ウクライナ若年層「和平のためには妥協支持」多数、米「ウクライナ支援多すぎる」最多、米供与武器10億ドル相当行方不明、それでも徹底抗戦?????

少し前の記事ですが、ウクライナ市民の世論調査結果として以下の記事が配信されています。
ウクライナ、交渉による戦争終結を望む世論が半数に(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース(23年12/5)
「■若者とウクライナ東部に多い妥協派
11月に実施されたこの調査では、回答者の44%が「第三者の仲介のもと交渉を行い、妥協と解決を模索する」と回答した。ロシアとの戦闘開始から1年経った今年2月の時点では、交渉による解決を支持した人は35%に過ぎなかった。 ロシアに占領された領土を奪還するまで戦闘を続けることを支持するウクライナ国民の割合も、この1年で減少傾向にある。2月の時点では、回答者の60%が「全ての領土を奪還するまで」戦闘を続けるという考えを支持したが、11月の調査ではその割合は48%に減少した。 ウクライナのニュースサイト「ストラナ」は調査結果を報道する中で、和平のためには妥協を支持するという回答は15~35歳の若者(支持者の45%)とウクライナ東部の住民(51%)が多いと指摘。より年配のグループ(36~50歳)とウクライナ西部の住民は、いずれも50%が戦闘の継続を支持した。」(同記事より直接引用)
 昨年11月時点では、ウクライナ市民の44%が「第三者の仲介のもとで交渉を行い、妥協と解決を模索する」と答え、「全ての領土を奪還するまで戦闘継続」48%、昨年2月時点の調査からして、後者の比率は減少し、両者は拮抗し始めています(なお昨年2月時点の調査でも「全ての領土を奪還するまで戦闘継続」は実は60%、当時「ウクライナ市民の圧倒的多数は全領土武力奪還支持」と主張されていましたが、それはなんだったのでしょうか?)。
 さらに実際に戦地にいくことになる15~35歳の若年層では、「和平のためには妥協を支持する」がかなり多くなっています。ちなみに徴兵対象年齢の男性で徴兵拒否で国外に逃れた人の数が少ないことは、この間かなり報道されていますから、戦地に行き戦わなければならない層では「和平のためには妥協を支持する」の人たちの比率は、実際にはこれよりも高い事が想定されます。
動員逃れの越境を問題視 ゼレンスキー氏、帰国促す | 共同通信 (nordot.app)(1/12)
「【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、国外にいる動員対象年齢のウクライナ人男性について、ウクライナに戻って国を支えるべきだとの考えを示した。訪問先エストニアでのカラス首相との共同記者会見で「前線にもおらず、税金も払わず、違法に国を離れているとしたら問題だ」と述べ、動員逃れの越境を問題視した。ウクライナは18~60歳の男性の出国を原則として禁じ、徴兵に備えるよう義務付けている。」(同記事より直接引用)
 ゼレンスキー氏は徴兵対象年齢の男性にしきりに帰国を促しています。要するに「戦地に動員される層ではそれを拒否している人たち」が多くなっているわけです。
 「即時停戦・和平交渉での解決」の主張に対しては「それは当事者であるウクライナ市民が決めることだ」との反論がよくなされました。そのように主張した人たちはこの世論結果・状況をみて、「実際に戦わなければならない当事者である層で『和平交渉・妥協を支持』が増えているから、当事者の意見を尊重してゼレンスキー政権は『和平交渉での解決も模索すべき』だ」と主張するのでしょうか?そして「当事者が決めること」として「即時停戦・和平交渉での解決」論を批判していた人たちで、「当事者が決めること」を根拠に現在は上記のように主張している人たちはどれだけいるのでしょうか?「当事者が決めること」としながら現在そのような主張はしないとしたら、それはなぜなのでしょうか?

(20) 野口和彦(Kazuhiko Noguchi) on X: "ギャラップ世論調査(2023年11月) アメリカ人全体の41%が「アメリカのウクライナ支援は多すぎる」と答えており、これは2022年8月の24%、2023年6月の29%から上昇している。「米国の支援は適切」と答えたのは33%で、6月の43%から減少した。 https://t.co/bgxYUqQfR0 https://t.co/GlqWgcixPI" / X (twitter.com)


前記野口和彦先生Xより直接引用

 最大の軍事支援国アメリカでは、「ウクライナ支援は多すぎる」が41%で最多、しかも上の図のようにこの比率は最近急増しています。最大の軍事支援国アメリカ市民の意見もこのような次第となっています。

 そうした中で以下のような事実も報道されています。
米国がウクライナに渡した兵器、10億ドル分が「行方不明」 盗難の恐れも(Forbes JAPAN) - Yahoo!ニュース(1/13)
「米国防総省は11日、米国などがウクライナに供与した兵器について、およそ10億ドル(約1450億円)相当分が適切に追跡されていないとする報告書を公表した。米議会がウクライナ向け追加予算をめぐって紛糾するなか、これらの兵器は盗まれたのではないかという疑念も出ている。」(同記事より直接引用)
 アメリカがウクライナに供与した武器の10億ドル(約1450億円分)が行方不明、これらの兵器は「盗まれた」のではないかという疑惑も出ているそうです。これほどの額・量の武器が行方不明となってしまっているとは、いくら戦時下といえ信じられないことです。実際それらの武器はどこに行ってその後どのような勢力にどのように使われることになるのか(現に使われているのか)、恐ろしい話です。侵略されたウクライナ政府を貶めるような話で申し訳ないですが、「ウクライナがロシアと丙丁つけがたい汚職腐敗国家」「武器の横流し疑惑が絶えない国」ということは否定できません。もちろんウクライナがそうした国だからといって、ロシア政権による侵略のなんら免責理由にはなりません。私はロシア政権による侵略自体は強く批判します。
 しかし軍事支援・武器供与にはこうしたリスクがある、特にウクライナに関してはこの点特に留意すべきだった、のも事実です。

 以上の点からも私は「即時停戦・和平交渉での解決」を強く訴えたく思います。

白井邦彦
青山学院大学教授


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