ウクライナ、クラスター爆弾保有、使用示唆、供与要求・条約署名批准国はウクライナへのあらゆる軍事支援の停止をすべき

 ロシア・ウクライナ戦争においてはこれまでロシア軍によるクラスター爆弾の使用が何度か報じられ強い非難が浴びせられました。ロシア軍による使用は言語道断であり絶対許されないこと、と私も強く非難します。以下の見解はそれを大前提としたものです。

 私は「武力には武力で」という考え方には反対、即時停戦・和平交渉による解決を図るべき、という立場です。軍事支援についても基本は反対、ただ即時停戦・和平交渉による解決を促進する手段として、かつそれに至るまでの被害を最小限に抑える範囲でのみ例外的に許容される、というスタンスです。この私見は前に述べました。そしてそれに対する想定される疑問にも一応の解答は示してつもりです。ただもうひとつ問うべきことがあったと思っています。それは「国際条約で自国が保有使用を否定した武器を保有ないし使用しているないし使用しようとしている国に対する軍事支援は容認していいのか」という点です。
 3/7に下記のような報道がなされています。
ウクライナ、クラスター爆弾供与巡り米に要求強める=米議員(ロイター) - Yahoo!ニュース(3/7)
 実はウクライナは以前からクラスター爆弾の供与を求めており、その使用も示唆していました。
ウクライナ、米にクラスター弾供与要請 本格検討至らず 米報道 - 産経ニュース (sankei.com)(22年12/9)
  この要請は軍事支援国にとっても波紋を呼ぶものでした。
ウクライナ、クラスター爆弾の供与要求 欧米で波紋 - 日本経済新聞 (nikkei.com)(2/19)

 ちなみにウクライナ軍もロシア・ウクライナ戦争ですでにクラスター爆弾を使用したのではないか、との疑惑が報じられたこともあります。

NYT「ウクライナ軍もクラスター爆弾使用」…民家にも破片 | Joongang Ilbo | 中央日報 (joins.com)
(22年4月19日)

 また過去にはウクライナ軍が国内の親ロ派勢力に使用したのではないか、と国連が懸念を表明したこともあります。
ウクライナ軍がクラスター爆弾使用か 国連が懸念表明 - CNN.co.jp(14年10月22日)

 ウクライナ軍側のクラスター爆弾に関する考え方についてはウクライナの国営通信社Ukrinformが軍総司令官顧問の言葉として次のように伝えています。
クラスター爆弾はウクライナにとっては合法的な武器=ウクライナ軍総司令官顧問 (ukrinform.jp)(2/6)
(ウクライナ軍総司令官顧問のこの人物は米国籍ですが、こうしたことはよくあるのでしょうか?また偶然でしょうか?この点も気になります)。
  同顧問は西側諸国に「クラスター爆弾はウクライナにとって合法的な武器だ」として「西側諸国に早く供与せよ」と要求し、「クラスター弾に関する条約」(クラスター弾の保有・使用・製造を禁止)を否定・侮辱しているともとれる発言をしています。私はこの考え方には全く同意できません。
 ウクライナに対する軍事支援国のうちアメリカ以外の大部分は「クラスター弾に関する条約」を批准しているかそれに署名しています(ただしアメリカのほか、ロシア、ウクライナは署名も批准もしていない)。
 自国が国際条約上保有使用を否定している武器を保有し供与を要求し使用しようとしている国に軍事支援することは許容しうることでしょうか。確かに同条約上そうした行為自体は禁止されていません。しかしそうした国に軍事支援することは大きな矛盾ではないでしょうか。
 現在米欧日によるウクライナへの軍事支援は先に述べた軍事支援についての私見の範囲を超えており私は賛成できません。同時に国際的に問題となっているクラスター弾について保有し使用しようとしているウクライナに対しては、「クラスター弾に関する条約」の署名批准国は最低でもウクライナがクラスター弾を完全破棄するまで、軍事支援を停止すべきと強く主張したく思います。
 ウクライナが侵略された側ですが、侵略に対する抵抗であっても何をしてもいい、というわけではありません。条約の精神からいって現状のままウクライナに軍事支援することは大きな問題であると考えます。

白井邦彦
青山学院大学教授
 




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