「過度の宗教活動」と「離婚」

判例分解ノック 3本目 (東京高裁 昭和57年10月21日 判決9

概要
妻(被控訴人)の節度を超えた宗教行為(控訴人の嫌う線香を長時間焚きお経をあげ、執拗に入信を勧誘し、宗教行事のために家を留守にして外出することが多く、食事も共にせず家庭を顧みなかったこと等)によって婚姻関係が破綻し、夫(控訴人)の女性関係や家出は右破綻した後に生じたものであるとして、夫の妻に対する離婚請求を認めた事例
(判例タイムズ No。485号) 

争点
 「妻の過度な宗教行為によって、婚姻関係が破綻した場合、夫の離婚請求はどうなるか」

判旨
「もとより、各人はその良心に従って特定の宗教を信じる自由を有し、非控訴人が〇〇宗〇〇会の信仰に至ったこと自体については敢えて咎めるにあたらないが、夫婦として共同生活を営む以上、宗教上の行為と雖も相手の立場を尊重しその節度を守るべきは当然であって、毎日長時間にわたって線香焚いて御経を上げ、控訴人がその時間を短くするのに頼んでも聞き入れず、夕方から説法、勧誘のためほとんど毎晩外出し、あまつさえ控訴人の取引先も強引に勧誘し、食事を一緒にしないなどの被控訴人の行為は節度を超えたもので、控訴人にこれが受忍を要求するのは相当でなく、これによって婚姻関係が破綻するに至った以上、控訴人から離婚を請求されても、やむを得ないものと言わなければならない。」

条文 民法
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

フレーズ
「被控訴人(妻)の行為は節度を超えたもので、控訴人(夫)にこれが受忍を要求するのは相当でなく、これによって婚姻関係が破綻するに至った以上、控訴人から離婚を請求されても、やむを得ないものと言わなければならない。」


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