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MOX燃料の危険性,原発体制を維持していく無理と難題(2)

【冒頭での断わり】 「本稿(1)」の続編がこの「本稿(2)」という構成になっている関係上,できれば,つぎの(1)をさきに読んでもらえると好都合である。

 また,MOX燃料が核燃料サイクルの「どこでどのように製造される」かも含めて,いまだ不全・不完成のままである「核燃料サイクルの全体像」を図解として説明する,つぎの画像資料を紹介しておきたい。

 ただし,これは「核燃料サイクル」が実際に,その当初の目的どおりに,「機能し,働いている,新しく核燃料を再生産(増産)できている」という事実を意味しているのでは,けっしてない。この事実は,念のため誤解ないように注意したい。

その1
その2


 ※-3 エドゥイン・ライマン(Edwin S. Lyman)-憂慮する科学者同盟(UCS) 米国ワシントンディーシー上級科学者「MOX (プルサーマル) 燃料使用の危険性」2015年7月,http://greenaction-japan.org/internal/150719-21_mox-safety-talk-jp.pdf という論述から

 この「MOX(プルサーマル) 燃料使用の危険性」は “パワーポイント形式の文書資料” である。この資料からつぎの個所を引用・参照しておく。

 a)『要約』 原子炉でMOX(プルサーマル)燃料を使うと増えるものが,以下の事象である。

    重大な原子力事故(フクシマのようなもの)の可能性

    重大な原子力事故が公衆の健康に与える影響(ガン死)

    原子力事故の経済的影響(汚染地域の除染費用)

    使用済み燃料貯蔵の費用と危険性

 ということで,MOX燃料の安全性についてはまだ数多くの未解明問題があり,もっと研究が必要である。原子力規制委員会はフクシマの教訓に耳を傾け,情報のないなかでも,日本でのMOX燃料使用を許可してしまうことのないようにすべきである(以上,2頁)。

 b)「MOX燃料は安全余裕を小さくする」 フクシマを経たいま,もし日本で原発の再稼働をするなら,安全余裕を増やし,安全性分析の不確実性を減らすことがきわめて重要である。だが,MOX燃料の使用は一般に安全余裕を減らし,不確実性を増やす(5頁)。

 c)「MOX燃料とはなにか?」 伊方3号機のような軽水炉は普通「低濃縮ウラン」の酸化物でできた燃料を使う。この酸化物のセラミック・ペレットはジルコニウム合金でできた管に入っていて,ウラン235の含有率は5%以下である。混合酸化物(MOX)燃料のほうは,ウラン酸化物とプルトニウム酸化物を混ぜたものからなり,プルトニウム含有率は10%以下である(6頁)。

 d)「MOX vs. ウラン」 二酸化ウランは比較的均一な物質であるが,MOXには,異なる物理・化学の中性子特性をもつ二種類の元素の混合物である。MOX燃料は,通常,二酸化プルトニウムの塊を有する不均質の微細構造になっている。その微細構造は,通常運転時および事故時において燃料特性に数々の悪影響を及ぼす(7頁)。

 d)「核分裂生成ガスの放出」 リム組織の空隙に蓄積した核分裂生成ガスは,燃料棒の出力が変化すると急速に放出されうるから,これは安全性上,問題がある。なぜなら,核分裂生成ガスは燃料棒内部の圧力を高める。その結果,燃料棒・被覆管ギャップが再開する可能性がある。そのガスの動きによって燃料ペレットの膨張・破砕が生じる可能性があり,ガスと膨張したペレットが燃料被覆管に圧力を与え,破損をもたらすかもしれない。

 補注)「リム組織」の説明。軽水炉の燃料サイクル費の低減,および使用済み燃料体数の削減のため,燃料の高燃焼度化が段階的に進められている。燃料に用いられる燃料ペレットでは,高燃焼時に結晶粒が微細化し,微少な気泡が集積した組織(リム組織)が外周部で観察されている。

