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下手をするとまたもや原発の大災害を発生させるヘマを冒すかもしれない日本の恐怖,北陸電力志賀原発はオオナマズの背中の上に建造されていた

 ※-1『毎日新聞』で「毎日新聞 科学の森 迷走プルトニウム」ということばの組みあわせで検索したところ

 つぎの記事一覧が出てきた。

2024年1月23日午前8時に検索
下部は尻切れトンボ状態

 こういった見出しになる解説記事が出てきた。そこで,このように一覧として出ているプルトニウム関連の記事は,この『毎日新聞』においてどのようにあつかわれているのか,という点も調べてみたところ,

 最新の記事としては先週の木曜日,1月18日に「〈迷走プルトニウム〉連続ものの記事・シリーズ」のひとつとして,つぎの記事が掲載されていた。このなかに添えられている図解が2点のうち,上に配置されているものは,つづけてかかげておく。

原子力に迷走されても困るが?!
この図解(図表)は予定を表現しているが
あくまで関西電力の分だけの説明である

また中間貯蔵施設という「文字どおり」中途半端な施設の名称であり
奇怪きわまりないが

この施設がどこに決まるがさえまだ模索中だとなれば

日本の原発政策はなにをやっているのか(?)
という印象・疑問が噴出する


 この〈迷走プルトニウム〉に関連する記事は,これらを読むだけでも原発政策のこの先が,非常に不安であるというか,そもそもが疑問だらけである事実を感得できる。

 いままで『毎日新聞』はこのように〈迷走プルトニウム〉という「争点」を設定するかのようにして,原発問題の重要な背景というか基盤そのものを批判的に報道してきた。

 要するに,原発は「トイレのないマンション」以前というか,その「マンションじたいの維持」がどだい成立しえなかったごとき状況が,すでにだいぶ以前からはっきり問題になっていた。いつまで経っても根本的に解決できず問題が,先送りばかり繰り返すほかない難題として存在していた。

 さきに紹介してあった,本日,2024年1月23日の「〈迷走プルトニウム〉関電『フランスで研究』の背景 核燃サイクル『2周目』の難題 上」という記事は,そのなかでもとくに「ロードマップ(日程)」に表現されていたyはずの,その「具体的に指示されたその日程じたい」が問題になっていた。それは,「無理強い」的に「想定させてみた」「日取りの設定」だったという受けとり方しかできなかったのである。

 とうことで,前段に画像資料で紹介してみた〈迷走プルトニウム〉関係の諸記事(の見出し文句など)については,その画面から日付と題名だけを拾って一覧にしておくだけであったが,そばに記載されていた解説の文章は,その最初の文字だけを併せて拾ってみたに過ぎない。

 以下のこれらは,ざっとななめにでも目を通す程度で読んで貰えれば充分である。ただ,なにが「原発(原子力)の核心の問題」として中心=眼目になっていたかを,おおよそでも理解してもらえば,と思う。 

「迷走プルトニウム:1 日本の22トンがなぜ英国に」2022/10/06
   ⇒核物質「プルトニウム」を,日本が46トン保有していることが世界から懸念されている。核兵器の材料に転用……

 「迷走プルトニウム: プルサーマル燃料確保できず」2023/05/04
   ⇒プルトニウムを原発で利用するプルサーマル発電で,フランス南東部の燃料加工工場「メロックス工場」で不良品が相次いでいる……

 「迷走プルトニウム:2 解決先送りの所有権交換」2022/11/03
   ⇒「日本が使用済み核燃料から分離したプルトニウムは約46トン。このうち約22トンは英国に委託して分離したものの,消費するめどが立たない……

 「迷走プルトニウム:6 巨費投じても遠い全量再処理」2023/03/02
   ⇒フランスや日本で,核燃料サイクルが行き詰まっている。プルトニウムとウランを混ぜた『MOX燃料』を繰り返し利用する技術が確立できない ...

