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アメリカインド太平洋軍「在日米軍」に下属する日本国防衛省航空自衛隊のある3佐が文民統制を完全無視した事件

 ※-1 防衛省統合幕僚監部所属の「30代の男性3等空佐」が民進党の小西洋之参院議員に対して「国民の敵だ」と暴言を吐き,「文民統制を否定した」という重大な事件(2018年4月20日新聞報道) 

 要点:1 文民統制を完全に無視する自衛隊員は,即刻,懲戒免職の処分しない軍隊としての規律のない防衛省のエセ軍事組織性

 要点:2 当時首相であった「安倍晋三の専制的独裁志向:軍国主義イデオロギー」が「自衛隊に悪影響を与えてきた」のは,当然のなりゆきだったゆえ,国家のあり方にとって〈非常に重大な負の成果〉が現象した

 

 ※-2「統幕3佐暴言に波紋 防衛相『若く,思い様々』後に釈明」(『朝日新聞』2018年4月20日朝刊)

 1)5・15事件と近年問題になった自衛隊員の言動

 防衛省統合幕僚監部に勤務する30代の男性3等空佐が民進党の小西洋之参院議員に「国民の敵だ」と暴言を吐いたとされる問題で,小野寺五典(おのでら・いつのり)防衛相は〔2018年4月〕19日の参院外交防衛委員会で「大変不快な思いをさせてしまい改めておわび申し上げる」と陳謝した。

敵か味方の観方を野党政治家にあてはめ
しかもいきなり「国民の敵だ」と暴言を浴びせた空佐こそ
まさに「国民全体」にとっての敵である


 補注)「5・15事件」とは,1932〔昭和7〕5月15日に日本で起きた反乱事件。武装した海軍の青年将校たちが総理大臣官邸に乱入し,内閣総理大臣犬養 毅を殺害した。

 防衛省によると,3佐は〔2018年4月〕16日夜,東京・永田町の参院議員会館前をジョギングしていて小西氏と遭遇。小西氏だと確認したうえで暴言を浴びせたとされる。小西氏によると,3佐は自衛隊員と名乗ったうえで「お前は国民の敵だ」などとののしってきたという。

 3佐の暴言が明らかになった17日,小野寺氏は報道陣に「若い隊員なので様々な思いもある」と3佐を擁護したともとれる発言をし,野党側が反発していた。小野寺氏は19日の委員会で「自衛官にも憲法で保障された内心の自由は認められるが,今回のような不適切な発言はけっして認められない」と強調。「不適切な発言をした者を擁護するつもりはない。厳正に対処する」と釈明した。

 補注)小野寺五典防衛相は,戦前日本における軍事史に関する基礎知識を欠いているのか,それとも「文民統制」(シビリアンコントロール,civilian control)の根本概念をきちんと理解できていなかった疑いがもたれる。防衛大臣の職にありながらそうであったと推察されても自然な理解である。

 「厳正に対処する」とは,この事例の場合だと,確認できししだい即刻「免職処分相当」であった。文民統制の基本的な意義を真っ向から,それもあからさまに,しかも国会議員に向かい吐いた言動であったからには,

 昔の軍隊でいえば営倉入り間違いなしどころか,あるいは,戦争中であれば激戦地に送られ「死を覚悟させられる目」に遭わされたかもしれない。それほどにこの3佐は調子に乗って暴言を吐いたとしか受けとりようがない。

 防衛相はこの3佐が若いとかなんとかかばっていたが,それでは兵卒のもっと若い,20歳前後の自衛隊員が同種の事件を起こしても,同じに擁護するかのごとき発言をするのか?