 リム組織の形成される領域は燃焼度とともに拡大し,それにより燃料の温度,圧力の上昇が予想される。高燃焼度まで燃料を健全に確保するには,リム組織の特性を把握する必要がある。

 註記)「軽水炉燃料の高燃焼時のリム組織の解明」『電力中央研究所』https://criepi.denken.or.jp/jp/nuclear/public/pamphlet/1.pdf

補注

 e)「MOX燃料はウラン燃料より多くの核分裂生成ガスを放出」 なぜなら,リム構造をもつ燃料が多いからである。MOX燃料ではまた,ウラン燃料の場合より多くのヘリウム・ガスがプルトニウムその他のアクチニド(超ウラン元素)の崩壊から発生する。これも燃料棒内の圧力増大につながる(11頁)。

 f)「事故の確率の増大」 軽水炉におけるMOX使用は,ウランだけの炉心に比べ,一部の事故の可能性を高める恐れがある。原子炉の出力がより急激に変化する可能性がある。制御棒の効きが悪くなる。不均質な燃料構造の場合,過渡事象のさいに,燃料棒が破損して冷却材流路(チャネル)を塞いでしまう可能性が高まりうる(16頁)。

 g)「反応度過渡」 制御棒の固定がゆるくなり炉心からはじき出されたさいに,出力が急速に高まる可能性がある。はじき出された制御棒の近くの燃料棒の温度が高まる可能性がある。フランスにおける一連の CABRI 試験は,反応度過渡を経験した燃料棒になにが起きうるかを示している。これらの試験は,そのような事故においては,MOX燃料がウラン燃料よりも低い燃焼度で破損が生じうることを示している。核分裂生成ガスの放出量が多いからである(17頁)。 

 h)「事故のさいの放出量の増大」 フランスでの一連の VERCORS 試験は,冷却材喪失事故に典型的な温度上昇状況において,MOX燃料ではウラン燃料より多量の半揮発性の核分裂生成物(例えばセシウム 137)を放出する傾向があることを示している(20頁)。

 i)「事故の影響の増大」 炉心内のMOX燃料は,ウラン炉心の場合よりも多量のプルトニウム・その他の放射線毒性の強いアクチニド(アメリシウムとキュリウム)を含んでいる。相当量のアクチニドが放出されるようなシビア・アクシデントにおいては,MOX燃料の入った炉心の方がウランだけの炉心よりも公衆の健康や環境に与える影響が大きくなる。この増大の程度は,MOX装荷のレベルとアクチニドの放出割合(Rf)による(23頁)。

 j)「事故の影響の増大」 福島第1原発3号機では,MOX燃料は炉心の6%だけだった。このような少量で大きな違いが出たということはありそうにない。だが,伊方3号や高浜3および4号では,最大で炉心の4分の1がMOXとなる。このレベルの装荷では,アクチニド放出割合が1.5%の場合,ウランだけの炉心と比べ,ガン死の数が2倍になる。0.3%のアクチニド出割合では50%の増加となる(26頁)。

 k)「使用済み燃料プールのリスク」(27頁)。

 l)「使用済み燃料火災」(28頁)。

 m)「MOX使用済み燃料」 使用済み燃料プール内にMOX使用済み燃料があると,冷却材喪失事故のリスクに影響を与えうる。MOX使用済み燃料集合体の崩壊熱は,取り出し後1日を過ぎると使用済みウラン燃料のそれより大きくなる。

 使用済みMOX燃料は中に含まれる,プルトニウムやその他のアクチニドの量が大きく,とりわけ,空気中での燃料劣化のシナリオにおいては,このことがソースタームに影響を与えうる。

 使用済みMOX燃料は,使用済み燃料プールの火災の場合に典型的な温度(1800-2000K)において揮発性の核分裂生成物(ヨウ素,セシウム,テルル)を使用済みウラン燃料よりも高い率で放出する可能性がある(31頁)。