 「迷走プルトニウム:5 高価格過ぎるMOX燃料」2023/02/02
   ⇒使用済み核燃料から分離したプルトニウムを日本の原発で再利用するため,燃料を加工してもらっているフランスの工場で不良品が続出……

 「核燃サイクル『2周目』」の難題 上 関電『フランスで研究』の背景」〔2024年1月23日から〕5日前
 ⇒原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを分離し,原発で再利用することを繰り返す『核燃料サイクル』。日本が確立を目指すこの…….

 「迷走プルトニウム:3 仏で核反応異常と不良品多発」2022/12/01
   ⇒プルサーマル発電用の燃料を製造するフランス南東部の「メロックス工場」で,不良品が相次いでいる。さらにプルサーマルを実施する原発で……

 「迷走プルトニウム:4 不良品,核燃サイクルに影響」2023/01/12
   ⇒プルトニウムを原発で再利用するプルサーマル発電用の燃料を製造するフランスの工場で不良品が多発している影響で,同国の複数の原子炉で……

 「核燃サイクル『2周目」の難題 『使いものにならない』プルトニウム」2023/11/02
   ⇒使用済み核燃料を「再・再処理」してプルトニウムを分離し,原発で「再・再利用」する核燃料サイクルの「2周目」の問題をさらに考えていきたい。

 「燃料の不良品多発で脱プルサーマル化 仏が直面する「負・・・」2022/09/04
   ⇒〔2022年〕6月28日就任した関電の森 望社長(60歳)は毎日新聞の取材に対し「もうやるしかありません。私の最大の責務」と答えたが,難航しているとみられる。 使用……

 「核燃サイクル『2周目』の難題 使用済みMOX,再処理の壁高く」2023/11/01
   ⇒原発の運転で生じた核物質のプルトニウムを使ったMOX燃料を核分裂反応させる発電方式をプルサーマル発電という。その後に残る「使用済みMOX燃料」を……

 「使用済みMOX燃料は『ごみ』となる運命か 再処理に技術的な壁2022/09/06
   ⇒使用済み核燃料を原発で再利用する政策をとっているフランスや日本で,政策の行き詰まりが表面化している。プルトニウムとウランを混ぜた「MOX燃料」……

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 ※-2 核燃料サイクルはいつ実現するのかその見通しすらさっぱりつかない

 そもそも「原発の核燃料サイクル」という原子力部門の一大事業は,いまから半世紀前に出版されていた朝日新聞社科学部『あすのエネルギー』朝日新聞社,1974年が,つぎのように語っていたところの

 「原発(原子力)」の「夢のごとき未来」として期待されるものであったけれども,実際においてはいままでずっと,完成させて本格的に運用する展望からして全然もてないまま,結局,「今年:2024年」まで「経過してきた事実」をしれば,つぎの同書から引用してみる段落の含意は,いったいどのように受けとられるべきか,おのずと明らかになる。

 いまの軽水炉でウラン235だけを燃やしていたら,地球のウラン資源は20,30年で枯渇してしまう。だからこそ,新型転換炉や高速増力炉の開発に期待をかけている人が多いのだ。

 註記)朝日新聞社科学部『あすのエネルギー』朝日新聞社,1974年,157頁。

朝日新聞社科学部『あすのエネルギー』1974年

 しかし,その「新型転換炉や高速増力炉の開発」は,原発の技術に革新をもたらしたといえるような進歩や刷新を実現させてはいなかった。もちろん,それなりに改良型は出現してきたものの,これが原発技術のイノベーションだ,画期的な改良だと,胸を張っていえるような現状突破(ブレークスルー)的な進展はなかった。

 日本における商用原子力発電の開発は,1966年7月に東海発電所による営業運転が嚆矢となった。そのころから各電力会社は,アメリカが開発した発電用原子炉の導入を計画しはじめ,まず関西電力が1970年11月に福井県に美浜発電所1号(PWR)を,また東京電力が1971年3月に福島県大熊町に福島第1号(BWR)とあいついで営業運転を開始し,以降,原子力発電は本格化していった。

