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【Management Talk】「不動産を軸にしたプラットフォームカンパニーに」急成長を続ける総合デベロッパー創業社長が見つめる未来

米国アカデミー賞公認短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」は、2018年の創立20周年に合わせて、対談企画「Management Talk」を立ち上げました。映画祭代表の別所哲也が、様々な企業の経営者に、その経営理念やブランドについてお話を伺っていきます。
第41回のゲストは、株式会社アイム・ユニバース 代表取締役社長の藍川眞樹さんです。設立以来、不動産業界で急成長を続ける同社。その躍進の軌跡とこれからについて、創業者である藍川社長にじっくりとお話しいただきました。

株式会社アイム・ユニバース
当社リゾート邸宅ブランド『&RESORT HOUSE』は仕事や子育て・家事などの慌ただしい日常を過ごす自宅を、リゾート地での極上の時間『リゾートタイム』の場所に変えたいとのコンセプトを基に、一都三県・沖縄で戸建て住宅『&RESORT HOUSE』シリーズを展開しています。屋上テラスやジェットバス・ミストサウナなどハイグレードな設備による”非日常の豊かさ”を日常にプラスし、リゾート地を想起させる家づくりをご好評いただいています。2011年の東日本大震災以降制震システムを全棟に導入し続けるなど、安全と環境にも配慮しています。

自分たちで商品を作らない限り成功できない

別所:はじめに御社の事業について藍川社長からお話しいただけますでしょうか。

藍川:アイム・ユニバースは私が23歳のときに立ち上げた会社です。2004年4月に当時勤めていた会社を辞めて、その翌月に設立したんです。もちろん、最初は苦労の連続でした。資金がなかったので、まずは他社様の物件を販売する仲介業から始めて、次に販売代理のビジネスを手がけてきたんですけど、収入の柱ができたのはようやく3期目に入った頃。アイム・ユニバースの社長をやりながら、あるマンションデベロッパーさんに会社ごと営業部として所属させていただいたんです。第1営業部、第2営業部、第3営業部、アイム・ユニバース部というかたちで部署を作らせていただいて。それで当時、社員5〜7名程度で、月に数千万円の粗利益を稼げるようになったんですね。

別所:すごい販売力。

藍川:そのあと、物件を自社で仕入れて自社で販売するというステージにまで上がれたのが2007年のことでした。ある程度の自己資金が貯まったので、残戸買取再販というビジネスを始めたんです。たとえば、マンションデベロッパーさんが、総戸数30戸のマンションを建てて10戸売れ残ったとします。そうしたときに当社は、10戸をまとめ買いするので値引きしてください、と交渉して安く仕入れるわけです。マンションデベロッパーさんも早く売り切りたいから応じてくれます。そして、私たちの営業力でその10戸を販売するという。

別所:なるほど。

藍川:けれども、しばらくすると、いくつかのマンションデベロッパーさんが残戸買取再販に参入してきたんです。その結果、仕入れ額の相場がどんどん上がっていった。そのため、私は、仕入れよりもまずは抱えている在庫を全部売っていくことに注力しようと判断したんです。2008年のことでした。するとそのすぐ後に、リーマン・ショックが起こります。私たちは借入で仕入れた在庫をほぼゼロにまで落とすことができていたので、影響をほとんど受けませんでした。

別所:絶妙な判断でしたね。

藍川:ええ。ただ、売る商品がないという状況には大きな恐怖を感じました。私としてはその時が会社設立以来最大の危機だったと思っています。在庫をほぼ売り切っていたので自己資本比率が高く借金はほとんどない。けれども、次に売る商品もないわけですから。

別所:たしかに。そのままでは商売ができない。

藍川:ええ。そこで私がたどり着いた結論は、自分たちで商品を作らない限りこの会社は成功できない、ということでした。そして、私たちは建設会社を設立し、木造の戸建デベロッパーの道を歩むことに決めたんです。ただ、決めたものの、そのときも大変でした。不動産の物件を買うために、あるメガバンクさんに融資してもらう予定だったのですが、稟議も通っていたはずなのに決済直前になって融資を断られてしまったんです。