 以上のMOX燃料に関する諸項目の説明は,その危険性について,通常のウラン燃料よりも高い事実を教えている。


 ※-4「〈CNICトピックス〉『MOX燃料加工工場』に異議あり! :異議申立て人を募集中!」『原子力資料情報室』2010/06/07,https://cnic.jp/919 

 なお,『原子力資料情報室』が公表したこの記事は,2011年の「3・11」東電福島第1原発事故発生の9ヶ月前に公表されていた。

 --国(経済産業大臣)は2010年5月13日,六ヶ所再処理工場のなかに建設予定の「MOX燃料加工工場」の許可を出しました。「核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団」はこの許可について,異議申立てをおこないます。この申立に参加していただける申立て人を募集中です。

 六ヶ所再処理工場の稼働じたいが不透明の状態であり,プルトニウム利用を推し進めるための「MOX燃料加工工場」に「異議あり!」の沢山の声を国に届けたいと思います。皆さまの参加をお待ちしています。

       【解説】◆ MOX燃料加工工場とは? ◆

 MOX燃料は,プルトニウムを最大約10%程度含む核燃料です(プルトニウム以外はウラン)。

 このMOX燃料加工工場は,六ヶ所再処理工場が生産するプルトニウムを使用してMOX燃料を生産する予定です。そのため工場は,六ヶ所再処理工場内のプルトニウム貯蔵施設に隣接して建設され,プルトニウムは地下の通路を通って運ばれます。

 この工場は,1年間に130トン(BWR用MOX燃料集合体で約1000体相当)を製造する能力をもっています。建設費は約1,900億円の予定ですが,これで収まる保証はありません。

 またこのMOX工場の費用は,六ヶ所再処理工場の莫大な費用約11兆円とともに,すべて私たちと将来の国民の負担となります。(再処理工場の費用約11兆円は,電気代とともにすでに徴収が始まっています。) 

MOX燃料加工工場



 

 ※-5「四国電,制御棒引き抜くトラブル 伊方3号機,定検中(MOX取り出し失敗していたなら?!)」『阿修羅掲示板』2020年1月13日,http://www.asyura2.com/19/genpatu52/msg/417.html

 「MOX」取り出しに関する話題がこの記事には書かれていたが,NHKは伝えていなかった。不安定なウラン・プルトニウム混合燃料がもし臨界など起こせば,どんな問題になるのか。

   ★ 四国電,制御棒引き抜くトラブル 伊方3号機,定検中 ★      =『福井新聞』2020年1月12日 午後10時09分,                    https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1008620 =

 四国電力は〔1月〕12日,定期検査中の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)で,核燃料を取り出すため,原子炉容器上部で燃料を固定している装置を引き上げようとしたさい,制御棒1体をいっしょに引き抜くトラブルがあったと発表した。原発への影響や外部への放射能漏れはないとしている。

 伊方3号機は13日午前0時ごろから,プルサーマル発電で使い終わったプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を含む核燃料の取り出しを開始する予定だった。トラブルの原因調査などで遅れるみこみ。四国電によると,本格的なプルサーマル発電でMOX燃料の取り出しは全国初だった。

四国電「制御棒引き抜くトラブル」

 この記事が伝えた「事故」は,前段の記述がすでに警告していた危険項目を裏づける事例になっていた。


 ※-6 京都大学原子炉実験所・小出裕章(当事)「原子力発電は危険,プルサーマルはさらに危険」 石巻市:第3回『プルサーマル市民勉強会』2009年12月22日(火),http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kouen/isnmk091222.pdf (この勉強会は「3・11」の1年と3ヵ月近く前に開催されていた)

 1)  燃料の製造にも困難, 作ったあとの燃料の特性も悪化する

 東北電力は,普通の原子炉のなかでもプルトニウムが燃えているから,初めからプルトニウムを混ぜても問題ないと主張します。しかし,原子炉のなかでウランが燃えながらプルトニウムができる場合には,生成されたプルトニウムはウランのなか中に均一に分散します。