 補注)その東電福島第1原発の1号機が「3・11」に発生した東日本大震災の「大地震と大津波」によって溶融事故を起こした。しかも,その後13年近くも時間が経過している現在でも,いまだに,その後始末を本格的に開始できていない。

 ところで,原発の技術経済学的な特性に関しては,現状においていろいろと新企画になる技術開発が試みられてはいるものの,その間,半世紀以上が経った現在になってみれば,この原子力をエネルギーに利用して電気を生産する技術体系は,一風変っていて,しかも「時代遅れ」で「異端児」になったという基本性格を否定できない。

 こういう比較話ともなる。

 鉄道の場合,蒸気機関車(熱効率 0.1~0.2)から電気機関車(ディーゼル機関車だと熱効率 0.3から0.4)に発展してきたように,その「技術面の抜本的な飛躍・脱皮」に関しては,その明確な区分が可能であった。

 だが,原発の基本技術が飛躍的に向上し改善されたという事実経過は,いまのところまでない。今後の見通しとしても,計画はあれこれあるものの,実現の可能性に関して,単に希望を抱こうとしているだけの段階にとどまっている。

 しかも原発は,商用化(営業運転)を開始してからすでに半世紀を超える歴史を有しているものの,その間において,目にみえるほどの「これは確かにすごい」とみなせるような,技術面での飛躍的な進歩はない。

 その点は,熱交換比率としての原子炉の性能が最初から現在までずっと3分の1(33%)しかなく,しかも,今後もこのままでありつづける点からもそういわざるをえない。

 鉄道の場合,蒸気機関から石油(ディーゼル)や電力を利用する機関に移行してきたが,その熱交換比率の向上・高度化は顕著であった。だが,原発の場合,半世紀以上にわたり確たる進歩はなかった。原発のこれからを予定・期待する議論は,ここでは不要である。ただ,再生可能エネルギーの拡大・進展に対して原子力は,妨害要因にしかならない点を確認しておく必要があった。

 原発の基幹をなす技術の基幹は結局,「ヤカンで水を焚き,この蒸気でタービンをまわして,電気を起こす」という特徴から,いつも1歩も出ていない。蒸気機関車が石炭を焚いて動輪をまわすとの同じ要領になるが,電気を直接利用して動かす電気機関車(および電車)のエネルギー熱交換比率は高いのに対して,原発のそれは進歩がなかった。

 しかも原発の場合,温暖化が進んできたために,たとえばフランスの原発などでは,内陸部に立地する原発が渇水,あるいは河川の水温が上昇したために冷却用の水流として利用できなくなってしまい,稼働を停止する事例もすでに発生していた。

 原発は冷却用に利用する沿岸海域一帯に対して特定の範囲内であっても,そこの生態系を根本から変えてしまう結果をもたらしている。しかし,原発の不利面として最大の問題は,重大かつ深刻な大事故を起こしたさい,周辺の自然環境のみならず人間や生物全般に対して,それも有史上体験したことのない「極悪な災害」をもたらす事実にあった。

 そのあたりにかかわる問題が原発にはもともとあったからこそ,例の,いまではまったく妥当性が否定されつくした「原発は安全・安価・安心」という「原発信仰のための呪文」が,長いあいだ唱えられてきた。

 しかし,とくにチェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)と東電福島第1原発事故(2011年3月11日)は,人間や組織そのものが大事故を起こしたという「人災の側面」までも,そっくり丸出しにしたかたちで,「最高水準の原発災害」を招来させた。

 

 ※-3 原発推進派人士の詭弁エネルギー観

 ところが,そうした現時点における原発理解を,仕方なくでも弁えねばならなくなった「原発推進派」の人士のなかには,いまになってもなおつぎのように,もしかしたら「原発安全祈願」をどこかの神社にでもいって祈祷したあとなのか,性懲りもなく反復しつづける者もいる。

