「戦争を5回目の当たりにした」パレスチナから中学生が来日、イスラエルがまたもシリア爆撃・アメリカの違法駐留問題

首相が連合大会出席、自民党の首相として16年ぶり…「持続的な賃上げ」に向け労働界と協調(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース(10/6)
連合大会に首相が出席しました。この件については、まず連合で話題になるのはこうした政治がらみの話ばかり、「労働条件の維持改善・その他労働者の経済的地位の向上」という本業はどうしたのか、といいたくなります。実質賃金はこの間継続的に低下、非正規雇用等不安定な雇用も増加、に対して連合は何をやっているのでしょうか?連合に関してはなぜか批判を控える、とりわけ労働研究者の間でその傾向がみられます。総評・同盟などに対しては、批判的検討も行われていたのに、連合発足後なぜか連合に対する批判的研究検討はなされなくなった、というか、タブー視されるようになった、ように思います。その点労働研究者の端くれとして、「これでいいのか」という疑問と違和感をもちます(連合問題に関しては別に論じたいと思います)。

「5回の戦争を目の当たりにした」パレスチナ自治区・ガザから中学生が来日 「日本を通じて世界にメッセージを届けたい」(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース(10/5)
パレスチナ・ガザから中学生三名が来日しました。
「70年以上、イスラエルとの間で紛争が続くパレスチナから中学生3人が日本を訪れています。戦闘が続く日常について14歳の少女は『5回の戦争を目の当たりにした』と語りました。」(同記事より直接引用)
  14歳ですでに5回も戦争を目の当たりにしている、とのことです。パレスチナにおける戦争での犠牲、それに対しても私たちはしっかり目を向け耳を傾けるべきと思います。
「UNRWAを通じた日本のパレスチナ支援が今年70年を迎えるのに合わせ現状を伝えようと今回、3人は日本を訪れました。
そのUNRWAが今、直面しているのは…
UNRWA ラザリーニ事務局長(東京・千代田区 2日)
『(多くのドナー国の)海外支援予算の大半はウクライナにつぎ込まれました』
長年、財政難に苦しんでいるというUNRWAですが、特にロシアによるウクライナ侵攻はこれに拍車をかけているといいます。」(同記事より直接引用)
 ロシア・ウクライナ戦争が生じたからといって他の軍事紛争が解決されたわけでは全くありません。パレスチナ問題も何ら解決していないどころか、むしろ深刻化しています。「(多くのドナー国の)海外支援予算の大半がウクライナにつぎ込まれ、財政難が深刻化」つまり十分な支援援助に支障をきたしています。
 ロシア政権による侵略は全く許されない、それは強く訴えます。同時にイスラエルによる長年にわたるパレスチナ侵略も同じように絶対に許されないはずです。ウクライナ問題に対するのと同様な関心をパレスチナ問題についても寄せてほしい、そして支援についても同じように行ってほしい、心から願います。同様にそのことは他の軍事紛争についてもいえることです。

「14年間の人生で目の前に存在し続けた戦争。今、望むことについて尋ねると…
パレスチナ難民 ファディさん(13) 『平和です。みんなの夢を実現するために一番大切なので』」(上記記事余の直接引用)

