「外れ馬券」と「一時所得」

判例分解ノック 6本目  平成29年12月15日 最高裁第二小法廷判決

概要
 本件は、自ら開発した、インターネット・パソコン・及びソフトウェアを用いた馬券の購入と払い戻しを自動的に行うシステムを運用した被上告人が、行った確定申告につき、上告人である課税庁が、上記確定申告において、被上告人の行った確定申告における所得を、雑所得としたのは間違いで一時所得であるとの課税処分をおこなったことに対する取消を求めた事案

争点
「当該所得が雑所得か、であるとすると外れ馬券の購入代金は、必要経費に該当するか」

(雑所得)
第三十五条 雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。
2 雑所得の金額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。
二 その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額

判旨
「本件所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として、所得税法35条1項にいう雑所得に当たると解するのが相当である」
「所得税法は、雑所得に係る総収入金額から控除する必要経費について、雑所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接要した費用の額等とする旨を定めているところ(35条2項2号,37条1項).本件においては上記(1)の通り被上告人は、偶然性の影響を減殺するために、長期間にわたって多数の馬券を頻繁に購入することより、年間を通じての収支の利益が得られるように継続的に馬券を購入しており、そのような、一連の馬券の購入による利益を得るためには、外れ馬券の購入は不可避であったと言わざるを得ない。したがって本件における外れ馬券の購入代金は、雑所得である当たり馬券の払い戻し金を得るために直接要した費用として、同法37条1項にいう必要経費に当たると解するのが相当である」

フレーズ
「取得税法上、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得で、営利を目的とする継続的行為から生じた所得は、一時所得ではなく、雑所得に区分されるところ、営利を目的とする。継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益の発生の規模、期間、その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。」


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