 『日本経済新聞』2024年1月19日朝刊7面「オピニオン」における意見であるが,ここに登場した小山 堅の意見は,原発(原子力)の利用を不可避として固執したい見地のなかで,つぎのように,原子力(原発)を紛れこませる話法を工夫していた。

 エネルギー安全保障と脱炭素化を同時に,最小コストで実現する,これが次期計画の眼目となる。ただし最小コストを条件とするなら,総合的な観点が欠かせない。

 水素など先進技術オプションも含め,技術・選択肢ごとに個別のコスト削減を図ることは当然だが,エネルギー転換を実現するまでの期間,化石燃料の安定的で有効な活用も避けては通れない。

 くわえて,利用可能なすべてのオプションを活用する「ベストミックス」の発想も重要だ。たとえば既存の原子力発電は,安全性確保と国民理解を前提に利活用することが鍵となる。

 全体として,発電単価など個別供給コストに着目するだけでなく,電源選択の場合には,再エネ利用時の変動性に対応するための蓄電システムなどのコストを含めた,「統合コスト」の考え方も加味する必要がある。

小山堅の意見1

 補注)ここでは「たとえば既存の原子力発電は,安全性確保と国民理解を前提に利活用することが鍵となる」などと,読むからに苦しい「前提(条件)」を口にしている。

 だが,「発電単価など」の問題についていうと原発の場合は,現状においては廃炉原価会計などろくに考慮に入れていないために,その原価・経費が不詳である状態のなかにあるにもかかわらず,

 そうした「安全性確保と国民理解を前提に利活用することが鍵」という表現の方法を採るのは,いかにも他人任せでしかありえない,つまり「原発推進派」流の「没・理屈の話法」であった。そもそも「国民(の)理解」といわれていた点がくせものである。このあたりの話になると,微妙であるというよりも,抽象論に先走っていた。

 もちろん,再エネや蓄電池などの製造に不可欠な希少鉱物の価格上昇,特定供給者による市場支配の可能性といった経済安全保障コストも含め,最適な組み合わせを編み出さなければならない。

 エネルギー転換は課題山積だが,その取り組みが少なくとも50年までの日本の繁栄を支える土台になるよう,エネルギー政策が成長戦略や産業政策と融合していく必要もある。

小山要の意見2

 補注)「経済安全保障コスト」に言及することになれば,そうだと「軍事安全保障コスト」の面から原発は,どのように評価されるべきか? こちらの難問にも答える気持ちがあるのか?

 ここで,現実問題に対して「答える気持ち(その用意)があるのか」と訊ねるのは,実際問題としてかなり珍妙な問いかけになるほかない論点がからんでいるからであった。

 以前であれば,なにがかんでもともかく無条件に原発が第1であり,最優先されねばならないといった理屈を,誇示していたのが原発推進派の人びとであった。

 ところが,このごろの彼らの説法は,奇妙な内容のものが増えてきた。しかし,そうしたなかでも,ともかく再エネに対する発言は控えめでありつづけてきた事実は,どうみても作為的という意味あいで,肝心の問題を回避したい本性をすなおに表現していた。

 最近は二言目には「経済安全保障コストも含め,最適な組み合わせを編み出さなければならない」と,いかにも荘重に断わるかのように発言するけれども,軍事面から観たら(最近における日本政府の基本姿勢は軍事国家になりたい欲望を隠さなくなっている),

 つまり「軍事安全保障コスト」を勘案する議論をまともにすることしたら,日本列島の海岸線に50基以上も原発を並べているこの国は,もっとも肝心な現実問題から完全に遊離している立場から,それでも「経済安全保障コスト」をウンヌンしている。

 

 ※-4 日本は地震列島ゆえ「原発は不可の国」であった

 2024年1月1日,能登半島地震が発生した。この地震は石川県の北部地域を中心にM7.6の規模で,深度7の激震となった。とくに能登半島の先端部分に位置し,日本海に面する輪島市や珠洲市などは甚大な被害を受けた。

