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意味の無い割引はしない

現在私が受け持っている事業はほぼBtoCですが、基本的に割引やクーポン発行等は一切していません。せいぜい、新規オープン時のお試し寄せに1週間限定とか1ヶ月限定とかで行うだけです。
では、なぜ割引をしないのかを考えていきたいと思います。


◆飲食業時代に経験したこと

町の定食屋、高級懐石料理屋、割烹店、居酒屋等で修行した後、とある地元の居酒屋チェーン店に転職しました。
そのチェーン店では、週間サービスカレンダーというものを提示しており、
例えば月曜日はサラリーマンDayでサラリーマンは生ビールが最初の2杯無料、火曜日はレディースDayで女性は10%割引、水曜日はじゃんけんDayで会計時にじゃんけんで勝ったら10%割引、木曜日はシルバーDayで60歳以上は10%割引、金曜日&土曜日は終日飲み放題500円Day、日曜日は家族Dayで家族で来たら10%割引みたいな感じです。
私が最初に店長として着任した店舗は当時平均月商300万円程度で毎月赤字でした。
そして、私がそれまで経験した「お客様の来店模様」と「売上」が大きく剥離していました。週末とかキッチンもホールも人を厚めに配置しているにも関わらず回るか回らないかのギリギリてんてこまい。なのに、終わってみると大した売上じゃない。
なんだこのものすごいガッカリ感は…とバイトといつも話をしていました。
というわけで、2ヶ月後に直属の上司に「週間サービスカレンダーやめます」と一応断って、私の店舗のみ止めてしまいました。
結果、お客様の数が減ったとかなく、お客様に「週間サービスカレンダーあったよね?」と「今日何の割引あるの?」と聞かれることもほぼなく、平均月商450万円になりました。もともと私なりに割引をやめても大丈夫だろうという自信はありました。
前任の店長は売上が下がり始めた際、利益確保のためにレシピ以下の量の盛り付けをし、食材原価を無理やり下げたり、人件費削減のために無茶なシフトを組んでクレームを頻発させ、そのせいでホールスタッフは元気が無く、居酒屋なのにどんよりした雰囲気のお店になってました。
それらを2ヶ月で改善しました。食材原価率は私が調整するので、メニュー写真以上に量を増やして盛り付けることを指示し、人件費削減からの無理なシフトをやめ、来店の多い週末は多めに配置しました。ホールスタッフにはミスっても別に怒らないから元気だけはだしてねと言った程度です。

◆割引ではなくサービス力に投資する

そもそも、前任の店長が料理と接客というものに投資をしなかったせいで、客数が落ち売上が下がり、それを取り戻すために安易な割引を行い、また売上が下がりという負のスパイラルに陥ってただけでした。
なので、私としてはそれを元に戻しただけとも言えます。
これは、現在でも私の根底にありまして、例えばコインランドリー事業も割引は一切しませんが、その代わり店舗を常時綺麗に保つために投資しています。日常的な清掃の他、半年に1度は床の洗浄ワックスがけを行い、3年経ったら今度は床のワックスの剥離作業を行い、美観を保っています。
洗濯乾燥機も定期的に専門業者にメンテナンスをしてもらっていますし、常に最新機器の動向をチェックし、必要とあれば導入しています。

◆そもそも立地商売は割引しても無駄じゃん

飲食業もコインランドリーも基本的には立地商売です。あくまで単純比較ですが、例えばまったく同じ業態、同じサービス、同じ値段のお店が2軒あったとして、1軒は自宅から5km、もう1軒は自宅から500mしか離れてなければ、お客様はほぼ500mのお店に行くでしょう。仮に5km離れたお店が、半額サービスでもやれば、その日だけはそのお店に行くかもしれませんが、その日限りでサービスが終わればまた近くの店に戻るでしょう。毎日半額サービスを続けでもしない限りお客様を奪い取ることはできませんよね。

◆割引するのなら根拠を

現在の会社(主力はビルメンテナンス業)に入社して数年経った頃、会社の同僚に相談されたことがあります。会社規定の粗利率で業務を受注するにはどうしたらいいんですかねと。話を聞くと、受注するためにやはり割引提案を行っていたとのこと。
受注内容は事務室の床の洗浄及びワックスがけ作業だったので、「例えば作業予定日の前日退社時に椅子をテーブルの上に上げておいていただけたら、割引しますとか提案してみたら。」と言いました。
お客様にしてみれば、退社時に各社員が椅子を上げておくだけで数万円割引されるなら悪い条件じゃないと思いますし、作業する側としても作業前に各机の椅子を全部机に上げるという重労働で時間もかかる作業が無くなるので原価が下がり、お互いWin-Winですよねと。まぁ、この事例で全て業務が受注できるか解決できるかどうかは別として、割引をするなら根拠を持たせなければ、ただたんに利益率を下げるだけで、将来的に立ち行かなくなります。逆に言えば、会社規定の粗利率を割り込むほどの割引要請をしてくるような顧客でしたら、受注しなければいいのです。一生懸命サービスを提供して赤字なほど無意味なことはありませんよね。

◆安易な割引をした際の損益

例えば、通常値段が100,000円の商品があったとします。それにかかる原価は50,000円とし、販管費は20,000円とします。営業利益は30,000円ですね。これを、10%割引して90,000円で販売したとします。すると、営業利益は20,000円となります。たまに10%割引したら営業利益も10%下がると勘違いしている人が居るんですが、そんなことはありません。この例では33.3%もダウンするわけです。さらに、例えば通常値段で100個販売した場合と同じ営業利益額を出そうとしたら150個となり、50個も多く販売しないとなりません。こんなことをしていたら、現場は疲弊するしそりゃどんどんジリ貧になりますよね…。

※売上と利益の関係※

◆全ての割引が悪いわけではない

売上規模は全然小さいのですが、冷凍食品の販売みたいなこともやってます。食品関係はどうしても賞味期限、消費期限があるので、売れると思って仕入れたものがハズれると廃棄しなければならなくなります。
そのようなときは、消費期限が近づいた時点で半額や原価で販売してしまいます。
在庫として残しても、期限が切れたら廃棄するしかなくなるので。在庫商売なんかは仕方ない面もありますね。

◆むしろ定価を下げてしまえば

巷にあふれている割引は、特別な時だけでなく、いつでも貰えていつでも使えたりします。全然特別感がありません。
それならむしろ、効率化を徹底した上で原価を下げて、わざわざ割引クーポンを発行したり、チラシを撒いたりして割引宣伝をするよりも、定価を下げてずっとその値段で売った方が余計な経費もかからないし、スッキリするしいいんじゃないかなと思います。
例えばサイゼリアさんなんかは、極限まで店舗オペレーションを詰めて原価を下げてあの低価格で提供するかわりに、クーポンとかは発行してないですよね。(私の知る範囲でですが)
飲食店なのに、徹底した効率化でキッチンに包丁もまな板もないという話は有名ですよね。

◆割引は麻薬みたいなもの

売上が下がったから、客足が落ちたから、契約が取れないからと根拠のない安易な割引をしてしまうと、なかなかやめることができなくなります。一種の麻薬みたいなものですね。
自社の商品、サービスの強みはなにか、もっともっとブラッシュアップできないか、やはりそこに投資して、値段勝負は最後の最後にしておかないと、立ち行かなくなると思います。
でも、どうしても行わなければならないのなら、作戦を立てて行い、またその結果をデータとして検証しなければいけないと思います。

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