(創作)仮面ライダーガッチャードデイブレイク16話 ディープな真実

前回までの仮面ライダーガッチャード

ケミーカードを盗んだ本上銃斗と、釧路零花がガッチャンコ!ガッチャンコ!ガッチャンコ、、、、
(時間が巻き戻る)


ー本上銃斗
あの日、俺は見てしまった。

(回想 グリオンに連合の施設が制圧され居城が築かれた日)
冥国のデスマスク(緑)「なるほど。自分だけが助かる代わりに他の人間の命を犠牲にする、と。ふっふっふ、実に醜いですね。」
零花「お願いします!お願いします!」
冥国デスマスク(緑)「良いでしょう。それでは、我々の命令に従っていただきます。」
(零花がデスマスクと取引をする現場を目撃した銃斗。)

零花は悪魔に魂を売った。俺はまず、奴らの狙いが、こちらの主戦力である一ノ瀬宝太郎だと考え、戦力の分散を図った。そうすれば敵の狙いも分散し、零花も動きづらくなると考えた。だが、一ノ瀬の意思は固かった。

だが、零花は意外な動きをした。彼女は自ら一般市民を受け入れる避難所の開設を提案した。一ノ瀬だけが狙いなら、少人数の方が狙いやすい。すなわち、敵の狙いが一ノ瀬だけでないことを意味する。その後、零花は一般の避難者に対して、「自分たちは敵と同じ錬金術師である」旨を強調した説明をして、錬金術師に対する不信感を煽った。おそらく、一般人と錬金術師を対立させる布石を打ったのだろう。だが、集団の感情などというものはいとも簡単に塗り替わる。一ノ瀬が仮面ライダーとして戦い、市民を守る姿を繰り返し目にすれば、一般人の錬金術師に対する不信感は勝手に薄れていくはず。それならむしろ、錬金術師全体への不信感を、一個人への不信感にすり変えておいた方が、いざというときに都合がいい。なぜなら、極限状態に置かれている人間の心理からは、対象の見えない漠然とした不安や恐怖よりも、「間違いなくこいつが悪い!」と断定できるような、特定個人に対する不信を抱いている状態の方が、集団の結束がより強固なものになる。そこで、俺はわざと不穏な動きをして、不信感の矢印の矛先が集まるよう仕向けることにした。もし向こうが何か錬金術師の信用を失墜させるような出来事を起こしても、俺個人に対する不信感の種を蒔いておけば、その種は錬金術師に対してではなく、本上銃斗個人に対する憎しみを咲かせてくれるはず、俺だけが悪者になって事態を収束させられる、はずだった。

しかし、奴は思ったよりも早く、そして大胆な動きを見せた。一般人の家族を殺害したのだ。

(回想 デイブレイクが山寺親子を助けた日の夜)
「うっ、、うう、、、。」
零花「はぁ、はぁ、はぁ、、」
(自分が人を殺めた事実に動揺する零花)

完全に俺の読みが甘かった。まだ錬金術師に対する不信感が抜けきっていなかった一般人が起点となって、錬金術師に対する憎しみは日に日に膨らんでいった。その後も零花は次々、一般人を殺害し、ついには錬金術師にも犠牲者が出るようになると、いよいよ事態は混沌を極めた。普通ならボロのひとつでも出しそうなものだが、おそらく禁術の類に手を出していたのであろう。完全に姿の見えない悪意に怯え、みんな他人を信じられなくなり、「誰が犯人だ」やら「誰誰が何々を企んでいる」だの、根拠のない噂話や憶測も広がった。もしかしたら、度重なる殺人の中には、零花が関与していないものもあったかもしれない。終わりも対象も見えない恐怖や憎しみは、簡単に人間を化け物に変える。

その中で、一ノ瀬は一般市民に繰り返し和解を持ち掛け、ドレットルーパーの襲撃からも彼らを何度も救った。たとえ、感謝されなくても。おそらく最後の一線を越えさせなかったのは、単に一ノ瀬の仮面ライダーの力を失えば、グリオンへの対抗手段を失うという現実的な抑止力が働いたからに過ぎないのかもしれないが、それでも一ノ瀬の存在が、零花の計画を水面下で阻止していたことは間違いない。

ところで、俺は、一ノ瀬について気付いてしまったことがある。おそらく彼は、すでにこの戦いを諦めている。彼が戦っているのは、グリオンを倒すためではなく、助けを求める人々の声を無視できないという強迫観念ゆえに、戦いを放棄できなくなっている、、いや、もしかしたら、彼が戦いの中で失った仲間のためなのかもしれない。ともにグリオンを倒すことを志し、その本懐を遂げらぬままに命を落とした仲間たち。その存在が、彼に安易に戦いを放棄することを許さないのではないか。 