 この地震で家屋を破壊された住民たちは,家の再建を諦めて移住を考慮せざるをえなくなってもいる。とくに,高齢化が顕著に進んでいた地方であるがために,そうしたふうに,人生の今後を考えるほかないと決断をする被災者が多いという。

 珠洲市の高齢化率は,介護保険制度が始められた2000年には 33.2%であったものが,2020年 10 月 1 日現在なると 50.3%にまで上昇していたから,前段のようにとくに家屋が全壊した被災者で,高齢者の気持ちはそうならざるをえないのではなかったか。

 能登半島地震が2014年の元日に発生し,阪神淡路大震災(1995年1月17日)⇒東日本大震災(2011年3月11日)⇒熊本地震(2016年4月14日)につづく大地震の被害発生となったこの「能登半島地震」を受けてだったらしいが,昨日(2024年1月22日)に本ブログ筆者は,つぎのユーチューブ動画サイトを観る機会をえた。

 その動画は,「2014年12月23日 歴史・人物 タグ: NNNドキュメント, 原発問題 シカとスズ-勝者なき原発の町-」『NNNドキュメント』,2014年12月21日に放送された,NNNドキュメント〔で〕「シカとスズ 勝者なき原発の町」〔と題されたドキュメント番組〕を紹介します」(所要時間:約45分)というものであった。その住所 http://www.at-douga.com/?p=12763 は,つぎの画面がリンクとなる。

 
 原発の建設予定地をめぐっては,過去においていくつも,小規模ながらも地域社会的に紛争を誘引する契機が生まれていた。

 この『NNNドキュメント』は,北陸電力が現在保有する志賀原発(志賀町,2基の原発がある。⇒着工の日付は1号機が1988年12月1日,2号機が1999年8月27日)の建設に至るまでの経緯を,それも最初の予定地とされたはずの珠洲市からだいぶ時間が経ってからになっていたが,途中で急遽,志賀町に変更して原発が建造された事情などを取材・編集し,放送した番組である。

 日本全国いたるところに,当時においてはすでに,過疎問題が発生しだした国内の事情をにらんでだったが(過疎問題は1966年から着目されていた),当時,電力会社は地方のあちこちに原発の建設予定地を求めていた。

 「安全・安価・安心である原発」の立地であるならば,広瀬 隆『東京に原発を!』集英社,1986年(初版はJICC出版局,1981年)のこの書名とおりに原発を「東京湾」沿いに置けばいいはずであるが,電力社会はけっしてそうはしなかった。事実,火力発電所ならば東京湾内に何基もある。

 結局,原発が大事故を起こしたらどうなるかは,電力会社は分からないわけがない。地方のそれもなるべく人口密度が低いところへ,しかも地方自治体が財政的にまずしい地域を選ぶことをしたのは,理の必然であった。

 地方の自治体に対しては「原発の建設」にともない市町村の財政規模に似合わないくらいの補助金や助成金,協力金などが流入するが,電力会社はそれを餌に使い原発の建設地を探すことになっていた。

 北陸電力志賀原発そのものについての歴史や現状は,ここではくわしく触れる必要がないので,ただつぎの※-5のごとき,国家じたいが原発体制を普及させるために支援した財政措置を説明しておく。 

 

 ※-5 電源三法(電源三法交付金制度)という制度がある。 電気事業連合会のホームページは,つぎの2面ではこう説明している

 以下の2つの頁を参照し,以下は記述されている。

 電源立地の計画的推進は,国民生活や経済活動にとってきわめて重要な課題である。そこで地元住民の理解と協力をえながら発電所の建設を円滑に進められるよう制定されたのが電源三法である。

 補注)とはいっているが,この文言はもっぱら原発の立地そのものに関した原義的な説明だと解釈してよい。なお,以下の引用にさいしては文体を変えてある。

 --電源三法は,1974(昭和49)年に制定された「電源開発促進税法」「電源開発促進対策特別会計法」「発電用施設周辺地域整備法」を総称し,これは立地地域に発電所の利益が十分還元されるようにする制度であるこれによって,発電所立地にともない,立地地域に振興効果がもたらされてきた。

