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病気にもなれない

雨の日のお出かけ。
ベビーカーを押す女の子、お母さんの背中にひとり、右手にひとり。
ベビーカーを押す女の子は、とても具合が悪そうだった。
お母さんはそれでも、娘を叱咤していた。
女の子はたまらず戻してしまった。
お母さんは
「え、うそ、なんで?」

昔を思い出した。
私が病気になったとき母は言った。
「冗談でしょ、ふざけないで。あんたが病気になってどうするの」

病気になることも許されない。
ただの労働力であって娘じゃない。
親から受けるその扱いが、どれほど心に闇を産み出すことか。

だから私は、子どもはひとりしか産まないと固く心に誓ったのだ。


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