米、ICCのイスラエル捜査不支持、プーチン氏とネタ二ヤフ氏はどこが違うのか?ICC所長の赤根氏の判断は?

米、ICCのイスラエル捜査支持せず:時事ドットコム (jiji.com)(4/30)
「ワシントンAFP=時事】米政府は29日、パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラエル軍の行動に関する国際刑事裁判所(ICC)の捜査を支持しない立場を明確にした。ICCが近くイスラエル政府関係者に逮捕状を発付する可能性があるとして、同国内では懸念が強まっていると伝えられている。(写真は、米ホワイトハウスのカリーヌ・ジャンピエール報道官)イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は28日、ジョー・バイデン大統領との電話会談でこの問題を提起したとされる。米紙ニューヨーク・タイムズはイスラエル政府当局者の話として、ICCはネタニヤフ氏のほか、イスラム組織ハマス指導部の訴追を検討していると伝えている。ホワイトハウスのカリーヌ・ジャンピエール報道官は記者会見で、「ICCの捜査についてはわが国は支持しない。ICCに管轄権があるとも考えていない」と述べた。米ニュースサイト・アクシオスは、ネタニヤフ氏がバイデン氏に対し、ICCがイスラエル政府関係者に逮捕状を出すのを阻止するよう求めたと報じている。これについてジャンピエール氏は、「電話会談の主要議題は言うまでもなく人質に関する合意と停戦、ガザへの人道支援だった」と答えるにとどめた。米国、イスラエル両国ともにICCには加盟していない。」(同記事より直接引用)
アメリカ政府はICCがプーチン氏に逮捕状を出したとき、大礼賛しました。私は、ロシア政権によるウクライナ侵略について、プーチン氏の政治責任は極めて大きい、プーチン氏個人の刑事責任は、というと法の素人でありどんな重大な犯罪であれ個人の刑事責任に関しては慎重であるべき、と思いますが、それでもプーチン氏個人の刑事責任は否定できない、と考えています。同時にこの件でアメリカがICCを礼賛すればするほど、①そんな素晴らしい組織ならなぜアメリカは加盟しないのか、②イスラエルのこれまでの数々の戦争犯罪行為に関しては政府軍関係者に逮捕状が出されないのはなぜか、との疑問が生じてくるのを否定できませんでした。

ネタニヤフ氏を含むイスラエル政府関係者に、ICCが逮捕状を出す可能性が取りざたされています。
 そしてアメリカ政府は明確に、「ICCの捜査についてはわが国は支持しない。ICCに管轄権があるとも考えていない」(先の記事より直接引用)と述べています。要するにイスラエル政府軍関係者にICCは逮捕状は出すな、とアメリカ政府は明言しているわけです。
 そして現在のICC所長はプーチン氏に逮捕状を出した赤根氏です。
日本人で初めて就任 ICCトップの赤根智子所長に聞く (tv-asahi.co.jp)(3/21)
 このインタビューで赤根氏は「逮捕状の出すかどうかについて、地位や国力は一切考慮しない」と明言しています。

 アメリカ政府が明白に反対する中で、ICCや赤根氏はどう判断するのでしょうか?
  しかし繰り返しにもなりますが、アメリカ政府はプーチン氏に逮捕状を出したときはICCを礼賛、しかし自国はICCには加盟しない、そしてイスラエルに関しては、要するに「捜査はするな」です。私は先に述べたようにプーチン氏の刑事責任も否定はできない、と考えますが、アメリカ政府のこのようなあからさまなスタンスから、アメリカ政府のプーチン氏逮捕状礼賛論には決して乗っかりたくないし、乗っかるべきではない、とも強く主張したく思います。

白井邦彦
青山学院大学教授

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