 電源三法は,これら3つの法律でできており,電力会社から販売電力量に応じ税を徴収し,これを歳入とする特別会計を設け,この特別会計からの交付金等で発電所立地地域の基盤整備や産業振興を図るしくみになっている。

 2001(平成13)年4月からは原子力発電立地促進のため,「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」が10年間の時限立法で施行されていた。その後,2010(平成22)年には,その有効期間を2021(平成33)年3月まで延長する改正がされている。

電源三法制度図解

 原発はそのように現ナマをチラつかせて建設予定地を求めてきたのが,実情であった。いってみれば地域社会学の視角からすれば,かっこうの研究材料が与えられていたことになる。

 しかし,前段に挙げてあった,2014年12月23日に放送された番組『NNNドキュメント』原発問題 シカとスズ-勝者なき原発の町-」は当然,2011年の「3・11」を強く意識した実録番組であった。

 この北陸電力の志賀原発が今回の能登半島地震で問題となったのは,原発など建ててはいけないこの「日本という国」の「その地域・場所」に,すでに志賀原発が立地し,実在していたという事実そのものであった。

 志賀原発(志賀原子力発電所)は,石川県羽咋郡志賀町にあるが,2011年度以降,1号機,2号機ともに稼働していない。2023年8月時点で,両機とも停止中。能登半島地震発生のときも稼働していなかった。なお「志賀原子力発電所」という現在の名称は,当初の「能登原子力発電所」をのちにあらためたものである。

 2014年1月1日に深度7の激震を発生させ,能登半島に甚大な被害を与えた地震については,北陸電力が昔,最初に原発建設地の候補に挙げていた珠洲市も当然に含めての話題となるが,地震国である日本はどこに原発を建てても,このような地盤の上に建設する「結果にならざるをえない」事情を,いまさらながらでもよく認知しておく必要がある。

 

 ※-6「志賀原発の敷地内活断層の評価をめぐって」『原子力資料情報室』2023年4月4日,https://cnic.jp/46777

 この『原子力資料情報室』の記事は,「CNICからのお知らせ『通信』より事故と安全原子力政策地震」『原子力資料情報室通信』第586号(2023/4/1)より,という標題をかかげていた文章である。

 この文章の中身そのものは,※-6の見出しに出ている住所がリンク先になっているので,できれば,こちらもクリックしてその文面の「主張=批判」前文を読んでほしい。

 ここでは,この記事がかかげている活断層の図解のみかかげておく。この図解を観ただけで背筋に冷たいものが走り,寒気をゾッと感じる。

志賀原発地下の活断層
志賀原発周辺の活断層

北陸電力は当初珠洲市に原発を立地する予定であった
しかしどこもかしこも原発には不適地

 さて,つぎの図解は今回の能登半島地震の震源地を示すが,記入されている断層の動き(移動)のメートル幅が少ないかゼロの地域は,1ヵ月前後すると本震に近い震度で余震が起きると予想されている。

0mと記入されている地域であっても実はまだ活断層が動いていない場所ゆえ
今後に強い地震を起こす可能性があるという
 

 珠洲市,志賀市など能登半島の東西にまたがる地帯の「深度10㎞以下の地下」には,これから余震として大きな地震が発生する可能性が大と予測される活断層のエネルギーが潜在しているという。

 ところで,すでに志賀原発は,能登半島地震によってかなりの損傷を受けていた。しかし当初から,北陸電力側はできれば隠蔽しておこうとする姿勢が濃厚にあった。それでも,隠しおおせなくなった段階になると,ようやくしぶしぶ小出しに公表しはじめた。