 一方,プルサーマル燃料を作ろうとすれば,別々に存在するウランとプルトニウムを混合して作らなければなりません。しかし,2種類の粉体を均一に混合することは大変むずかしく,どうしても不均一が生じてしまいます。そうなると,ウランとプルトニウムの燃え方が異なるため,燃料のなかでの燃えムラができ,ひいては燃料棒の健全性に悪影響を及ぼします。

 さらに,ウランに比べてプルトニウムは融点が低いので,プルトニウムを混ぜれば混ぜるだけ,燃料が溶けやすくなり,事故時の安全性が低下します。〔つまり〕安全余裕を食いつぶす原子力発電所は,もともと危険なものであって,「プルサーマル」をすることで初めて危険になるのではありません

 ただし,どんなものでも,ものを作る時には余裕をもたせて作ります。それでも考えていたとおりの余裕がなくて,事故を起こすことがあります。普通の原発でも事故が起きるのはそのためです。すでに述べたように,ウラン(U-235)もプルトニウム(Pu-239)も原爆材料となったように,核分裂する性質をもっていることでは同じです。

 しかし,もともとプルトニウムとウランは違う物質であり,女川原発を含め今日の原子力発電所は,ウランを燃やすために設計されたものです。その原子炉でプルトニウムを燃やそうとすれば,さまざまな問題が起こって安全性が低下します。そのことを専門的には「安全余裕」を低下させるといいます。せっかく余裕を見ながら考えて原発を作ったのに,その安全余裕を食いつぶすことになります。

 現在,国と電力会社などはプルサーマルで使うMOX燃料は全炉心の3分の1まで入れても安全だとしています。しかし,ウランを燃やすために設計された原子炉に,プルトニウムなど入れない方がまだ安全であり,プルトニウムを入れることはもともと危険な原子炉をさらに危険にするだけです。

 このことは灯油のストーブでガソリンを燃やそうとするのと同じです。灯油に1%程度のガソリンを入れたとしても多分,ガソリンが混入していると気づかずに燃やせるでしょう。しかし,5%,10%と混入の割合を多くしていけば,いつか発火します。

 2)  プルサーマルには 実績と呼べるほどのものもない

 プルサーマルを進めようとしている人たちは,十分な実績があるといいます。たとえば,東北電力は,今日〔当事〕までに57基の原子力発電所でプルサーマルが実施されてきたと主張します。しかし,2007 年には世界で429基の原子力発電所が動いており,プルサーマルを過去一度でもおこなった原発はわずか13%でしかありません。

 そのプルサーマルの実績といっているものなど,いかにに小さなものか歴然です。そのうえ,炉心に装荷したMOX燃料は最大でも 3 分の1,多くの場合は炉心の中にテスト的に数体入れたものが実績として数えられています。とくに日本で1986年から6年にわたって実績として計上されている分など,敦賀と美浜の2つの原子力発電所で合計わずか6体のMOX 燃料がテストされたに過ぎません。

 結局,世界の原子力発電の中でMOX燃料が使われた割合は1%にも満たない(おそらく 0. 1%にも満たない)11という貧弱なものです。こんなものを実績と呼ぶ神経がおかしいし,なぜこれほどわずかの原子力発電所しかプルサーマルを実施しないのかといえば,プルサーマルなどなんのメリットもないからです。

 註記)以上,前掲,……kouen/isnmk091222.pdf,9-11頁。


 ※-7「3号機 誰も言わない 知らないから ここに 察してね」『阿修羅掲示板』2011年3月25日 14:45:54,投稿者 Darreon,http://www.asyura2.com/09/dispute3

 〔東電福島第1原発事故における〕3号機は水素爆発ではなく,実は,臨界爆発である。圧力容器・格納容器はない。政府は米軍の撮影した3号機真上からの写真を公開できない。プルトニウムの測定どころか,東電発の「圧力・温度・炉内・水位などの全データ」がウソ常習犯。

