会社は利益率より三方良しを志向せよ

グローリー、飲食店のDX支援 セルフ決済機で顧客分析

 飲食店や小売店にも徐々に自動化や無人化が進んでいるようだ。たしかに、コロナ禍以降からセルフオーダーができる飲食店が増えているように感じる。大手フランチャイズチェーン店はコロナ以前から導入していたケースがあったかもしれないが、ここにきて裾野が広がってきている。飲食店・小売りで、こうした自動化や無人化が進んでいなかった理由として、低賃金労働者への依存があったように思う。利益率や単価が低い同業界であるから、少しの設備投資も痛手になるのは理解なくもない話ではある。だが、コロナでその低賃金労働者すら確保することが難しくなっている以上、設備投資は避けられない。こうした事情に目をつけたグローリー社はさすがである。

 平成の構造改革以降、非正規雇用化や外国人労働者受入れといった正規社員を極力抑える低賃金労働が常態化した。その代表例が飲食や小売であろう。低賃金というある種の奴隷労働に胡坐をかいていた業界は、コロナ以降の突如とした人手不足に対応を迫られている。こうした低賃金労働の業界はまだまだあり、彼らの犠牲によって業界は支えられ、そして我々はサービスを享受しているのだ。だからこそ、労働者の賃金を抑制する新自由主義、デフレを非難し続けるのである。

 平成以降の日本経済は少子高齢化・生産年齢人口減といった労働力不足に対し、生産性向上を目的とした設備投資を抑制する路線を敷いていた。バブル崩壊以降、とにかく固定資産をもたない経営がもてはやされるようになったのが一因として考えられる。新聞やテレビメディアにおいてROE、ファブレスなどの聞きなれなかった用語が称揚されるようになった。固定資産を圧縮する経営が良い会社だと言われるようになったのが、平成の新自由主義経済もしくは株主資本主義である。
 
 以前日経新聞の論説委員コラムで、ファブレスのキーエンスと日産自動車の利益率の差を持ち出して、日産もキーエンスを目指すべきだと主張していたのは噴飯ものであった。生態系や体格の異なる、ミーアキャットとライオンを比べるようなものである。

 会社の評価は多面的であるべきである。利益率だけを称揚すると、労働者の賃金を削ることが正当化されてしまう。やはり、付加価値率(営業利益+人件費+減価償却費)も加味する必要があるだろう。会社は株主利益のためにあるのではない。従業員、関係会社、地域社会といった三方良しの精神が大事である。



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