別所:それはきつい。

藍川:市況が……と。大変困惑しました。けれども、救いの手は差し伸べられます。信用金庫さんに事情を話して相談したら、融資を快諾していただけたんです。そのときに私は、地元を大事にする信用金庫、信用組合さんと二人三脚で会社を作り上げていこうと決断しました。現在でも当社のメインバンクは、信用金庫、信用組合さんです。そのときのご恩は忘れていません。ですので、これから当社の規模がさらに大きくなったとしても、不義理はせず、信用金庫、信用組合さんとともに、さまざまなファイナンスの方法を模索しながら一緒に成長していきたいと考えています。

別所:素晴らしい姿勢ですね。そして、リーマン・ショックをきっかけに木造の戸建デベロッパーの道に進んだというのは大きな決断、転換点だったと思います。その後はどのようなターニングポイントがあったのでしょうか。

藍川:東日本大震災は、当社にとっても大きな転機となりました。それまでももちろん耐震には取り組んできていましたが、震災をきっかけに、義務化されている以上の設備として震度7の揺れも約70%軽減するという制震装置を当社の全物件に導入しました。当時は他社さんの多くも同様の取り組みをされていましたが、現在まで継続しているのは当社をはじめ数えるほどだと思います。

ただいま は、旅のはじまり

別所:継続は力なり、で会社の信用や信頼にもつながりますよね。そして、コロナ禍が訪れました。

藍川:コロナ禍においては屋上テラスが非常に好評です。ただ、これはコロナ前から当社の物件の特徴だったんですね。屋上テラスに注力するきっかけとなったのは、自社で販売した住宅を視察した際に私が目の当たりにしたある光景でした。道路や庭にビニールプールを置いて遊んでいるお子さんがいたんですよ。危ないですよね、車からは見えにくいですし。私はビニールプールを設置できる場所がほかにどこかないのかなと考えました。そして、デッドスペースの屋根を屋上テラスに変えるというアイデアを思いついたわけです。ただ、屋上テラスには防水の面などでリスクがあります。ですから私たちは、10年間の保証をつけさせていただいて、安心してご利用いただける準備を整えていたんです。そして、コロナ禍で人々のライフスタイルが大きく変わった。マンション離れが起きて一戸建て住宅の需要が高まったことで、屋上テラスはさらに大きな注目を集めています。

別所:時代のニーズを先取りして、さらなる急成長をされているわけですね。

藍川:ええ。ただ、急成長しながらも、創業者として常に考えているのはピンチのときに向かうべき次なるステップについてです。リーマン・ショックと東日本大震災を乗り越えた時もそうでしたけど、これからどういう舵取りをするのかが非常に重要です。

別所:たしかに。

藍川:私たちはこれから、不動産を軸にしたプラットフォームカンパニーを作ろうという構想を持っているんです。住宅だけにとどまらず、トータルでライフスタイルを提案していきたい。当社は住宅以外にもさまざまな事業を展開していて、たとえば、美容室や飲食店も手がけていますし、これから家具や食器も作っていくつもりです。さらに、私たちは「&RESORT」というコンセプトのもと、ものづくり、ことづくりを行なっているので、今後はホテル事業にも手を伸ばしていきたいと考えています。

別所:「&RESORT」とはどのようなコンセプトなのでしょう?

藍川:まず、アイム・ユニバースでは「リゾート」と「観光」を明確に区別しています。観光は数日間で色々な名所を回るイメージで、リゾートは一箇所にゆっくりのんびり滞在をする、というのが私たちの定義です。そのなかで、私たちは、家こそを最高のリゾート地にしたい。「ただいま は、旅のはじまり」というキーワードで謳っているとおり、家に帰ってから旅が、家族の物語がはじまる。そういう思いを込めて住宅作りをさせていただいています。

別所:「ただいま は、旅のはじまり」。さまざまな家族の物語がはじまりそうです。

藍川:ありがとうございます。そこで、私たちが特に力を入れているのがお風呂です。アイム・ユニバースの住宅では、ジェットバス、ミストサウナ、浴室テレビが標準装備なんです。現在、共働きのご夫婦も多いですから、ご家族で過ごせる時間ってなかなかとれないですよね。そんなときに、第二のリビングとしてお風呂を活用していただこうと。もともと、私自身が幼い頃、祖父母の家のお風呂にあった外付けのホースでジェットみたいにして遊んでいた経験がありました(笑)。ジェットバスはバブルを入れるとバブルバスに変わるので、お子さんにとても楽しんでいただけます。それまで5分10分のカラスの行水みたいだったお子様たちが、30分、1時間楽しく過ごせる場所に変わるんです。