 補注)右側の3号機(2011年3月14日午前11時01分に爆発)も「水素爆発」と記入されているが,これは「核爆発事故」であると,専門家は断定している。  

 1号機のほうは主に,地上をはうように水平に爆発していたが,3号機は完全に上方に向かい爆発していた。いわゆるキノコ雲の形状を呈していた。鉄塔のようにみえる排気筒は高さ110メートルである。爆発によって発生したこの画像の噴煙は,その後もさらに高くにまで上がっていた。  

 原子炉そのものが爆発したと観るほかない。当時,この様子を中継していたキャスター(アナウンサー)は「爆発」ということばを使えず,「煙が上がった」と放送させられていた。

 補注)ここで前後する記述に関係して,つぎのような諸画像を参考にまで添えておく。

爆発の仕方が異なる
この種の疑いにまともに答える原子力ムラ側の
関係者はいない
ただ違うそうではないと否定するだけであった
この爆発の規模は尋常ではなかった
3号機の爆発は2011年3月14日午前11時1分に発生


〔記事に戻る→〕 まさかこれがガセ・ウソと思うなら,3号機容器外観を確認してごらん,地上部はどこにもないから。炉心はオープン,建屋内部をみるだけで,誰にでも一目で分かるよ。

 MOX燃料は爆発の時にすでに,周囲・環境に飛び散ってしまったよ。だから,周辺で局地的に線量が高いところには破片が落ちているから,不用意に近づくと被曝する。 

 建屋のなかにいまあるのは,燃料の残骸と落下した使用済み核燃料棒,それが小臨界を間断的に繰り返してくすぶり続けている。時々出ている黒煙は,核燃料の燃えカス,すなわち死の灰だよ。

 これはプルトニウムの測定をすれば確認できるよ,建屋内部をみるだけでもすぐにね。君たちがいまみているのは,最悪のあとの風景ってこと。みごとにダマサレタね。

 補注)「3・11」後,各紙・各放送局などが東電福島第1原発事故現場の様子を伝えるために用意していた「その1号機から4号機までの図解」は,すべての原子炉と建屋がまだ正常の形状で残っているかのように解説してきたが,はたして3号機も「そうである」といえるのか疑問である。

 参考にまでここでは,『日本経済新聞』2012年7月24日朝刊に示されていた東電福島第1原発事故現場「全4基の原発」の図解を紹介しておく。

同じ水素爆発でもどうしてこのように
建屋の破壊のされ方が異なったのか説明がないまま
 

 3号機についても「水素爆発」と記入されているが,1号機も同じ水素爆発であったが,屋上部分は残っている。爆発のあり方が全然異なっていた様子(結果)を,この図解から読みとることができないわけではない。3号機の状態に対して「特定の疑問」を抱くことは当然である。

 つぎに引用する記事は,2019年12月下旬の報道である。この記事は,3号機に関してとなるが,「原子炉の圧力容器・格納容器に損傷がなかったか否か」について,いっさい言及がない。

 両容器についてはもともと,爆発による被害がなかったかどうかに関する説明が必要がないほど「損傷がなかった」ということなのか? この点じたいが,確認できる記事の内容にはなっていない。そもそも,3号機もメルトダウンは起こしていたのだが……。

     ◆ 福島第1原発3号機,内部調査映像を公開 規制委 ◆
   =nikkei.com 2019/12/26 15:56,https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53834510W9A221C1I00000/ =  

 崩れ落ちた天井に散乱する無数のがれき。原子力規制委員会は〔2019年12月〕26日,2011年に水素爆発を起こした東京電力福島第1原子力発電所3号機の内部調査の映像を公開した。事故後の内部の詳細な映像が公表されるのは初めてで,事故原因の分析に役立てる。  

 「(放射)線量が高いので離れて」。原子力規制庁の職員6人による12月12日の内部調査は,放射線量を随時確認しながらの作業となった。2011年の東日本大震災の津波の影響で3号機は炉心溶融(メルトダウン)と水素爆発を起こした。  