 補注)つぎの記事を参照しておきたい。中途半端な処分で当該3佐を許していた。この顛末を踏まえて以下の記述に接してほしい。


 文民統制とは,職業軍人でない『文民が軍隊に対して最高の指揮権をもつ』ことによって,『軍部の政治への介入を抑制し,民主政治を守るための原則』である。軍部の人間ではなく,民主的な選挙によって選出された代表が,その国の軍隊をコントロールする権利をもつこと,あるいはその状態を意味する。

 文民統制の目的は,主に民主主義体制下の国家でみられ,軍部が政治に介入することにある。軍を動かす権利は,実質的にその国の首相や大統領に委ねられ,選挙によって選ばれた首長にその権利があるという点で,主権者である国民が名目上,軍をコントールできるという形式である。

 敗戦後の昭和20年代,まだ日本がGHQに占領・支配されていたとき,その最高司令官であったマッカーサー元帥がトルーマン大統領に解任されたが,この事実は文民統制のもっとも分かりやすい事例である。

マッカーサーは敗戦後の日本で
GHQ(General Headquarters)の最高司令官となり

古代皇帝のごとき権威と権限を発揮していたが
それでも文民統制にはしたがわざるをえなかった

 トルーマン大統領は1951年4月11日深夜0時56分,異例の記者会見をおこなった。マッカーサー解任を発表したのである。その解任の理由はこう説明されていた。  

 「国策問題について全面的で活発な討論をおこなうのは,わが民主主義の立憲主義に欠くことができないことであるが,軍司令官が法律ならびに憲法に規定された方式で出される政策と指令の支配を受けねばならぬということは,基本的問題である」  

 と断わったうえで,シビリアン・コントロール違反がその解任する直接の理由とされた。

 今回事件のように実際,日本において紹介したごとき「軍人(自衛隊員)が文民統制に反する言動をおこなっていた」が,問題となったそれが「防衛省統合幕僚監部に勤務する30代の男性3等空佐」というエリート将校による〈重大な違反〉であっただけに,問題はかなり深刻な事態であった。 

〔ここで記事に戻る→〕 防衛省は3佐からの聞取りを続けている。自衛官トップの河野克俊統合幕僚長は19日,会見で「(3佐の言動は)非常に不適切。いかなる理由があろうと国会議員にあのような暴言を吐くことは許されない」と述べた。

 補注)当時,安倍晋三に気に入られた河野克俊は,この暗愚の首相に特別にひいきされた記録が残されている。

 〔河野克俊は〕2014年10月14日付で第5代・統合幕僚長に就任した。自身もインド洋派遣部隊指揮官の経験を有し,また,米軍主要司令部との強いコネクションを築いていた。自衛隊最高指揮官である安倍晋三内閣総理大臣(当時)がもっとも信頼を置く自衛官と目された。

 歴代防衛大臣からも厚い信頼をえていることから,法令(自衛隊法施行令)で定める定年年齢(62歳)を越えた後も3度の定年延長を経て統合幕僚長の地位に留まり,初代統合幕僚会議議長の林 敬三に次いで歴代第2位の在職(要は正式の統合幕僚長としては最長)となった。

 付記)統合幕僚会議議長とは,かつて置かれていた自衛隊の役職。統合幕僚会議の議長であり,自衛官の最上位であった。2006年の制度改正による統合幕僚監部の設置に伴い,統合幕僚会議議長は統合幕僚長へと変更された。

 したがって,上記の説明のうち「初代統合幕僚会議議長」「に次いで歴代第2位の在職(要は正式の統合幕僚長としては最長)」と直接に連結して記述するのは,正確ではない。

 軍隊組織の名称としてそれぞれについては厳密にその定義的な意味を汲みとるべきであって,安易に聞こえる独自の解釈は御法度である。

安倍晋三にひいきされた統合幕僚長

 【河野克俊・関連画像】

「ついに勇退」という文句が効いていた
米日関係に身長差は問題外であったが・・・
軍人がどうであれ政治(自国内政)に口出しする
それも外交官気取りでこのように「属国精神丸出し」に
アメリカ軍人側に報告(上申?)していた
このように国会で問題となったのは当然

 以上に紹介してみた画像は,以下のような「当時の経過事情」にかかわらせ,かかげたものである。ウィキペディアにこのように説明されていた文章を紹介する。文民統制に関した常識次元の理解である。

 河野克俊が2014年(平成26年)12月に訪米したさい,アメリカ陸軍参謀総長レイモンド・オディエルノに「平和安全法制は来年夏には成立する見込み」と伝えていたことが発覚し(安倍晋三首相が訪米し,連邦議会演説にて「この夏までに成立させます」と述べたのは2015年4月末),文民統制違反の実例として国会で中谷 元・防衛大臣が質される事態に発展した。

