地方経済の衰退

事業承継 M&A型が増加

 帝国データバンクの調査によると、事業承継の内、M&Aが右肩上で急上昇している一方で、同族承継が減少している結果が掲載された。最近であれば、オリックスによるDHC社の買収が思い当たる。
 大企業であれば、いくらでも承継先が見つかるだろうが、中小企業はそうもいかない。本来であれば、同族承継や信頼できる相手に託すことが理想だろう。だが、どちらも不足しているのが現状だ。日本政策金融公庫研究所のアンケートでは、調査対象の中小企業の半分強が廃業予定だそうだ。おそるべき実態である。

 中小企業は全国企業の99.7%、雇用7割、企業付加価値額の半数以上を担う重要な存在だ。また、多種多様な企業体の在り方は、現在の日本文化そのものだと言いかえることもできよう。

 一般的に大企業はその豊かな資本力を活かして、規模の経済性、範囲の経済性を発揮することが可能となる。だが、中小企業のリソースは限られていることから、自らの得意分野に特化するケースが多いだろう。デービットアトキンソンや菅義偉らの新自由主義者から言わせれば、多種多様な中小企業の存在は非効率でしかないだろう。だが、その存在は数値であらわれない貴い文化の蓄積でもあるのだ。

 だが残念なことに、平成以降の日本社会は数値化や効率性と引き換えに、地域社会を壊してきたのが実態である。地方の小売店や飲食店、商店街は軒並み姿を消し、その代わりに現れたのがコンビニ、大型スーパーといった大資本である。地域住民は単なる消費者に成り下がり、支払ったお金は地域とは関係ない資本家の基に吸い上げられる。そうして地方は衰退の一途をたどった。

 地方創生や少子化対策を口にする政治家は今でも多いが、時すでに遅しだろう。我々は、没落する日本社会の渦中にいることを忘れてはならない。少なくとも、近代国家としての日本は既に終わっていることは確かだと思う。

 


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