日本、ウクライナ支援として米に砲弾供与協議-「徹底抗戦支持・NATOの武器供与は容認だが日本が行うのは反対」はいよいよ成り立たない!その先は・・・

 ウクライナ軍による反転攻勢が始まり、激しい戦闘が行われています。
 反転攻勢で「きわめて激しい戦闘」=ウクライナ国防次官(BBC News) - Yahoo!ニュース(6/15)
ウクライナ軍、主力部隊投入に向け突破口を模索か…英研究所「戦闘はさらに厳しくなる」(読売新聞) - goo ニュース(6/15)
  ロシア軍側も激しく応戦、戦闘は今後さらに激しさを増していく模様です。
 そうした中、次のような報道がなされています。
日本、米への砲弾提供を協議 ウクライナ支援で(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版) - Yahoo!ニュース(6/15)
「【東京】日本は、ウクライナの対ロシア反転攻勢の支援に向け、米国に砲弾を提供する方向で協議している。殺傷能力のある武器の輸出を長年抑制してきた日本にとって、大きな方針転換だ。」(上記記事より直接引用)
  形や形式論はともかく、これは「日本がウクライナ向けに砲弾供与を行う」ということです。先日の米へのウクライナ向け弾薬用の火薬輸出に続いて、ついに「ウクライナに砲弾供与」ということとなりそうです。
 この記事にあるように、「日本にとって大きな方針転換」であることは間違いありません。これほど大きな方針転換をなし崩し的に行ってしまっていいのでしょうか。大きな疑問をもちますし私は当然反対です。
 ただ「NATOの軍事支援は容認だが、日本が行うのは反対」という論理はいよいよ通らなくなった、ということも事実です。
上記記事の先の引用部分に続く記述です。
「ウクライナが南東部の領土をロシア軍から奪還する作戦を推進する中、世界各地でウクラナ向けの砲弾を調達する取り組みが勢いを増している。ロシアが2022年2月に侵攻を開始して以来、米国は200万発以上の155ミリ砲弾をウクライナに送っており、米政府は同盟国にも物資の供与を迫っている。  米国は13日、155ミリ砲弾を含む、ウクライナ向けの新たな軍事支援の提供を発表した。米国は自国の在庫から相当な量を引き出しており、自国の軍事態勢を損なうことなくウクライナを支援する方法を模索している。」(上記記事から直接引用)
 「ウクライナ向けの武器」だからといって、自然にどここから湧いて出てくるわけではありません。それは各国が有している武器から出すしかないわけです。ウクライナ軍の戦いが米欧日の軍事支援あってのものであり、激しい戦闘がなされ、今後も続きさらにますます激しさを増す、という状況においては、「そのための武器をどのように確保するか」は当然深刻な問題となります。
 戦争が長引き、戦闘が激しさを増せば、いずれ日本も「武器供与」をせざるをえなくなることは当然予想されたことです。「徹底抗戦支持・NATOの武器供与容認」の必然的な帰結です。
 前にも書いたように、「武器供与を行えば、戦争の当事者性」はますます強くなります。それでもいいのでしょうか?
 そして「日本が有する武器でウクライナに供与した分」は補充しないでおく(まさかそうした対応はしないでしょう)、でない以上、当然軍事費への支出は増やさざるをえなくなります。その財源はどうするのでしょうか。予算には限りがあります。そして「何かに使った予算は、その分は別のことには使えない」です。つまり「ウクライナに供与した武器に相当する金額」分、どこか別の予算支出を削らざるをえなくなります。そうでなければその分「増税」です。そして戦闘が続き激しさを増す限り、「武器供与」が今回限りとなるわけではありません、当然さらなる「武器供与」も求められるでしょう。つまり「ウクライナに供与した武器に相当する金額」分、別の予算支出の削減か増税、がこれからさらに求められ続けることになってしまいます。この点どう考えるのでしょうか?「ウクライナの戦いは正義の戦い、そのために私たちが負担を負うのは当然」、なのでしょうか。
 「徹底抗戦支持、NATOの軍事支援容認」とする以上、私たち日本市民にも、ここで述べたような問題がリアルに突きつけられることになります。
 同時に戦争を行う上で「兵力」は不可欠です。ウクライナ軍にも大きな犠牲がでていますし、激しい戦闘が続けばいずれ「兵力」は枯渇していきます。このまま戦争が続いた場合、どこかで「兵力」の供与を求められることも考慮に入れておく必要があります。その場合どうするか?
 「徹底抗戦・NATOの武器供与容認」とする以上、そしてついに「ウクライナへの武器供与」となってきている以上、ここで述べたような問いに答えるべきと思います。「欲しがりません、正義のウクライナが勝つまでは」、「正義のためには、私たちの命も投げ出すべきだ」なのでしょうか?「徹底抗戦・NATO軍事支援容認」とする以上、この点も明確に示してほしい、と願います。
 私はここで提示した点については全て絶対反対です。そして「即時停戦・和平交渉での解決」とすべきと、繰り返し強く訴えます。

白井邦彦
青山学院大学教授



  
 


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