 また河野は,国防副長官ロバート・ワーク(英語版)と会談したさいに,事故が相次ぎ危険視されているオスプレイについて「不安全性を煽るのは一部の活動家だけだ」と発言した。

 安倍晋三首相が新聞紙上にて,憲法に自衛隊の存在を明記するべきとしたことに対し,2017年5月23日の講演で質問を受け,「憲法という非常に高度な政治的問題なので,統幕長という立場から申し上げるのは適当ではない」と前置きしたうえで,「一自衛官として申し上げるならば,自衛隊の根拠規定が憲法に明記されるということであれば,非常にありがたいと思う」と述べた

 この発言について,自衛隊法で自衛隊員に高度の政治的中立性が求められていることに抵触するのではないか,あるいは公務員の憲法尊重擁護義務を定めた日本国憲法第99条に抵触するのではないか,といった批判が一部のマスコミや野党からあった。

 しかし,24日に菅義偉内閣官房長官が河野の発言について「個人の見解として述べたもので,まったく問題ない」として,自衛隊法に抵触せず問題ないという見解を示した。これに対し,日本共産党は25日に記者会見をおこない,河野の統合幕僚長職からの罷免を求めた。(引用終わり)

 日本共産党の批判はあまりにも当然な要求を提起したものであったが,安倍晋三の第2次政権は自国の為政をここまで糜爛・腐敗させていても,「初老の小学生・ペテン総理」の資質ゆえか,デタラメ三昧の国家運営を「文民統制」なども平然とコケにできていた。

菅 義偉はふたことめには必ずこの文句をゲロ同然に吐いていた

 なお菅 義偉のいいぶんは完全はヘリクツであった。日本の政治を安倍晋三の第2次政権のときに官房長官を長く勤めた菅が,この安倍と二人三脚でこの日本という国を醜い容貌にすっかり変貌させてきたが,文民統制を骨抜きするこの種の発言まで平然と口にしえた立場は,国民たちの立場・利害からいえば「国賊そのもの:反国民的な破壊分子」でしかありえなかった。

日本の憲政史上極悪・最凶のゾンビコンビ
これは朝日新聞から借りたものだが
桜を見る会とか公文書捏造という問題だとかなど
安倍晋三的な悪政腫瘍はこのなかにはまだ明記されていない
 

〔記事に戻る→〕 一方,3佐の具体的な発言内容について「最低限,暴言ととられる発言があったのは事実」と認めつつ,「国民の敵だ」といったかどうかは「小西氏がそういわれているのは重々承知しているが,調査の過程。コメントを控えたい」と述べるにとどめた。

 註記)河野克俊統合幕僚長のこの説明は正確ではない。その相手が誰であろうと,公的な場でのそうした発言(暴言)は「文民統制」の基本原則に反しているからである。この基本的な大原則をわきまえない自衛隊の最高将校が以上のごとき醜聞をさらけ出していた。

 河野は,自身が軍人としての経歴にみずから汚点を着けた迂闊さを,いまからでもいい,猛省しておくべきである。自分が自衛隊史を汚す「文民統制」逸脱を記録したことは,一生消えない「軍歴上の恥辱」になったからである。この点は本人の自覚有無とは無関係に断言しうる。

 河野はもっと,自身をきびしく制御できないまま,今後も生きていくのだとしたら,まさに軍人の風上にも置けない恥さらしを,それも安倍晋三の尻馬に乗っかるかたちで犯していたことになる。

 以上に関連する記事が『日本経済新聞』にも出ていたので紹介しておく。無条件に支配側体制の支持紙であるこの日経の論説であるから,それなりに留意して読みべき記事であった。なお有料記事なので契約以外は最後まで通読できないので,念のため。

〔記事に戻る→〕 防衛省は,3佐の言動が自衛隊員の品位の保持や政治的行為の制限などを定めた自衛隊法に違反する疑いがあるとみて,懲戒処分を検討している。

 補注)その検討結果については,前段においてさきに言及してあった。「訓戒処分」ということで,当人には痛くもかゆくもない処分。

 補注)いまの自衛隊3軍には軍法会議はなく,その「違反の疑い」がどう裁かれるかについては,当然のこと基本的に限界がある。

 2) 敵意が首相に向かう可能性も

 自衛隊と政治の間には特別な関係がある。戦前,軍部が政治に影響力を及ぼした反省から,戦後は政治が軍事に優越する「文民統制」を制度化。首相や閣僚が文民でなければならないだけでなく,国会による統制も重視されてきた。自衛隊の人員や予算は国会の議決を経なければならず,防衛出動にも国会の承認が欠かせない。

