サクラマス保護の話
種苗放流
サクラマスの保護河川があることは昨日書いた通りで、河口規制や、河川での遊魚が禁止されていたりなんかもします。
その中で、増殖事業というものがあります。そう、漁協が水産資源の維持、増加のために稚魚(時には稚貝)の放流事業などに取り組むことです。
増殖事業の多くは種苗放流という形で行われています。簡単にいうと、自然界だと1番死にやすい卵から幼生期を、人間の管理下で育てて、ある一定の大きさになったら自然に放ち、あとは自然界で成長してもらうという手法です。
人間で言ったら、0歳から10歳くらいを特に丁寧に育てて、思春期に入ったら独り立ちさせてみるみたいな感じです笑(もちろん人間は思春期に入っても大抵は実家で暮らしますが笑笑)
種苗放流の欠点
サクラマスはサケの仲間でも長く河川を利用する種です。そこで、種苗放流がされるとどういう問題が起こるのか、簡単に説明します。
種苗は主に2種類あり、飼育期間2か月の1グラムほどの稚魚を川に放流する方法、飼育期間1年2か月の降海型と呼ばれる稚魚を海に放流する方法です。
↑参考です
ここでは、河川に放流した場合の稚魚を考えます。
河川に放流された稚魚は一年以上を河川内で暮らすのですが、ここで問題があります。
環境収容力です。
生態学を学んだことがない方は「???」と思っているでしょう。簡単にいうと、その環境にどのくらいの数の生き物が生息できるか、ということです。人間で言うと、不動産屋に行って物件を探すときに、何人で暮らすのかを基準に部屋の大きさを考えたりしますよね。それに近いです。
話を戻すと、なぜ環境収容力が問題になるのかと言うと、河川の環境収容力が限られているのにも関わらず、種苗を放流すると、むしろ餌の取り合いや、生息場所の取り合いになるからです。
人間も一人暮らし向け物件に4人では住めませんよね。
特に道南日本海側は「山が海になる」と言えるくらい、山から海にまっすぐ斜面がつづいています。したがって河川も急勾配で短いものが多いです。
つまり、この環境収容力を無視し、いっぱい放流すればいいという考えではむしろ資源量が悪化してしまうのです。
環境収容力を増やすために必要なこと
現在、多くの河川には砂防ダム、治山ダムが多く設置されています。
その数は北海道だけでも3万6千基を超えるとされています。
砂防ダムがあると、そこから上流に魚が遡上できず、河口から見て1番最初のダムまでが海を利用するサクラマスにとって生息できる環境となってしまいます。
そこで、魚道の設置や、ダムのスリット化と呼ばれる河川構造物に対して、魚たちに配慮した構造をもたすことが重要とわかってきました。
サクラマスがより上流に遡上することで、産卵場の確保にも、稚魚の生息場の確保にもつながります。
放流事業も大切ですが、このように生物の育つ環境を整えることがまずは増殖事業において大切だと考えるのです。
明日はダムのスリット化について書いていこうと思います。
ではでは
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