 前に述べたように、パレスチナ市民の半数以上が「武装闘争」支持、「交渉による解決」支持は20%にすぎません。僭越かもしれませんが、パレスチナ市民がそうなってしまう気持ちは痛いほどわかります。そもそも世界的にみればパレスチナの国家承認を行っている国が多数ですが、日米を含め主要西側諸国は基本的に国家承認すら行っていません。さらにイスラエルの背後には軍事的にアメリカがいます。米欧日政府が「国際法・国連憲章違反は許さない」といっても、イスラエルのそうした行為に対しては容認、ないし黙認となってしまうことは明白です。そうした絶望的状況(それは私が考えているよりはるかに深刻と思います)が、パレスチナ市民を「武装闘争支持」に追い込んでしまっていると思います。この点まず考えるべきです。
 パレスチナ市民には「武装闘争する権利がある」は事実です。しかし私はやはり平和的解決を求めます。アメリカを後ろ盾としたイスラエルの圧倒的軍事力に対して、武装闘争をしても、それは膨大な犠牲とイスラエルにさらなる軍事攻撃の口実を与えるだけになってしまいます。同時に「パレスチナにイスラエルに対抗しうるような軍事支援を」の声は、ウクライナに軍事支援を行っている米欧日政府からは絶対起こりません。先に述べたように主要西側諸国はパレスチナを国家承認していないこと、さらにイスラエルの背後に「盟主的地位」のアメリカがいること、からです。それ以外の国も大規模な軍事支援をしないでしょうし、万が一なされてもそれに対しては今度は米欧日政府からは「軍事紛争への介入だ」と強い非難がなされるでしょう。これは本来おかしいし矛盾していますが、現実としてはこうなってしまっています。
 武装闘争支持なら、「パレスチナへの大規模な軍事支援が不可欠」、それをなぜ同時に主張しないのか、私には理解できません。ただしそれを強く主張しても、現実問題として米欧日政府がパレスチナに軍事支援をすることは絶対ありませんが・・・・。
 イスラエルの行為は絶対許容されない、しかしなんとか平和的解決を、と強く訴えます。あわせてパレスチナ市民の半数以上が「武装闘争支持」となってしまっている背景、とりわけ米欧日政府の対応の矛盾、については私たちは真剣に向き合うべきだ、ということも強く主張します。

イスラエルが「イランの民兵」を狙ってシリア南東部のダイル・ザウル県各所を爆撃:沈黙する欧米、ロシア(青山弘之) - エキスパート - Yahoo!ニュース(10/4)
「イスラエルがシリアに対して爆撃をはじめとする侵犯行為を行うのは、今年に入って28回目、ないしは31回目となる。侵犯行為の回数を特定できない理由は以下の3つの攻撃を行った主体が明らかでないためである。」(青山先生上記記事より直接引用)
 イスラエルは今年になったからだけでシリアに対しても、28ないし31回の爆撃をはじめ侵犯行為を行っている、とのことです。明白に国際法違反です。しかし私たちはこうした事実をどれだけ知らされているのでしょうか?
「この爆撃に関して、米国をはじめとする西側諸国が非難することはいつもの通りない。また、シリアに駐留するロシア軍も現時点では爆撃について発表を行っていない。」(青山先生上記記事より直接引用)
  米欧政府はいつものとおり、こうした行為を非難することはありません(ロシア政府も現段階では非難していません)。米欧政府はなぜこちらの国際法侵害は問題にしないのでしょうか?

米軍、NATO同盟国トルコの無人機撃墜 シリア内の米拠点接近で(ロイター) - Yahoo!ニュース(10/6)
  この件の記事では、シリアでの米軍の駐留が国際法に反する違法駐留であることはなんら触れられていません。米軍のシリア駐留は国連安保理の決議にも基づかないし、シリア政府の合意もないものです。それにも関わらず他国に軍隊を駐留させてしまうのは国際法・国連憲章違反、そしてこういうことは「侵略」というのではないでしょうか?米軍の違法駐留は現在に至るまで長く続けられています。こちらの国際違法についても、米欧日政府から問題視する声はでません。

 前回、小泉氏の「ウクライナ戦争をめぐる『が』について」について述べましたが、小泉氏はここで述べたような明らかな国際法・国連憲章違反のパレスチナ・シリアに対するイスラエル・アメリカの行為をどう考えているのでしょうか?その問題は氏の視野からは見事に抜け落ちてしまっている、と私には感じてなりません。この点も氏の原稿への強い疑問として私は有している、という点も付け加えておきます。

白井邦彦
青山学院大学教授


 



 



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