米のイスラエルの軍事支援とセットのウクライナ軍事支援を肯定していいのか?

米上院、ウクライナ支援予算案を可決 下院は共和反対で成立見通せず | 毎日新聞 (mainichi.jp)(2/13)
「米連邦上院は13日、ウクライナやイスラエル、台湾への軍事支援を盛り込んだ総額約953億ドル(約14兆2300億円)の緊急補正予算案を可決した。」(同記事より直接引用)
 米上院ではこの間もめていたウクライナ軍事支援案が可決しました。ただ下院での可決は不透明です。
 同時に上記の記事の文言から明らかなように、アメリカが行おうとしているウクライナ軍事支援は虐殺行為を繰り返すイスラエルへの軍事支援とセットになったものです。この点どう考えたらいいのでしょうか。
 ロシア政権によるウクライナ侵略は当然違法不当、領土占領も全く許されないことです。この点は当然の前提としてまず強調しておきます。
 ただしウクライナが独力で軍事力をもってロシア軍を追い出すことは不可能、ウクライナが軍事力で対抗するためには米欧、とりわけアメリカの軍事支援が不可欠です。その軍事支援がガザなどで虐殺行為を繰り返しているイスラエルに対する軍事支援とセットだとしたら、私は全く肯定的にみることはできません。
 しかし「そうしたアメリカの軍事支援には反対、ウクライナは独力で戦うべき」では、ロシア政権の侵略の容認論です。
 虐殺を繰り返しているイスラエルの軍事支援のセットとなっているようなアメリカの軍事支援も全く肯定できない、同時にロシア政権の侵略は当然肯定できない、となれば、やはり「即時停戦・和平交渉での解決」ではないでしょうか。
 現段階でウクライナの徹底抗戦支持・そのためのアメリカの軍事支援容認の方々は、徹底抗戦に不可欠なアメリカの軍事支援が虐殺を繰り返すイスラエルに対する軍事支援とセットとなってしまっていることを、どう考えるのでしょうか?
「ロシア政権の侵略は不当、それに対抗するウクライナは正義、正義のための軍事支援だから、それが一方で大きな不正義である虐殺を繰り返すイスラエルへの軍事支援とセットでも、ロシア政権の不正義を許さないためには、イスラエルの行為およびイスラエルへの軍事支援という不正義には目をつぶるべき」なのでしょうか?
 実はイラク戦争の時以下のような議論がありました。
「アメリカのイラク攻撃は確かに問題、しかし日本は北朝鮮の軍事的脅威に直面しており、いざとなったらアメリカの支援が必要、それを考えたら日本はイラク攻撃というアメリカの不正義には目をつぶらざるをえないし目をつぶるべき」
 私はこうした考え方には全く賛成できません。この考え方は自分たちのためなら、他の人命の犠牲や国際法違反は黙認すべき、という考え方だからです。逆の立場におかれたなら容認できないことは明白です。
 イスラエルへの軍事支援とセットになっているウクライナへの軍事支援、そのまま肯定していいのか、やはり問いかけたいと思います。

青山弘之先生の論考です。ガザとともに、イラクやシリア(シリアの米軍駐留は明らかに国際法違反で違法駐留)で何が起きているを含めてぜひ青山先生の論考を読んでいただきたく思います。
米軍兵士3人が犠牲となった前哨基地への攻撃に対する2度目の報復はイラクとシリアの市街地が標的(青山弘之) - エキスパート - Yahoo!ニュース(2/8)
青山先生はこの論考を下記の文章で結ばれています。
「イスラエル・ハマース衝突が始まった当初、イスラエルの占領、つまりは力による現状変更や、無辜のパレスチナ人を狙ったイスラエル軍の無差別攻撃への欧米諸国政府の対応や言動は、ロシアによるウクライナ侵攻におけるそれとは対照的で二重基準だとの批判が散見された。

こうした二重基準は今に始まったことではないが、シリアとイラクの市街地、あるいは民間人に対する米国とイスラエルの2度目の攻撃(報復)は、国際社会の不条理(あるいは「常識」)を再認識させるものである。」(同記事最後より直接引用)
 私たちが、国際法・国際秩序というとき、青山先生のいう「国際社会の不条理(あるいは『常識』)」なるものに引きずられてしまっていないか、今一度考えていただければ、と僭越ながらお願いしたく思います。

青山学院大学教授
白井邦彦
 

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