軍事支援の原則に関する私見1

 不当な侵略が行われ、しかし国連が機能しない場合、侵略された国への軍事支援についてどのように考えたらいいのでしょうか。その点についての私見を述べたく思います。

 筆者は基本的には、力には力で、武力には武力で、という考え方には反対です。それは結局軍事紛争をエスカレートさせる危険性が強く本質的解決にならない、と思われるからです。それをふまえたうえで不当な侵略に対する軍事支援の原則に関しては、以下のように考えています。

軍事支援に関する原則
・なによりも早期に即時停戦、和平交渉による解決を目指す。
・軍事支援はそれを実現するための手段であり、即時停戦・和平交渉による解決、が実現されるまで侵略された国の犠牲を最小限にとどめるための手段としてのみ位置づけられるべき、で、その限りでのみやむをえず許容されるもの。
・この原則は不当な侵略を受けたすべての国に等しくあてはめるべきで、侵略を受けた国のよっての選別は行うべきではない。

この原則を現在のロシア・ウクライナ戦争にあてはめると
「米欧の軍事支援国は、ロシア・ウクライナ双方に即時停戦をよびかけ、ロシアに対しては『即時停戦をすればウクライナへの軍事支援をしない』、ウクライナには『即時停戦に応じなければ軍事支援は打ち切る』、として即時停戦を実現する。そしてロシアサイドが即時停戦を破ったら軍事支援再開、ウクライナサイドがやぶったら軍事支援は以後しない、として停戦状態を保ち和平交渉に入る」
という形となります。

 上記原則から今回の米欧の軍事支援を考えると明らかに当初よりその範囲を超えている、ので支持できません。上記のようなあり方を求めるとともにこの道筋での即時停戦、そして和平交渉での解決を求めます。

 ただ上記原則の軍事支援に対しては例えば「では侵略された国が即時停戦・和平交渉での解決、を拒み、徹底抗戦を求めている場合どうするか」など疑問が出ると思います。私はその場合は「侵略された国には自衛権があるのでその行使は当然容認されるべきだが、軍事支援は義務ではない以上軍事支援はしない、侵略された国の市民がそれをふまえて判断すべきことではないか」と考えますが、上記原則に対しては数々の疑問批判が予想されることとです。
 この点を含めて次回以降に詳細に検討したく思います。

白井邦彦
青山学院大学経済学部教授


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