ガザ「国境なき医師団」にも死者、ウクライナ・イスラエル双方への米独の武器供与をどうみるか?「欲しがりません・ウクライナが勝つまでは」は成り立つのか?

国境なき医師団にも犠牲者 ガザ北部の病院攻撃で:時事ドットコム (jiji.com)(11/22)
「 国際医療NGO「国境なき医師団(MSF)」は、パレスチナ自治区ガザ北部のアルアウダ病院が21日に攻撃を受け、医師3人が死亡したと発表した。うち2人がMSF所属の医師。イスラエル軍によるガザ地区への攻撃開始後、所属医師が犠牲になったのは初めてという。」(同記事より直接引用)
 イスラエルに対してはアメリカとともにドイツも積極的、かつかなりの武器供与を行っています。
直言(2023年11月20日)イスラエル批判は「反ユダヤ主義」なのか――ドイツ政府の異様なイスラエル擁護の背景 (asaho.com)
「このドイツとイスラエルのねじれた関係が、「10.7」(イスラエルの「9.11」)以降、表面化してきたものといえる。ドイツによるイスラエルへの武器輸出も、こういう脈絡で理解することができる。最近、ドイツ政府はイスラエルへの武器輸出を大幅に増やした。t-online11月8日が伝えたもので、「11月2日までに、3億300万ユーロに相当する輸出を政府は承認した。承認されたのは特に防空・通信機器の部品に関するものだ」という(t-online.de 08.11.2023)。「ドイツ政府が積極的に支援しているイスラエルの強大な軍事力は、ドイツの防衛関連企業にとっては金儲けの機械でもある。わずか1年で、ドイツからイスラエル政府への納入額は10倍になった。このため、ドイツは「間接的に中東の戦場におけるアクターになっている」(nd.KOMPAKT vom 10.11.2023)。11月になって防空・通信機器をイスラエルに輸出したことは、ガザ「空爆」を間接的にではなく、直接的に支援するものといえるだろう。」(同論考より直接引用)
 米独ともロシア政権の侵略に対しウクライナに軍事支援武器供与を行っています。それとともに自衛権の範囲を明らかに超え完全な虐殺行為を行っているイスラエルに対しても武器供与を行っています。同じ国がウクライナ・イスラエルに同時に武器供与を行っているわけです。これをどう見るか?イスラエルへの武器供与は国際法違反に積極的に加担する行為で当然認められません。しかし両国はウクライナにも武器供与を行っている、その武器供与を肯定的にみていいのでしょうか?国際法違反のイスラエルに武器供与を行っているとはいえ、ウクライナに対しては国際法違反のロシア政権の侵略に対するものであるからそちらは容認、でいいのでしょうか?その背後にある国際法・国際秩序に関する判断、武器供与を行う力学、からいって、私は両国の武器供与に関しイスラエルに対するものだけでなくウクライナについても肯定的にみることはとてもできません。「ウクライナの米欧の軍事支援容認」の方々は、その米欧がイスラエルの虐殺を基本的に支持し、そのうちの最大の軍事支援国アメリカ、そしてドイツが同時にイスラエルにも武器供与を行っていることを、ウクライナへの武器供与との関係でどのように捉えるのでしょうか?

ウクライナの戦況に関しての野口先生のXからです。
(20) 野口和彦(Kazuhiko Noguchi) on X: "ウォーカー氏「ウクライナ国民は、都市を狙ったミサイルや無人偵察機による恐怖が毎夜続くだけでなく、重要インフラに対するロシアの潜在的な攻撃を今年の冬も行われることを覚悟するにつれ、ロシアの敗北とドンバスとクリミアの返還がすぐそこまで来ているという半年前の楽観論は消え始めている。『私たちが夢見ていたような勝利にはならないだろうし、それには思ったよりもずっと時間がかかるだろう』と、元インフラ相のヴォロディミール・オメリヤンは語った…(ジャーナリストの)シャスターは、ゼレンスキー大統領が戦場での勝利の見込みを妄想している、と苛立つゼレンスキーの顧問の言葉を引用した。『もう打つ手がない。我々は勝てない。すみませんが、彼にそう言ってみてください』とその顧問は言った」(野口和彦先生Xより直接引用)
 率直にいって反転攻勢も当初言われたようには成功していません。
ロシア侵攻、早期終結期待できず ゼレンスキー氏、汚職対策も強化:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)(11/21)
「 【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は首都キーウ(キエフ)で米フォックス・コーポレーションの最高経営責任者(CEO)ラクラン・マードック氏らと会談し、ロシアによる侵攻が「われわれが望むように早くは終わらない」と述べた。大統領府が20日発表した。」(同記事より直接引用)
  ゼレンスキー氏も上記のように述べ、反転攻勢が順調ではないこと、厳しい戦況にあることを認めています。
 こうした中以下のような動きもあります。
ウクライナ国境でトラック3000台立ち往生、ポーランド運転手が封鎖 | ロイター (reuters.com)(11/20)
「キーウ 19日 ロイター] - ウクライナ当局によると、ポーランドのトラック運転手による道路封鎖が原因で、両国国境のポーランド側で19日、燃料や人道支援物資などを運ぶウクライナ行きのトラック約3000台が立ち往生した。ポーランドのトラック運転手らは、今月に入ってウクライとの国境検問所3カ所につながる道路を封鎖し、ロシアのウクライナ侵攻開始以降、事業機会を海外の競合社に奪われている問題に対する政府の無策に抗議している。ウクライナ政府の当局者らは先週、ポーランド政府と抗議阻止に向けた合意がまとまらなかったと明らかにしていた。」(同記事より直接引用)
  もちろんこのトラック運転手たちは「ロシア政権の侵略賛成」というわけではないはずです。しかし侵略されたウクライナのためとはいえ、仕事がなくなれば生活できなくなります。「欲しがりません・ウクライナが勝つまでは」は、生活がかかれば成り立ちません。そして戦争が長期化すればするほどそうした矛盾が顕在化します。
 米欧の武器供与問題・戦況・生活への悪影響、それらを考えあわせれば、ロシア・ウクライナ戦争についても、「即時停戦・和平交渉での解決」と強く訴えます。

白井邦彦
青山学院大学教授

  

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