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オオカミ少年【読切超短編小説】

少年は叫ぶ。
「オオカミがくるぞ。」

村人は笑って相手にしなかった。
それもそのはず、この村は、
オオカミの生息域から大きく外れていた。

羊達はもちろん、人間ですら、
誰1人家に帰ろうとしなかった。

何を訳のわからないことを言っている。
これだから、越してきたばかりの
新人は、何をするかわからない。
まともに関わるのを辞めておいて正解だ。

少年は叫ぶ。
「オオカミがくるぞ。」

村の青年が言う。
「お前、
 昔から思っていたがなんか薄気味悪いぞ。
 注意でも引こうと思ってるんだろ。
 気持ちの悪い。」

少年は叫ぶ。
「オオカミがくるぞ。」



次の瞬間、村中の羊、人間達は、
オオカミによって惨殺された。

バラバラになり、オオカミの毛の残った、
自分の服を拾い集めて、
少年は言う。
「オオカミがくるぞ。」
彼の歯からは、うっすらと血が滲んだ。

いや待てよ。
滲んだのは血だけではなかった。

孤独がオオカミを生んだのか、
オオカミが孤独を生んだのか。

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