ゼレンスキー・NATO諸国政権の言動・マスコミ報道はそのまま信じていいのか?

お願いー前回の表題は「ウクライナ市民・社会のために『即時停戦・和平交渉での解決』を訴える」と変更させてください。
 前回の表題「ウクライナのために『即時停戦・和平交渉での解決』を訴える」については、「ウクライナ市民・社会のために『即時停戦・和平交渉での解決』を訴える」と変更します。よろしくお願いいたします。私は侵略・占領を行っているロシア政権は全く支持できず強く非難すると同時に、マイナン政変、その以後のウクライナ政権・ゼレンスキー政権についても全く支持できないという立場です。ただ私は、国家・政権・市民・社会は一体のものとは決してとらえずそれらをそれぞれ区別して考え、ウクライナについても支持しないのは「現在ではゼレンスキー政権」であり、ロシア政権の侵略の犠牲になっている、「ウクライナ市民・社会については寄り添うべき」と思っています。その点を明確化するため「ウクライナ市民・社会のために『即時停戦・和平交渉での解決』を訴える」としたく思います。含意をくみ取っていただきますよう、よろしくお願い申しあげます。

 ロシア軍の占領地でダムが決壊しました。それにより多数の犠牲が出ているようです。お亡くなりになられた方のご冥福を深くお祈りするとともに、心身に傷を負った方の回復と被災された方のご無事を心から願っております。
 この件については、ロシア政権の侵略・占領が背景にあることは明確です。ロシア政権による侵略・占領を強く非難し撤兵を強く求めるとともに、これがどちらの攻撃の結果であるとしたら、攻撃側を強く非難します。
 ここで「どちらの攻撃の結果であるとしたら」と述べたのは、現時点では原因は不明、さまざまな情報が交差していますが、これから真相なるのもが私たちに提示されたとしても、「それが本当に真実なのか」疑問に感じているからです。それゆえ「ロシア政権による侵略占領が背景にあることは明白」なので、対象を明確にしての非難はそれにとどめ、「どちらかの攻撃の結果であるとしたら、そちらを強く非難する」としておきたく思います。
 本日下記のような報道がワシントン・ポストによるものとして配信されています。
米、ウクライナの攻撃計画把握 ノルドストリーム爆発前に=新聞 (msn.com)(6/7)
「[ワシントン 6日 ロイター] - 昨年9月に起きたロシアから欧州に天然ガスを送る海底パイプライン「ノルドストリーム」の爆発を巡り、米当局がその約3カ月前にウクライナ特殊部隊による攻撃計画に関する情報を入手していたことが分かった。米紙ワシントン・ポストが6日、オンラインに掲載されたリーク情報に基づき報じた。報道によると、米中央情報局(CIA)は昨年6月、欧州情報機関を通じ、6人で構成するウクライナの特殊作戦部隊がノルドストリームを爆破することを計画しているという情報を入手。米当局はドイツや他の欧州諸国とも情報を共有しており、西側諸国が約1年にわたり、ウクライナによる妨害活動を疑う根拠が存在していたことになる。」(上記記事より直接引用)
 ノルドストリーム爆破直後の報道です。
ガス管損傷、米欧はロシア関与断定回避 直接衝突恐れる - 日本経済新聞 (nikkei.com)(22年10/3)
「サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は「NATOの同盟国の行為だとは考えていない」と発言。「ロシアが自分たちに責任があるときに『別の誰かがやった』と非難するさまを繰り返し見てきた」と指摘し、ロシアの加担を示唆した。」(同記事より直接引用)
 ワシントンポストの記事が事実だとしたら、米政権はウクライナ側に爆破計画が存在していたことをこの報道がなされた時点ですでに知りながら、「ロシア側の仕業」といったことを明確に示唆していました。ロシア政権による仕業と断定することは避けながらも、「ロシア政権側の自作自演」と考えるように誘導する報道は当時数多くなされました。
  そして今年3月、国連安保理では、ロシア側から出された調査要求の決議案を否決していました。
ノルドストリームの調査求める決議案否決、ロシアが提出 国連安保理 - CNN.co.jp(3/28)
「(CNN) ロシアは27日、国連安保理の会合で、ロシアから欧州へ天然ガスを運ぶ海底パイプライン「ノルドストリーム」が攻撃を受けた事案について調査を求める決議案を提案したが否決された。ロシアが提案した決議案に賛成したのは3カ国にとどまった。残る12カ国は棄権した。」(3/28)
  もしワシントンポストの報道が事実であるとしたら、ここで賛成しなかった米欧諸国政権のうちいくつかの政権は「ウクライナ特殊部隊がノルドストリーム爆破を計画していた」という情報自体は明らかに知りながら、国連の場では賛成しなかった、ということになります。
 もちろん、ノルドストリーム爆破がウクライナ特殊部隊によってなされたとしても、それによってロシア政権による侵略・占領がなんら免責されるわけではありません。しかしウクライナ・NATO諸国政権の言動、マスコミ報道をそのまま信じていいのか、と改めて示す事柄と思います。
 なお何度もいうように、「ワシントンポスト(あるいはニューヨークタイムス)が書いたから真実」とするのも危険です。その点は自戒を込めて述べておきます。
 ちなみに、クレムリンへのドローン攻撃がなされた当時は、日本のマスコミでは「ロシア政権による自作自演ないし反プーチン勢力の行為で、ウクライナ側とは考えられない」と言われ、それをもとに議論がなされました。しかし米紙が「ウクライナ政府側による攻撃」と報じると、その後モスクワになされた攻撃は、「ウクライナ側による攻撃」と当然にようにみなされ議論されています。ただウクライナ政府側は自国によるものとは公式に認めてはいません。
 ロシア政権側が言ったらプロパガンダで、米政権や米紙が言うことは真実、と日本では安易に受け止められる傾向があることも明白です。
 最初の述べたダム決壊問題について「どちらかの攻撃であるとしたらそちらを非難する」と非難対象を明白にしていないのも、これまで述べたことを念頭においてのことです。
 私たちの前に示される、ウクライナ・NATO諸国政権の言動、マスコミ報道は果たしてそのまま信じていいのでしょうか?またロシア政権側の主張は「すべて」プロパガンダと切り捨ててしまっていいのでしょうか。その点は慎重に見極める必要がある、と強く考えています。

