、さらなる預金を生み出す信用創造しかない。だがデフレで借りれ需要がない状況は信用創造の作用が働かない。そこで、デフレ不況でも返済コストを気にせず借り入れできる経済主体がある。それが政府だ。

 デフレギャップに陥った場合は政府が有効需要を創出するべしというのは、偉大なるケインズの教えだ。

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