別所:コミュニケーションの場になるわけですね。

藍川:おっしゃる通りです。あとはやっぱりご夫婦の関係にもよい影響があると思っています。人は感情のある生きものですので、感情的にならない夫婦は滅多にいらっしゃらないですよね。そうなったときに、どちらかが短時間でも家から出ていってしまうとお子さんは悲しい気持ちになるでしょう。私も幼い頃、そういう思いをした記憶が残っています。それで、どうにかしたいと考えた結果、お風呂を逃げ場にできればいいのではないかと思いついたんです。浴室テレビで好きな映画を観て気分転換をして、ミストサウナで汗を出せば人間の怒りも流れでてしまうから。

別所:いろいろなデトックスを(笑)。

藍川:はい(笑)。先ほどお話しした屋上テラスも同様で、私たちは、「&RESORT」というコンセプトのもと、さまざまな設備を開発してきました。

いけるだろうと思えた施策は全部やる

別所:まさにブランディングですね。ブランディングについて少し僕たちのお話をさせていただきますと、僕の主宰している映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」では、企業のブランディング動画をフィーチャーする「ブランデッドショート」という部門を設けています。まさにこの10月にアイム・ユニバースさんは素敵なブランデッドムービーを公開されましたけど、藍川社長は動画コミュニケーションについてはどのようにお考えでしょう?

藍川:今回のブランデッドムービー製作は初めての試みで、まだ公開したばかりですので、これからの皆様からの反応を楽しみにしている段階ですね。未来に向けての投資の意味合いも込めて製作したのでとても期待しています。あと、当社としては商品説明動画にも非常に力を入れています。先ほど私がご説明させていただいたような物件の紹介動画ですが、これをご覧いただくと、だいたい8割くらいの方には当社の物件の特徴をご理解いただけるかと思っています。また、当社の物件を販売していただいている仲介業者さんにもうまく活用してもらっていますし、実際に購入をご検討いただいている方にご覧いただくと非常にポジティブな反応をいただけます。

別所:伝える力が非常に強いですね。こうした動画も含めて、今後のコミュニケーション戦略、マーケティング戦略についてはどのようにお考えでしょうか。

藍川:コミュニケーションのツールやテクノロジーは日進月歩ですから、時代のニーズに即しながら戦略を練っていく必要があります。とはいえ、私は、マーケティングはすべてテストだと捉えているので、前向きに様々な施策に取り組んでいきたいと考えています。もちろん、闇雲になんでも、というわけにはいきませんが、情報を集めて分析した結果、いけるだろうと思えた施策は全部やる方針です。テストはやってみないと答えが出ないでしょう。チャレンジして、もし駄目だったとしてもすぐに引けばいいだけの話ですから。

別所:素晴らしいですね。ぜひ僕たちともなにか先々ご一緒できたら嬉しいです。ちなみに、御社のブランデッドムービーは、じんわりと優しさの感じられる作品でしたが、藍川社長ご自身はどんな映画がお好きなんですか?

藍川:私のお気に入りは、「天使のくれた時間」という映画です。

別所:ニコラス・ケイジが出演している作品ですね。

藍川:そうです。ビジネスの世界で大きな成功をおさめた主人公の男性が、昔の恋人との「あったかもしれない人生」を体験する、というファンタジー映画です。私自身が仕事ばかりやってきたため、家族のいる生活に本当に憧れていたので、すごく共感できました。本当の意味での心の豊かさや温かさってなんだろう、と観るたびに考えさせられます。純粋な気持ちを呼び起こしてくれる。クリスマスが舞台になっているので、クリスマスに一人だった頃にいつも観ていましたね(笑)。