 爆発の影響で5階建ての原子炉建屋の屋根や壁の一部が吹き飛んだ。規制庁の職員は1階から建屋に入り,階段で3階まで進んだ。3階に近づくほど散乱しているがれきの量が増えた。  

 3階では天井のコンクリートが崩れ落ち,内部の鉄筋がむき出しになっていた。4階までの階段も壊れていた。建物を支えるはりも損傷が確認された。  

 付記)ここには「福島第1原発3号機3階の天井が崩れていた(原子力規制委員会提供の映像から)」として画像が添えられていたが,局所を撮した写真であり,とうてい周囲の様子はわかりえかった。

〔記事に戻る→〕 「時々空がみえている」「爆発の影響を受けて天井が下がっている」。映像に入っている規制庁職員の声は生々しい現場の様子を伝えていた。4階か5階で水素爆発が起き,爆発の力で3階天井に大きな力がかかって壊れたとみられる。  

 内部の放射線量は事故直後に比べて下がったとはいえ,1時間あたり数ミリ~150ミリシーベルトにのぼった。約15分にわたった内部調査での被曝線量は最大3.72ミリシーベルトだった。一般の人の年間被曝(ひばく)限度の1ミリシーベルトを上回った。  

 規制委は約5年ぶりに事故分析検討会を再開し,議論に必要な情報を集めるため内部調査を実施した。同検討会では大量の放射性物質が漏れ出た経緯や緊急時に使う設備の作動状況などを分析している。2020年中をメドに報告書をまとめる予定だ。

 要は,3号機は原子炉の本体である圧力容器はもちろん,格納容器も核爆発によって破壊されてしまったと観察することもできる。前掲の「ユーチューブ動画記事」を視聴したかぎりで,それも素人判断の立場から観てであっても,この3号機はその核爆発によって,両容器の,少なくとも上部は完全に破壊されており,吹き抜けて(吹っ飛んで)いたと判断するほかない。

一番手前が4号機そして上へ3号機,2号機,1号機
3号機の破壊した様子は「その爆発力」に有意な差があった事実を
正直に現わしていた

 この建屋の屋上部分が破壊されている状態をみただけでも,原子炉が爆発してしまい,その内容物が一気に上空へ吹き飛ばされた様子を想像(推定)させる。1号機が向こう側にみえるが,こちらは〔も〕水素爆発を起こしていたものの,建屋の上部の骨組は歪んでいない。だが,3号機のほうは相当に変形する被害まで受けている。なぜか?

 以上の観方に提示した疑問が当たっているとしたら,東電福島第1原発事故現場についての「政府と東電の話法」は,いままで延々と「嘘の説明」をしつづけていることになる。そうだとしたら,東電も政府経産省もその意味では「嘘の〈共犯〉的な連携関係にある」ことになる。

 つぎの画像資料は,2020年11月22日のテレビニュースからスクショしたものである。現場の後始末が進行中であるが,この3号機も水素爆発であったという「説明があるわけもはなかった」点については,疑問を抱かれて当然ではないか。

水素爆発はこういうもので核爆発は小規模でもああいうものだ
という基本的な説明をする者は原子力ムラ側からは絶対出てこない

 b) サービスね。もう一度みてみよう,キノコ雲,はっきり出ているよ。でも,もっと上までみたいよね。

  ⇒ http://www.youtube.com/watch?v=d1WW18QId50 (これは現在2020年2月12日現在,視聴不可)

  ⇒ http://www.youtube.com/watch?v=pVp2NnY16g0 (これは現在2024年6月22日において視聴可)

 「解説の人,東電,保安院(当時),信じて〔信じたら〕〔われわれが〕アホ。自分で考えないとダメ。黒煙は重要,水素爆発では出ない〔もの:爆発時の噴煙〕よ。「あとは自分で確かめよう」

 ここで,佐々木猛也「ナージャの村・ダモクレスの剣」『核兵器の廃絶をめざす日本法律家協会』日時不詳,https://www.hankaku-j.org/data/hoka/111020.html を紹介しておきたい。

