トカゲの尻尾が必死で生き残る
コウノイケさんは、50代の後半。ベテランの設計である。だが未熟なシロウトなのだった。これまで散々外注先を困らせ、身内の資材外注課の担当からも嫌われる。
しかも、任された新機種は例のエアシリンダーの選定ミスにより大クレームとなり、代替部品の製作と輸出とで多額の費用を要し、改造には現地人ワーカーの宿泊交通費食費、アゴアシマクラ代全額負担して対応したのだった。
これは全社的にも問題となる。これはコウノイケさんの上長が処分されるはずなのだが、なぜかコウノイケさん本人が懲戒処分となる。減給とか戒告ではなく左遷というわかりやすいやりかた。
彼は資材外注課にやってきた。これまで散々いじめられてきた課員たちからは総シカトとなり、業務を教えてももらえず、助けてももらえず、女性社員からも嫌われて半年。彼は嫌になって配置換えを希望した。どのような条件でも受け入れると伝えたかどうかは知らない。
彼は、新規で立ち上げる倉庫番となっていた。彼の家族はまだ中学生なのでお金が必要。だから何が何でもしがみつかないと生きていけない。
気持ちはわかる。
だが、倉庫番は半端なく辛く苦しい仕事であった。年末年始では10トントラックが数珠つなぎ。荷物を下ろすのに3時間。リフトマンはいつもイライラ。扱いが雑で、稀に荷物を落とすし、トラックの幕板に穴をあけるしひどい奴を使わないといけないが、しかも言うこと聞かないし、トラックの運転手には怒られるし、出庫した部品の行き先間違っては怒られ。パレットが足らないのでまた怒られ。
よく耐えたもんだ。彼はまだその職場に居る。わたしが居たら1ヶ月でウツになるはず。
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