ロシア・ウクライナ戦争について考える6-ウクライナへの武器供与は「国際的」な義務なのか?-

基本的立場
ロシア政権によるウクライナ侵略、その他数々の蛮行は全く許容できず強く抗議するとともに、人命尊重の観点から即時停戦・和平交渉による解決を主張します。同時にマイダン政変・ゼレンスキー政権も支持できない、という立場です。

 ドイツで国防大臣が辞任だそうです。その理由については様々な点が指摘されていますが、武器供給問題がその背景のひとつであることは事実でしょう。
独国防相が来週辞任へ=政府筋 | Reuters(1/14)
 ドイツはウクライナへの武器支援に関しては相対的に慎重な立場でしたが最近その方向を転換しつつあります。ただ供与を求められている戦車に関しては慎重な立場をとっており、それに関しては「国際的」な圧力を受けている次第です。
「ウクライナへ戦車送れ」独に圧力強まる 英は供与検討 露大攻勢の観測(産経新聞) - Yahoo!ニュース(1/12)
   武器供与に関しては一歩間違えると武器供与国は紛争当事国になってしまう危険があります。下記の伊藤氏の発言の次第です。
「ウクライナを助けたい」日本が武器を送れない理由 | WANI BOOKS NewsCrunch(ニュースクランチ) (wanibooks-newscrunch.com)(8/29)
  私は軍事支援には反対だし、日本が送っている防弾チョッキなどならセーフとも言い切れないと感じますが、たとえ軍事支援を認めるとしても紛争当事国になると大きなリスクとなりますから、供与する武器の種類に関して慎重になるのは当然です。そもそもウクライナに武器を供与することは「国際的」な義務ではないのですし、どう判断するかはそれぞれの国の主権の問題です。
 軍事支援問題に関してゼレンスキー政権が必要としている武器を供与しないと「国際的」な圧力を受ける、というのはいかにロシア政権による侵略が不当なものであっても、それは行き過ぎではないでしょうか。
 なお「国際的」ということを「  」でくくりましたが、こうした問題の時に言われる「国際的」とか「国際社会」とはどこを指しているのでしょうか?
 野口和彦先生のツイッター記事です。
野口和彦(Kazuhiko Noguchi)さんはTwitterを使っています: 「我々がメディアや「識者」聞かされる、いわゆる「国際社会」⁉︎」 / Twitter
  実は「国際的」「国際社会」ということで対象となっているのは上記の図にある世界の一部地域のことを指しているにすぎないのではないか、と私も思います。「国際秩序」ということもよく言われますが、それが「ロシア政権の侵略は許されないが、イスラエルのパレスチナ占領、イスラエル・アメリカなどによるシリア攻撃占領は黙認する」というものであれば、そうした「国際秩序」なるものもやはり上の図の世界の一部地域のみに通用する「国際秩序」ではないでしょうか。それを「国際秩序」とすることに冷ややかに見ている人々・国々も全世界でみれば少なくない、と思います。

白井邦彦
青山学院大学教授
 
 
 

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