再び「領土武力奪還のために劣化ウラン弾・クラスター弾までもが必要なら、武力奪還から即時停戦・和平交渉による領土回復に転換すべき」と強く訴えます。

 イスラエルが震災で苦しむシリアにまたも攻撃です。
イスラエルがシリアへの攻撃でアレッポ空港を再び利用不能にする一方、イスラエル軍ドローンが謎の墜落(青山弘之) - 個人 - Yahoo!ニュース(3/23)
震災後4度目です。青山先生は上記論考の最後に「イスラエルがシリアと戦争状態にあるから、こうした行為は当然だとして黙認することも可能だろう。だが、こうした姿勢は、イスラエルが日々侵犯を繰り返していることを知らないこと以上に、日本をはじめとする西側諸国にとっての存在意義(と主張するもの)である人道に背いていることは言うまでもない。」と述べています。確かにいかに何でも非人道的です。人道を「存在意義」としていると主張しているいわゆる「西側諸国」はなぜこちらは問題にしないのでしょうか?

 前回述べたようにイギリスが劣化ウラン弾をウクライナに供与することを決定しました。
英、劣化ウラン弾供与決定 対戦車、ロシアは対抗措置示唆(共同通信) - goo ニュース(3/23)
  実は私はクラスター弾供与要求とともに劣化ウラン弾供与問題もロシアサイドのプロパガンダ、クラスター弾供与要求問題はゼレンスキー政権が、劣化ウラン弾供与問題はイギリス政府が即座に否定するはず、と考えていました。しかしともに実際そのとおりでした。しかもこの問題に関してはゼレンスキー政権・イギリス政府とも全く躊躇なく認めています。クラスター弾は禁止条約がありますし、劣化ウラン弾については過去の使用でかなり問題視され非難されたにもかかわらず、です。いかに侵略に対抗するため、とはいえこれには驚いてしまいました。
 今回の劣化ウラン弾供与に関しては「核軍縮キャンペーン」が下記のような批判を行っています。
CND condemns UK decision to send depleted uranium shells to Ukraine - (cnduk.org)
 ここで述べられているように、劣化ウラン弾は人々への健康・環境への被害が膨大です(というか武器なるものはすべてそうですが)。過去に使用されたケースでも健康環境被害が報告されています。劣化ウラン弾を供与することは「ウクライナの人々を助けることにはならない」と私も考えます。
 ゼレンスキー政権はクラスター弾の供与も求めています。
 クラスター弾・劣化ウラン弾、これらが領土武力奪還に必要なら「即時停戦・和平交渉による領土回復へ」と転換すべきです。
 そもそも「ウクライナへの軍事支援」というあり方が本当に解決方法なのでしょうか?
   米国制服組トップの3/23に報じられた発言です。
野口和彦(Kazuhiko Noguchi)さんはTwitterを使っています: 「ミリー統合参謀本部議長「ウ全土から露人を一人残らず物理的に追い出すことができるかどうかという現実的な問題もある。それは軍事的に本当に難しく、血と財産の莫大なコストがかかる。誰かが交渉のテーブルにつく方法を考え、そこで最終的に決着をつけることになるだろう」。 https://t.co/xCNeGqQKH4」 / Twitter
 領土武力奪還のためには「膨大な血のコスト」つまり「多数の人々の生命の犠牲」が必要、さらにクラスター弾・劣化ウラン弾まで使うことになったら「生命の犠牲」はいったいどれだけになるでしょうか。環境被害もどれだけになるのでしょうか?結局交渉により「最終的な決着」をつけるしかないわけです。同氏はたびたび同種の発言をしており、「軍事的合理性」という観点から、このように考えざるをえない、ということでしょう。
 今年はイラク戦争開戦から20年ですがそのイラク戦争との比較として下記のような論考もあります。
ロシアのウクライナ侵攻は米軍のイラク戦争とどう違うのか|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)(22年4月30日)
  アメリカのイラク侵略、ロシアのウクライナ侵略、両者とも同様のことで共に強く非難否定されるべきことです。しかし今回ウクライナへ軍事支援を行っている国々の多くはアメリカのイラク侵略に加担するか少なくとも容認した国々です。フランス・ドイツなどはイラク侵略を批判した国はありましたが、ウクライナに軍事支援している国でイラクに軍事支援などした国はありません。他国への侵略への対応が大きく異なるのはなぜか、下記の論考はそれを解くひとつの手がかりを提供していると思います。
ウクライナ戦争で大儲け、米軍産複合体の内実(JBpress) - Yahoo!ニュース(3/24)
 「 なぜウクライナ『には』軍事支援するのか(この問いは例えば「シリアが、パレスチナが侵略されても軍事支援しないのはなぜか」という問いでもある)」のひとつの鍵が最大の軍事支援国アメリカの「軍産複合体」という構造にあることは間違いないでしょう。こうした構造に基づく「軍事支援」という方法を認めていいのか、結局それを認めることは劣化ウラン弾、クラスター弾といった危険度の高い武器の供給へ、そしてさらに危険度の高い武器の供給へと導くことになると思います。
 軍事支援による解決、という方法はすでに劣化ウラン弾・クラスター弾の供与使用というレベルにまでなっています。それはウクライナの人々を助けることにはならない、のではないでしょうか。
 「領土武力奪還のために劣化ウラン弾・クラスター弾までもが必要なら即時停戦・和平交渉による領土回復へ転換すべき」と再び強く訴えたく思います。
 軍事支援は軍事紛争を解決するどころか、逆にエスカレートしていく、という現実が私たちの目の前につきつけられています。

白井邦彦
青山学院大学教授
  
 


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