大津波が押し寄せる前,福島第1原発は,地震で自動停止し,格納容器,配管などが破損し,メルトダウンが始まっていた。破損状況の詳しい報道はない。今日現在まで補修されたという報道もない。

 新たに取り付けた循環装置で放射性物質を含む大量の水を高圧で送りこんでいるが,破損した箇所からいまも同じように大量の水が漏れ続けているに違いない。そして,炉心熔融した残骸物を回収しないかぎり事故の収束はありえないのだが,その見通しは立たない。

  地震大国日本の活断層と54基の原発の上にはダモクレスの剣が垂れている。復興が叫ばれるなかで,その糸が切れることを惧れる。

  原発事故は,フクシマの人々をはじめ,計りしれない多くの人びとに取り返しのつかない事態を招いている。多くの人びとに不安と苦しみを与え続け,人の人生に深刻な影響を与えている。ナージャの村のように立ち入りを禁じられている地域が生まれている。

  この国に核発電所は不要との認識が広まった。だが,国や電力会社の認識は異なる。彼らは,広範囲に放射性物質をばらまく悲惨な事態を引き起こしたというのに,その自覚はいちじるしく欠如し,責任感がまるでない。

 被災者への早急な補償さえいまだせず,ましてや未来の人たちへの償いなど眼中にない。ウソの情報を出し,遅れた情報を出して恥じない。原発建設・再稼働をあきらめようとはしない。


  ストレステストが原発稼動開始のチェックポイントとはならない。放射性核物質の処理技術が確立しないかぎりは(その見通しはなく,半永久的に),核発電所は停止すべきものである。使用済み燃料プールを併設していたなど話にもならない。

  原発推進と安全のチェックを合わせおこなう保安院の頭上にもダモクレスの剣が垂れ下がっている。保安院全員阿呆(ホアンインゼンインアホ)の回文は最大の皮肉であろう。核兵器と核発電所の全面廃絶を求める運動を強めよう。

この文章の内容はいまだなにも変わらぬままである

 c)「いいたいこと」 重要なのは,放射線量やセシウム,イオダインではなく,3号機から広がった「プルトニウムの検出」

 永遠に続くのは,これの体内被曝の影響。それと比べると他の核種とか〔のほうは〕ずっと小さいよ。放射線はただの電磁波。だから離れればだいじょうぶ,距離の2乗に反比例(笑)。

 本当に怖いのは放射能をもつ物質のなかでも,ずっと減らない「超毒性のプルトニウム」。これは「死んだ人が火葬されても変わらない」。一つの粒が何人でも何世代でも殺せるから……。

 補注)以上の議論に関しては,つぎのように全面的に否定する主張もある。討議の公平性を保つ意味でも紹介しておく。  

 菊池 誠 × 小峰公子「福島第一原発3号機は核爆発していたのか?-原発事故のデマや誤解を考える」『SYNODOS』2015.12.25 Fri,https://synodos.jp/science/15807/2  

 ただし,この菊池も小峰も原発問題に対する発言の内容では,要注意の人物であった。つまり,問題のあり過ぎる発言が多いだけで,結局,ただ原発擁護派の立場の人たちであった。

 

 ※-7 簡単なまとめ-いちおうの結論-

 要するに「原発は石油をガブ飲みする」のであって,これほど無駄使いで,かつまた危険を伴った “エネルギーの獲得方法” は,ほかにはない。東電福島第1原発事故現場は,事故発生以来,2020年3月11日に満9年目を迎える。

 補注)この記述を更新して公表した本日,2024年6月22日になってすでに,事故発生以来13年以上が経った現在になっても,東電福島第1原発事故現場からデブリの1㎏さえ取り出しができていない。

 最近作の山本義隆『核燃料サイクルという迷宮-核ナショナリズムがもたらしたもの-』みすず書房,2024年5月は,東電福島第1原発事故のその後=現在について,同書の本文の最初にまずこう論断していた。