 それれはいつか来た道であり,東日本大震災に似た大災害を人為的に惹起させかねない危険性すらある「電力会社側の悪質な対応ぶり」であった。

 本日,2024年1月23日の『毎日新聞』朝刊「社説」は,こういう意見を紹介していた。後段の3分の2ほど,紹介しておきたい。

 ◆ 原発依存はリスク高い ◆

 しかし,安易な原発回帰はリスクが大きい。

 まず,事故の危険性をゼロにできないことだ。今月の能登半島地震では,震度7を記録した石川県志賀町に立地する北陸電力志賀原発で変圧器が破損した。使用済み核燃料を冷やす外部電源の一部が使えなくなっている。

 原発は従来「安価な電源」を売りものにしてきた。しかし,事故リスクを小さくするために安全対策を講じるほどコストがかさむ。政府は60年超の運転を可能にし,使いつづけることでコストを抑えたい考えだが,60年以上稼働している原発は世界にも例がない。

 事故が起きにくいとされる小型の新型炉に建て替える構想もあるが,米国では昨〔2023〕年,不採算を理由に計画が中断された。

 使用済み核燃料の処理の問題も未解決である。「全量再処理」を前提とした核燃料サイクル政策はゆきづまっている。高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分地選定もみとおせない。

 「コスト面も安全性からも,原子力にこだわりつづける理由はみつからない。岸田政権の原発回帰は非論理的,非合理的,不透明だ」〔と〕。NPO・環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は批判する。

 電力の安定供給の確保は重要だが,脱原発依存への歩みを止めてはならない。太陽光や風力などの再生可能エネルギー拡大に注力すべきだ。

 世界的な潮流でもある。電源全体に占める割合は,2000年代には再エネと原子力が15~20%で並んでいたが,いまは原子力が1割を切る一方,再エネが3割近くに増えている。

 昨〔2023〕年開かれた,国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では,世界の再エネ設備容量を2030年までに3倍に増やすとの目標が成果文書に盛りこまれた。

 日本の再エネ比率は2021年度時点で20%だ。エネルギー基本計画がみこむ2030年度時点の再エネ比率は「36~38%」にとどまる。

 次期計画の議論が今〔2024〕年,始動する。野心的な目標をかかげ,行動に移すべきだ。

  再エネ拡大を最優先に ◆

 太陽光,洋上風力のさらなる拡充にくわえ,世界有数の資源量を誇る地熱発電も検討の余地があるだろう。

 再エネの弱点は,天候に左右されるため発電量が不安定なことだ。蓄電池の性能向上など技術を総動員して克服すべきだ。

 燃やしても温室効果ガスを出さない水素の活用も課題となる。好天時に余った再エネの電力で製造し,次世代エネルギーとして普及させるためのインフラ整備を急ぎたい。

 省エネも重要だ。欧州では,住宅の断熱化や地域単位の廃熱利用など,導入が進んでいる。

 毎年のように気候災害が起きている。日本でも130を超える地方自治体が「気候非常事態」を宣言した。

 資源を浪費せず地球に負荷をかけない暮らしへの転換が急務だ。いまや「変革するか,しないか」ではなく「いかに進めるか」が問われている。

 平たんな道のりではない。だからといって政治の腰が定まらないようでは,脱炭素も脱原発も実現せず,将来に禍根を残す。

 きびしい現実と折りあいをつけながら,望ましい社会に一歩ずつ近づいていく。次世代に対する責任を果たさなければならない。

『毎日新聞』2024年1月22日「社説」

 簡潔にいうと,いまどき原発にこだわる原子力村側の発想は,エネルギー思想としては,逆理を地でいく反動形成の立場にあった。

 能登半島地震では一歩間違えば未稼働であった原発であっても,大事故を起こす可能性がなかたわけでない。原発の事故は絶対に発生させてはいけないのだから,その可能性のある原発そのもののが,いまや恐ろしい存在だとみなすのが,当たりまえの理解である。

 ともかく,南海トラフ超大地震がいつ起きるかわからないこの国のなかで,原発をああしろ,こうしろといいつのり,ともかく「安全・安価・安心」めざして稼働させればよいなどと主張したがる関係者の意見じたいが,完全に狂っているとしか形容できない。

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【参考記事】

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