一ノ瀬は俺の前で「ケミーは仲間ではない」と断じた。ケミーと人間の共存を夢見ている新人がいるらしいという噂で彼を知った身としては、その発言は驚くべきものだった。だがそれは、彼にとっての仲間とは、ともに難題に立ち向かい、互いを支え合う存在だからなのではないか。彼はこれまで幾度となく、ともに戦い、信じあってきた仲間を目の前で失っている。そのトラウマから、彼は人間に対しても、ケミーに対しても、ともに肩を並べて戦う存在ではなく、自分が一方的に守る存在としてしか見られなくなっている。仲間をもたなければ、これ以上仲間を失うことはない。だがその孤独が、彼を一層苦しめている。

少なくとも、彼の戦いの終着点は敵を倒すことではない、紛れもなく彼自身の死だ。一ノ瀬は死に場所を求めて戦っている。死んだ仲間に許される、自分で自分を許せる死に場所を求めて。死ぬまで消えることのない呪いの中で、彼は戦っているのではないか。そんな気がした。

ある時、俺は零花の左腕に、禁術を使用した跡があることに気付いた。さらにはその頃から、零花の言動が露骨になり、焦りを感じているようにも見えた。おそらく近いうちに何か大きな動きを見せると睨み、零花の動きを注視するようにしていたら、彼女が一ノ瀬のケミーカードを盗み出すのを目撃した。おそらく敵の狙いは、彼女を利用して人間たちの悪意を引き出し、マルガム化した人間同士で殺し合わせることだったのだろう。そして案の定、彼女はそれを餌に錬金術師たちを焚きつけて、錬金術師たちを煽動しようとした。だから、俺も動いた。事前に零花からケミーカードを盗み返しておいて、ダミーとすり替えた。一ノ瀬には変身用の二枚だけを返して、あとは武装錬金具を奪う芝居で、俺をケミーカード盗みやこれまでの連続殺人の犯人だと思わせた。

ー仮避難所
(銃斗と宝太郎たちが出て行った後)
錬金術師①「やっぱりあいつだったのか、前から怪しいと思ってたんだ!なぁ?」
零花「あぁ、、そうね、、」
(零花「どうして銃斗がカードを?カードは確かにここに、、」)
冥国のデスマスク(緑)「釧路零花様、誠に残念ながら、時間切れでございます。」
(突然デスマスク(緑)が現れ、錬金術師たちはパニックに)
零花「どうしてここに!?」
冥国のデスマスク(緑)「人間を同士討ちさせる絶好の機会を逃した。度重なるあなたの失態はとても看過できるものではありません。」
零花「待って!あいつが!本上銃斗が邪魔をした!あいつさえ、あいつさえ、始末すれば!」
冥国のデスマスク(緑)「いえ、もう十分です。」
零花「、、ぇ?、、」
(仮避難所の中に大量のドレットルーパーが攻め入ってくる)
冥国のデスマスク(緑)「本来ならば皆さんには、一ノ瀬宝太郎の目の前で殺し合っていただくつもりでしたが、、」
(デスマスクがレプリライデンジのカードでバッテリーマルガムに)
冥国のデスマスク(緑)「これだけ時間をかけたなら、全員死んでいただくだけでも十分でしょう。」
(バッテリーマルガムの最大出力の電撃とドレットルーパーの激しい銃撃で中にいた避難民は全滅)

ー瓦礫だらけの街中
(宝太郎との戦いに敗れて宝太郎が仮避難所へ戻った後)
一般人と錬金術師の同士討ちは何とか未然に防げた。だが、最後に、俺にはもう一つやらなければならないことがあった。一ノ瀬を、戦いから解放してやることだ。死ぬことでしか、彼は救われない。俺は黒鋼スパナの遺した錬金具で、一ノ瀬に戦いを挑んだ。だが、戦いの中で気づいた。彼にはまだ迷いがある。一ノ瀬は、まだ完全に諦めているわけではない。彼はまだ、未来に光を見出し、希望を信じたいと思っている。そう感じた。そして彼は、自分が迷っているという事実からも目を背けようとしている。選択から逃げているのだ。そして同時に残酷なことに気付いた。おそらく、この世界の未来に光をもたらせるのは、一ノ瀬宝太郎しかいない。錬金術や世界といった枠組みを超えて、世界に輝きを取り戻す、彼にはそんな、潜在的な可能性がある。そんな彼のために、もし俺に、できることがあるのだとしたら、、

冥国のデスマスク(青)「お前か?こそこそ嗅ぎまわっていた野良犬は?」
(冥国のデスマスク(青)と(赤)が現れ、さらに仮面を取る)
銃斗「お前は!、ぐはっ、、うっ、、、」
(錬成された大量の剣で全身を貫かれた銃斗)
冥国のデスマスク(赤)「安心しろ。他の人間たちも、先に地獄で待ってるだろう。」
銃斗「何?、、まさか、、、お前たちの狙いは、最初から、、うっ、、、。」
(息絶える銃斗)
冥国のデスマスク(青)「、気づくのが遅いんだよ。、どうせなら俺も見たかったなぁ、一ノ瀬宝太郎が絶望する顔、、ひゃっひゃっひゃっひゃ!」
(冥国のデスマスク(青)の高笑いだけが響く)


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