イスラエルへ軍事支援継続の米欧諸国、シリアに違法駐留を続ける米軍、国連人権理事会でイスラエル問題に賛成しない米欧日、その価値基準を直視すべき!

 先の記事でアメリカが現時点でもイスラエルに武器供与を行っていることを書きましたが、イスラエルに武器供与を続けているのはアメリカだけではありません。
イギリスの法律専門家ら600人超、イスラエルへの武器輸出をやめるよう政府に求める (msn.com)(4/4)
「イギリスからイスラエルへの武器輸出は、ドイツやイタリアなどと比べて少ない。」(同記事より直接引用)
つまりアメリカだけでなく、英独伊は明らかに現在に至るまでイスラエルに武器供与を(ウクライナに武器供与しつつ)行っているわけです。

青山弘之先生の論考です。
イスラエルによる駐シリア・イラン大使館爆撃に対するシリア軍のささやかな抵抗(青山弘之) - エキスパート - Yahoo!ニュース(4/5)
「違法駐留を続ける米軍
米軍は2014年9月、イスラーム国に対する「テロとの戦い」を行うとして、有志連合を率いてシリアでの爆撃を開始した。また、2015年10月頃から、地上部隊をシリア領内に派遣し、イスラーム国と戦うクルド民族主義組織で、トルコが「分離主義テロリスト」とみなす民主統一党(PYD)を全面支援するようになった。シリア領内での軍事行動は、シリア政府を含むシリアのいかなる政治主体の承認も得てなければ、国連安保理の決議に基づいてもいない。米国は2021年現在、シリア領内の27ヵ所の基地を設置している。だが、この無許可の駐留は、シリアの国内法においても、国際法においても違法行為である(「シリアにおける米国の軍事介入と部隊駐留の変遷(2011~2021年)」を参照)。米国は、イスラーム国が支配地域を失って以降も、「その再生を阻止する」、「シリアの油田を防衛する」といった口実で違法駐留を続け、シリア領内に我が物顔で居座っている。」(青山先生論考より直接引用)

シリアにおける違法駐留の米軍基地(青山先生上記論考より直接引用)

 アメリカはシリア国内にかなりの米軍基地を違法に設置し、違法駐留を継続しています(米軍違法駐留の免責論として、アサド政権の化学兵器使用論の主張がありますが、現時点では「シリアで化学兵器が使用されたのは事実だがどの主体が使用したかは不明」というのが国連の見解、と強調しておきます)。

そして国連人権理事会でのイスラエル問題についての投票行動です。
国連人権理事会のイスラエルへの兵器の輸出や提供をやめるよう求める決議案決議に棄権の日本は最低の選択をした - 弁護士 猪野 亨のブログ (fc2.com)
 猪野先生のブログにあるよう、米独は反対、日仏棄権、です。

 ウクライナに軍事支援しながら、虐殺行為を繰り返すイスラエルにも武器供与、ロシア軍の占領は非難しながら、米軍はシリアに長期にわたり違法駐留継続で欧日はそれを問題視しない、国連人権理事会でイスラエル問題では賛成しない、こうした米欧日の姿をどうみるべきでしょうか。
 ロシア政権の侵略に対しては、「力による現状変更は認めない」「国際法秩序」と散々言っていたのとの整合性はどうなのでしょうか?
  米欧日の価値基準は「自分たちの陣営、それに入ろうとする国は支援し、そうした国が違法行為をしても黙認、場合によっては違法でも支援、しかし自分たちの陣営でなくそこに入ろうともしない国については、違法行為があれば鋭く非難、そして軍事支援もしない」です。人権についても同様の価値基準に基づき判断します(なおこうした価値基準・行動原理は米欧日だけでなく、どの国陣営についてもあてはまるでしょう)。

 こうした価値基準・行動原理が現在露骨に明確化していますが、それを直視してそれぞれの行動を判断すべきと考えます。ウクライナとイスラエルへの同時軍事支援もこうした価値基準・行動原理からで、その「価値基準・行動原理」からすれば矛盾するものではなく、整合的です。
 しかし私はこうした価値基準・行動原理を見るからこそ、イスラエルへの軍事支援反対は当然として、ウクライナに対する軍事支援についても肯定的にみることはできません。それを肯定することは、ここで示される価値基準・行動原理を暗黙のうちに容認することになってしまうと思います。それでいいのでしょぅか?

白井邦彦
青山学院大学教授



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