ICCの「職務」とは何か?イスラエル政府関係者に逮捕状が出されないのはなぜか?

 前回も紹介したICC判事の赤根氏のインタビュー記事です。
プーチン大統領に逮捕状を出した日本人…「我々の職務を全うする」 国際刑事裁判所の赤根智子判事 - 記事詳細|Infoseekニュース(12/30)
 この赤根氏の発言については下記で紹介されている現実からして、最初どうしても違和感が否定できませんでした。
ムスタファは今も囚われたまま:フリーダムシアター|AzusaSuga (note.com)(12/23)
「国際刑事裁判所では、強制失踪は人道に対する罪とみなされている。
国際刑事裁判所ローマ規約第(7)条(1)(1)
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イスラエルには、声を上げるパレスチナのアーティストやジャーナリストを標的にした長い記録があります。フリーダムシアターに対する最近の攻撃は、そこで活動する人々を黙らせ、シアターを閉鎖しようとする攻撃パターンに沿ったものです。」(同記事より直接引用)
  私はICCがイスラエル政府関係者に逮捕状を出した話は聞いたことがありません(私の知識不足ならご教示ください)。確かにどのような重大事件であれ刑事責任を問うことには慎重な手続きが必要、一時の感情や、世論動向に左右されてはなりません。しかしイスラエル政府関係者に逮捕状が出されていないことには、上のAzusaSuga氏の指摘する事実からどうしても疑問があります。

 ロシア政権による侵略占領その他数々の蛮行について、政権の最高責任者であるプーチン氏にきわめて大きな政治責任があることは明白です。ではプーチン氏個人の刑事責任はどうか?私は法の素人であり、かつどのような重大案件であっても個人の刑事責任を問うことについては慎重でなければならない、そうした留保をつけてもやはり、プーチン氏個人に刑事責任がないとはとてもいえないと考えます。
 とはいえイスラエル政府関係者については現在ガザで虐殺がなされ、しかもそれに至るまでイスラエルによる数々の蛮行がなされ続けている、という現実から、イスラエル政府関係者に逮捕状がだされないのは、「法の下の平等」原則を逸脱しているのではないか、と考えざるをえません。

 しかし以下のようにも実は私は考えています。
 赤根氏が「職務を全う」という時、ICCの「職務」には、「米欧およびその陣営に属する戦争犯罪は見逃す」ということも「重要職務事項」として含まれているのではないか、そうした意味でなら赤根氏の「職務を全う」は全くそのとおりでしょう。赤根氏の「職務を全う」にはそうした含意がある、として私たちは読むべきと考えます。
 私は「職務を全う」をこのように読んでいますが、いかがでしょうか?

白井邦彦
青山学院大学教授
 

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