付記
野口和彦先生のツイートです。
野口和彦(Kazuhiko Noguchi)さんはTwitterを使っています: 「カーネマン氏「自分の信念を肯定する証拠を意図的に探すことを確証方略と呼(ぶ)…『仮説は反証により検証せよ』と科学哲学者が教えているのにもかかわらず、多くの人は、自分の信念と一致しそうなデータはかり探す…判断に必要な情報が欠けていても、それに気づかない例があとを絶たない…(だから)意図的に『反対のことを考える戦略』は、バイアスのかかった思考を排除することにつながる」(148, 160, 226頁)←ウ戦争の正確な分析には、西側メディアが流すウ軍の戦果や強化と相いれない証拠の評価も必要。そして、そうする人は「親露派」のレッテルを貼られやすい。」 / Twitter
 物事の本質・真実に迫るためには、対立するさまざまな見解なども視野に入れそれらを考察することが必要不可欠、ということは当たり前のことです。しかしロシア・ウクライナ戦争では、ゼレンスキー政権・NATO諸国の言動やマスコミ論調と異なる見解を視野に入れて考えるだけで「親ロ派」とレッテルを張られる傾向があります。
 「親ロ派」「ロシア寄り」のレッテル張りがいかに危険か、改めて強調しておきます。なお「親ロ派」「ロシア寄り」か否かの基準はどこにあるのか、そうしたレッテル張りをする方々にぜひご教示願いたいと思います。

白井邦彦
青山学院大学教授
 



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