別所:ロマンチックですね(笑)。

藍川:(笑)。

一つ一つのご縁を大切に

別所:それでは続いては、御社のこれからについて藍川社長の展望を教えてください。

藍川:いま、私たちは注文住宅に力を入れはじめているところです。建売住宅と注文住宅はまた別のビジネスモデルなんですけど、当社はこれまで1,000棟以上の建売住宅を建ててきていますから、その実績を活かし、価格以上に価値のある高品質な注文住宅を提供していきます。戦略的には、南から攻めていこうと考えていまして、5年前に進出した沖縄で展開しはじめているのと、東京でも新たな拠点を作って、その間の地域を挟み撃ちしていくつもりです。

別所:豊富な実績とノウハウを持つ御社だからできることですよね。

藍川:ありがとうございます。私たちとしては、注文住宅にしても建売住宅にしても、資産性のある住宅を作ることに大きな意味があると思っています。ブランディング戦略にも通じるお話ですけど、当社の物件を購入したお客様が、何らかの事情でのちのちそれを手放すことになったときに、資産価値があるのかないのかは非常に重要でしょう。たとえば、設備一つとっても私たちは強くこだわります。大手のメーカーさんの場合だと、その系列メーカーのものしか使えません。だけど、各メーカーさんが作っている設備にはそれぞれよいところもそうでないところもあります。私たちはそれを見極めて、各メーカーさんからいいとこ取りができるんです。その結果、資産性の高い住宅を作ることができるわけです。

別所:なるほど。

藍川:たとえば、5年前に私たちが沖縄県で販売した建売住宅は相場より高かったです。他社さんが3,000万円くらいで私たちは約4,500万円でした。けれども、そのときに購入いただいたお客様が数年後にその住宅を手放したとき、7,000万円以上で売れたんです。時間が経ったのに、それだけの価値が上乗せされた。他のメーカーさんでも同じ実績があるかというとそうではありません。アイム・ユニバースの住宅だから評価されたと自負しています。私はそれこそが本当の意味でのブランディングだと考えています。バッグならエルメス、時計ならロレックスのように、資産価値の落ちない住宅を作っていきたいんです。

別所:たしかに。リセールバリューが高いことはブランド構築にも大きくつながっていくと思います。御社のこれからがますます楽しみになってきました。それでは最後に、藍川社長が見つめる未来についてお話しいただけますでしょうか。

藍川:アイム・ユニバースという社名は、「目指す」や「志す」を意味する「AIM」と、「世界」や「宇宙」を意味する「UNIVERSE」を組み合わせて造った言葉です。そして、「AIM」には、藍川眞樹のイニシャルがすべて入っている(笑)。つまり、私は創業時より世界に向けて大きくなっていこうという目標を持っていたわけです。ですから、アイム・ユニバースのビジネスは常にグローバルを見据えています。特に、私は若い頃から韓国の経営者の方に大変お世話になっていて、いまでも強固なつながりをもっています。それを活かしていままさに、韓国と日本の大企業のパイプ役を務めながら、新たな事業モデルを構築しているところです。

別所:人とのご縁が広がっていくことでビジネスもどんどん広がっていきますよね。僕も若い頃にアメリカで、人間って「ノウハウ」よりも「ノウフー」が大切だということを学びました。

藍川:おっしゃるとおりだと思います。当社が東京ヤクルトスワローズのオフィシャルスポンサーになれたのも、人と人のつながりがあってのことでした。そして、やはり私は、目の前のことに一生懸命誠実に取り組んで真心を込めて人とお付き合いするからこそ、良いご縁が生まれて結果が出るのだと信じています。5年後、10年後にしかわからないかもしれないですけど、一つ一つのご縁を大切にすることが大事です。私は、これからも地道にコツコツ誠実にやるしかないと思っています。

別所:ありがとうございました。

(2022.10.17)


株式会社アイム・ユニバース 代表取締役社長 藍川眞樹
18歳で不動産業界に入り23歳で株式会社アイム・ユニバースを設立。不動産仲介業からマンション販売まで幅広いセールスを経て、現在の自社一貫体制の戸建て販売スタイルを確立する。持ち前のバイタリティと行動力で以降も戸建て販売だけに留まらずマンション施工や公共事業などに参画し、グループ全体で年商150億円以上の総合デベロップメント企業に成長させた。これまでのノウハウとコネクションを活かし、今後国内外問わず更なる事業展開を予定している。