ウクライナ向け軍事支援NATO基金拠出54億円、能登半島地震支援47億円、これまでのウクライナ支援総額26兆円以上、徹底抗戦継続の場合の費用負担は?

今年は1月1日大地震で始まりました。お亡くなりになられた全ての方々のご冥福を心からお祈り申しあげます。また現在も多くの方が被災し苦しい生活を送っておられます。そうした全ての皆様の生活が一日も早く安定することを心から願っております。

1月7日の報道です。
ウクライナにドローン検知機 上川外相がキーウ訪問―54億円支援、連帯アピール:時事ドットコム (jiji.com)(1/7)
それより二日遅れての1月9日の報道です。
政府、予備費47億円を閣議決定 23年度、能登半島地震支援:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)(1/9)
 ウクライナへの軍事支援54億円、日本で多くの市民が亡くなり被災し困難な生活を強いられている能登半島地震支援は、それより2日遅れて47億円の支出が決まりました。
 私はウクライナへの軍事支援については大きな疑問を有していますが、その点はあえて抜きにしても、現在の日本の状況でこうした予算支出の在り方には大きな疑問をもちます。54億対47億、後者は2日遅れ地震発生から1週間以上たってから、はどうしても「優先順位としておかしい」と感じざるをえません。
 もちろん侵略を受けているウクライナ市民が、どうでもいいわけはありません。ただ軍事支援をそもそもすべき時なのか、ウクライナ支援についても日本の状況を考えるべきではないか、と強く感じます。

 ロシア政権による侵略は国際法違反、併合地を返還しロシア軍は撤退すべきです。そのために一番あるべき姿は当然、ロシア政権側が即座に自発的にそれを行うことであるのはいうまでもありません。その点は私は常に強く思っています。しかし現実問題としてそれが実現しない、その場合どうしたらいいのでしょうか?
「ロシア政権の侵略は不法不当、ウクライナ政権サイドには自衛権がある、それゆえロシア軍を撤退させるまで徹底抗戦」というのが現在のゼレンスキー政権、そして少なくない世論です。
 しかしウクライナ独自では戦えない、米欧日の軍事支援あっての戦いです。その費用はどのくらいの期間どれほど必要なのでしょうか?
 さらに必要となるのは軍事支援ばかりではありません。
ウクライナ・ゼレンスキー大統領が窮状訴え「西側の支援なしでは年金支払えない」 | khb東日本放送 (khb-tv.co.jp)(1/12)
「ウクライナのゼレンスキー大統領が「西側の支援がなければ国民に年金が支払えない事態に陥る」と窮状を訴えました。
 ゼレンスキー大統領は11日、訪問先のラトビアで記者団に対し、西側諸国による財政支援がなければウクライナは1100万人の年金受給者への支払いができなくなると述べました。
 これに先立ち、スビリデンコ経済相は外国メディアのインタビューで、西側諸国からの援助がなければ年金に加えて50万人の公務員や140万人の教員の給与の支払いも遅らせる必要があると述べています。」(同記事より直接引用)
 「ゼレンスキー政権の徹底抗戦を支持する」とは、軍事支援をし続けるとともに、ウクライナの年金受給者・公務員教員の給与も負担し続ける、ということになります。さらにウクライナの国家運営が現在こうした状況にある以上、それ以外にも費用負担をして支え続けなければならない項目は数多くあります。
 「ロシア軍をウクライナが撤退させるまでそれを続ける」となったら、その費用は総額でどれだけとなるか、どのくらいの期間必要となるのでしょうか?
下記のような記事もあります。
日本の「ウクライナ支援」のカネは一体何に使われているのか…「コソコソする」岸田政権が明かすべきこと(長谷川 幸洋) | 現代ビジネス | 講談社(1/4) (gendai.media)(1/12)
キール世界経済研究所によれば、これまでの昨年10月までの支援総額でも、軍事、人道、金融の3分野を合わせた総額で最大の供与国は、EUで848億ユーロ(13兆3000億円)に上っている。次が、米国の714億ユーロ(11兆2000億円)だ。日本は68億ユーロ(約1兆670億円)にすぎない。」(同記事より直接引用)
 
昨年10月まででウクライナ支援は総額で26兆円以上になっています。これからも「徹底抗戦、それまでウクライナ支援継続」となったら、その費用はどれだけとなるのでしょうか?当然現在までの26兆円を大幅に上回ることは確実です。「ウクライナの戦いは正義の戦い」といっても、その費用がどここから自然に湧き出てくるわけではありません。
  ではその巨額な費用を長期にわたりだれがどのように負担すべきなのでしょうか?「即時停戦・和平交渉での解決」を批判し、「徹底抗戦支持」と主張する方々は、これからも生ずる巨額の費用をだれがどのように負担すべきと考えているのか、明らかにすべきです。
 私の全くの個人的な感情としては、「その費用は徹底抗戦支持の人たちだけで負担すべき、徹底抗戦支持、とりわけそれを強く主張する人たちは、費用負担がどれだけ巨額になろうとも必ず喜んでその費用負担を受け入れるはずだ」なのですが、現実問題としてそれは無理だしあり得ない話です。
 「徹底抗戦支持」、それならそれに必要な巨額の費用はだれが負担するのか?その点建前論ではなく本音で議論すべきでしょう。
 「徹底抗戦支持」の人たちは本音でどのように考えているのか、特に現在米欧とも費用負担に消極的になり、徹底抗戦を続けたらこれまで米欧が負担していた分の請求書が日本に回ってきかねない状況の今、ぜひ明確なお答えを知りたいところです。

白井邦彦
青山学院大学教授
 
 



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