「よかったこと」を挙げてみる

一つ前の記事ではネガティブな情報ばかり書いてしまいファンとして結構辛かったので、ここでは良かった点を書いてみようと思います。
※完全なる個人の感想です

1.一貫した世界観のまま完結させることができた
人気が出た故に、編集サイドから引き延ばしを持ちかけられたり、無理やり新キャラを投入させられたり、路線変更をさせられるというのは漫画業界ではよくあることですが、イティハーサは本編を読む限り、おそらくそういった物語への干渉はそこまで受けずに最終話まで走りきれたのではないでしょうか(打ち切り云々の経緯は別として)。

2.各話の品質(作画、ストーリー)が高い
この記事を読んだ方の中で『ぶ~け』本誌掲載版を読んでいた人はほとんどいないと思いますが、本誌に掲載された連載第一回目の作画は正直言って、結構不安定です。青比古が「誰だよお前…」と言いたくなるような顔になってるコマもあります。いずれも豪華本で修正されましたが、本誌掲載版と豪華本を同時に見ていくと、連載序盤は不安定で、豪華本で修正されることの多かった作画が、豪華本第4巻辺りから安定して、あからさまな修正は少なくなっていきます(ゼロというわけではない。また、軽微な修正は無数にあり)。また、ストーリーに関しても、一部にコマの追加等はあるものの、話が大幅に変わるような加筆修正が一切ありません。休載を挟みながら水樹先生がプロットを全力で考え、職人技で生命を注ぎ込んで描いたからこそ、最初からあの完成度だったのだと確信しています。

3.商業主義に偏らなかったので黒歴史無し
連載中、画集やイメージアルバムCDなどの関連商品が発売されましたが、いずれもイティの世界観をよく表現したものとして高評価を得ています。もし、イティハーサが商業主義の波に呑まれて、90年代にアニメや実写等になっていたら、多分うまくいかずに黒歴史化していた可能性が高かったと思われます。
また、豪華本に関しても、制作された経緯を調べていくと、「売りたい」ではなく「素晴らしい物を世に出したい」という水樹先生の強い思いがそこかしこに伝わってきます。愛蔵版が刊行された漫画は数多くあれど、イティハーサの豪華本は、日本の少女漫画史上、1、2を争うレベルの芸術性の高いものであるといえましょう。

4.集英社だからこそ?
水樹先生は『りぼん』でデビューし、その後『ぶ~け』に活動拠点を移し、『樹魔・伝説』をはじめとした数々の珠玉の作品を送り出してきました。そしてイティがたどった経緯は先に書いた通り「編集方針が合わずに連載終了」でしたが、執筆活動をしていくうえで、集英社が水樹先生に与えた影響(作画・作風)は少なからずあると思います。もしイティが小学館や白泉社だった場合、それらが微妙に違っていて、私の好きなイティハーサではなかったかもしれません。

5.少女漫画だからこそ
前の記事で「少女漫画にしてはテーマが重すぎて、SF作品としては男性が敬遠しがちな恋愛要素などが含まれており、どっちつかずになってしまった」と書きましたが、まぁそれは置いといて、普通の少女漫画雑誌でイティハーサという壮大なSF大河作品が連載されていたという事実こそ、当時の日本漫画の凄さを体現するものだったのではないかと。また、少女漫画だからこそ生まれたキャラクター(一狼太や青比古)もいるのではないでしょうか。結論:イティすごい。

6:まっさらな状態で今の世に出ることができた
イティハーサが完結して今年で23年が経ちましたが、漫画とそれに関わる各種コンテンツは90~00年代に比べ大幅に多様化しました。豪華本とぶ~けコミックスは絶版となりましたが、文庫本や電子書籍が発売され、ネットの普及により幅広い世代の人々がイティに触れることが可能となっています。

マイナー故にこれまであまり評価されなかった作品ですが、だからこそ、これまで漫画を読まなかった層や、一般的な漫画しか知らない層、さらに若年層などが、イティの世界に触れて、自由な発想で論じたり、これまでと全く違った評価・二次創作をしてくれる可能性に期待を寄せています。


余談:休載がかえって支えになった個人的な話
イティハーサは長期休載が常態化していたと前記事で書きましたが、
私は6歳(幼稚園年長)の時に『ぶ~け』を読んだのがきっかけで、それから約10年間、高校1年の夏に豪華本発売により完結するまでイティを追いかけていました。
もし水樹先生がコンスタントに連載をしていたら私が中学校に上がる前にイティは完結していたと思いますが、丁度小・中時代は私の人生の暗黒期で、「イティが完結するまで死ねない」「休載してる=いつまでも桂さんを追いかけられるな」と思いながら生きていた時期なので、正直イティの長期連載は私にとって支えだったのです。
というわけで私は生涯イティハーサのファンです。

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