 さらに,自衛隊法は自衛隊員に対し,58条で「品位を保つ義務」を課し,61条で選挙権の行使を除く政治的行為を制限している。同法施行令は,特定の政党を支持・反対する目的で職権を使うことなどを禁じる。憲法15条が定める「全体の奉仕者」である公務員としての規定だが,これを厳格に適用することで,文民統制を具現化してきた。

 今回,暴言を発した3佐の階級は,戦前の軍組織に当てはめれば将校の少佐にあたる。その立場で国民の代表である国会議員に公然と敵意を示したとして,希望の党の玉木雄一郎代表は「1938年に帝国議会で陸軍中佐が議員に『黙れ』と一喝した事件を思い出す」と話す。

 1932年には青年将校が「国民の敵」と書いた紙をまいて当時の犬養 毅首相を暗殺した5・15事件も起きた。「80年たって非常に嫌な雰囲気が漂ってきた。実力組織の統制に大変危機を感じる」と話す。

 補注)なお「実力組織」である自衛隊は暴力装置そのものである。だからこそ格別かつ厳重に,文民統制の重要性が守られるべき必要が強調される。

〔記事に戻る→〕 同志社大の武蔵勝宏教授(立法学)は「自分の意見と異なっても,実力組織の一員である自衛官は民主主義を尊重し,政治的決定に従うのが文民統制の要だ」と指摘。「今回は野党の政治家に対する威嚇だったが,そうした憤りが転じ,首相に向かうことがないとも限らない」と懸念する。

 ジャーナリストの布施祐仁さんは「自分の立場を自衛官と明かして国会議員に『敵』というのは,統制なんか受けないと宣言しているに等しい」と指摘。陸上自衛隊がイラク派遣に反対する市民の個人情報を集めて裁判になった例や,自衛隊の最高指揮官でもある安倍晋三首相が選挙応援中にヤジを飛ばした人に「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と発言した問題にも言及し,「簡単に敵味方を分断する姿勢が浸透しているのでは」とみる。

 「今回の行動になんらかの土壌があるなら,非常に危ない。災害派遣で国民に信頼されてきたのに,不安を抱かれるのは自衛隊にとってもプラスにならない。しっかり原因究明すべきだ」(阿部峻介)

 註記)以上,だいぶ長く引照してきた『朝日新聞』2018年4月20日朝刊のリンク先住所は,https://digital.asahi.com/articles/ASL4M5HNVL4MULZU00C.html

 ここまで※-1の記述に関係させては当時,『西日本新聞』がつぎの社説を書いていたので,これを紹介しておく。同じ趣旨になる社説などは後段でもさらに紹介することにもなる。

     ◆ 社説 自衛官の暴言 文民統制を軽んじている ◆
  =『西日本新聞』2018年4月26日 11:04,                       https://www.nishinippon.co.jp/item/n/411627/

 1人の自衛官の個人的な言動として見過ごすべきではない。「政治と自衛隊」の関係に照らして,大きな問題をはらんでいるからだ。

 防衛省統合幕僚監部に勤務する30代の3等空佐が16日夜,民進党の小西洋之参院議員に対し執拗(しつよう)に暴言を浴びせていたことが明らかになった。抗議を受けた防衛省は暴言の経緯や内容を調査し,中間報告を公表した。

 報告によると,3佐は国会周辺をジョギング中に小西氏を見かけ,小西氏に向かって「国のために働け」と大声を上げた。

 小西氏が「国のために働いている」などと反論すると,3佐は「俺は自衛官だ。あなたがやっていることは日本の国益を損なうようなことじゃないか」「こんな活動しかできないなんてバカなのか」とののしった。