 爾来10余年の現在になっても,融け落ちた核燃料(デブリ)の状態さえよくわからず,わかったとしても取り出しことも叶わない。そして,その880トンと推定される大量のデブリが放射能を帯びた汚染水を吐き出しつづけている。

 事故はいまなおつづいているのであり,真の意味での終息には,今後数十年,いや何百年も要するであろう。ひとたび人間のコントロールを離れた原子力は,凶悪なばかりか人間的時間を超越した存在として,福島の地に居座りつづける

山本義隆『核燃料サイクルという迷宮』3-4頁

 
 だが,この大事故の後始末すらままならない “現実の様相” は,深刻だとか大変だと形容したらよい問題などでは終わらない。現にまさに《悪魔の火》に炙られている人類が,みずから背負いこんでしまった《業火》は,そう簡単には燃えつきない,それも非常にやっかいなシロモノである。

 たとえば,つぎに挙げる2点の画像に関した〈違い〉を介して表現されるはずの「未知の問題」,すなわち,この2つの画像のどちらが事実(東電福島第1原発事故現場のありよう)を,より正確に描いているかについて,いまもなお的確に答えているくれる専門家がいないのは,原発問題の根源的な至難性を意味する。

赤枠内のデブリ位置の描き方に注意したい
こういった状態になっていると断定できる専門家はいるのか?
前の図解についてはこの状態を調べられる方法があると説明されていたが

はたして地中の部分まで調査可能なその方法であるのか
という点までの説明がないままであった

 いずれにせよ,《悪魔の火》は,これからも大いに利用していくと宣言した日本国の首相がいた。岸田文雄は「いままでの首相たちがそこまではけっしていわなかった点」,つまり「原発の再稼働」にくわえて「原発の新増設」までも勝手に決めた。

 この「世襲3代目の政治屋」の異次元的な無能さ,自身の天才的な鈍感力に関してだけは,しかも無自覚に誇りえたこの国の総理大臣であったが,実は,原発(原子力)の問題をそもそも基礎からよくしりもしないで,「原発の再稼働や新増設」を気安く方向づけた。

 安倍晋三もたいそうひどかったが(原発に関した例のアンダーコントロール発言),この岸田文雄はさらにもっとひどい。その無知ぶりときたらあまりにも度外れであった。それゆえ,無識であった自分による「原発政策」の方向づけだとなれば,経済産業省エネルギー庁の官僚たちの思いどおりにしか発言できなかったゆえ,国民たちの過半が反対でありつづけている「原発政策」を,平然と否定した。

 たとえていうと,原子力ムラの構成員としての日本国首相岸田文雄は,東電福島第1原発事故現場からいまもなお,垂れ流し状態になっている汚染水(いちおうは処理水といわれているそれ)を,それこそ清濁ではなく汚濁だけであっても飲みつづけるような立場に甘んじていた。しかも無意識に,であった。

 安倍晋三の場合, “Shinzo Abe said that it was under control. “(2013年9月)といって,これまた自分の無教養ぶりを恥じることなど全然なかったけれども,本当のところは,こういうべきであったのである。

  Some may have concerns about Fukushima.  
  Let me assure you, the situation is out of control.    
  It has certainly done and will do much damage to Tokyo.

 安倍晋三は,なんといってもハチャメチャにダメ男首相であった。そして,岸田文雄もむろん,丸出だめ夫の首相であった。彼らは,自分たちがダメ連そのものであって,国民たちを巻き添えにするような「アホノミクスやキシダメノミクス的な為政」は,絶対に推進してはいけなかったにもかかわらず,あいもかわらずこの「世襲3代目の政治屋」たちがピンボケを面目躍如にした為政ぶりは,原発問題の政策次元からもこの日本国を大いに破壊しまくっている。

 すでによくいわれてきた文句だが,「バカな大将,敵より怖い」という格言(?)が,いつまで経ってもあてはまるこの国である。

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