 小西氏がその場で「自衛官を名乗る男から暴言を吐かれている」と防衛省幹部に電話したところ,3佐は「そういう行為が気持ち悪い」と罵倒を続けた。

 防衛省によると,3佐は小西氏について「政府や自衛隊とは違う方向での対応が多い」と不満を抱いていたという。

 小西氏は「3佐は確かに『国民の敵』と発言した」と指摘している。一方,3佐は「国民の敵」の言葉は否定している。

 自衛官はなにもしゃべってはならぬ,などというつもりはない。自衛官が現場の経験に基づいて発言することは地に足の着いた防衛論議にプラスに働く。

 しかし,この3佐の発言からは「政治家はなにも分かっていない」という独善と傲慢(ごうまん)が感じられる。民主国家の大原則である「文民統制(シビリアンコントロール)」を軽んじた言動だといわざるをえない。

 今回の暴言は1938年に帝国議会で起きた「黙れ事件」を想起させる。議会に法案の説明にきた陸軍中佐が,国会議員に対し「黙れ」と一喝した事件である。軍が議会を軽視して暴走し,無謀な戦争に突入していった歴史を象徴する出来事だ。

 小野寺五典防衛相は,今回の暴言の発覚直後「若い隊員なのでさまざまな思いもある」とかばうような発言をしたが,問題の重大性を理解していない。

 自衛隊では日報隠蔽問題でも,政治家である防衛相の指示に背いて,みつかった日報を「ない」と報告していた。これも「文民統制の軽視」という点で根っこは同じだといえる。

 自衛隊は災害派遣などを通して国民の信頼を得る努力を続けてきた。国民の代表である国会議員を「バカ」とののしるようでは,これまでに築いた信頼が失われる。自衛隊は偶発的事案として矮小化せず,組織として猛省し,襟を正すべきである。

『西日本新聞』社説

 ここでやや長い文章なので,というか,ちょうど真ん中の段落は大幅にはしょっても,全体の文意が伝えられると観たので,つぎに引用するのが, 籏智広太・稿「軍人が議員に罵声を浴びせた『黙れ事件』 80年前の結末を知っていますか? -帝国議会で起きたこと。簿言ふ」『BuzzFeed NEWS』2018年4月18日,https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/damare である。つぎの2箇所を引用する。

 a) 防衛省統合幕僚監部の3等空佐が民進党議員に対し,国会議事堂前の路上で「国民の敵だ」などと暴言を繰り返したとして,批判を浴びた問題。実は似たようなことがちょうど80年前〔2024年からだと86年前〕,帝国議会で起きていたことをご存知だろうか。「黙れ事件」だ。

『BuzzFeed NEWS』から転載

 b) 「黙れ事件」は,軍部が政治を軽視する体質を現した象徴として捉えられることが多い。一部始終を目撃した国民新聞の木道茂久記者は戦後,自身の手記に「偶発的な失言ではない」と記しているという(『読売新聞』1971年6月11日)。

 「あれは決して偶発的な失言などではなく,傲慢無礼な佐藤の一言は,陸軍の政治上の態度を端的に表現したものであり,委員会の空気は当時における軍部ファシズムと,政党内部に残存した自由主義との対立相克の集中的表現であった」

 一方で佐藤氏は,そうした見方をこう一蹴している。

 「この事件を世間では大きく取り扱いすぎる感があった。まるで陸軍が議会を圧迫し,その勢力を衰退させたかのようにいったのである。実にばかげたことである」

 〔だが〕はたして本当に,「ばかげたこと」だったのだろうか。

 「黙れ事件」からひと月ほどして,国家総動員法は成立した。日本がその後,どんどんと戦時体制に入りこみ,敗戦への道を突き進んだことは,いうまでもない。(引用終わり)

 さて,その後における日本の政治全般は,「現時点ではどうなっているか」? 「21世紀における今回」は,アメリカの実質属国になりさがった立場からとなるが,航空自衛隊の3佐がそれも野党の国会議員に対して侮蔑発言を放っていた。

 ところが,当時の防衛大臣小野寺五典防衛相は,当初,中途半端以前のいいかげんな対応をみせていた。

 小野寺五典(おのでら・いつのり)防衛相は〔2018年4月〕19日の参院外交防衛委員会で「大変不快な思いをさせてしまい改めておわび申し上げる」と陳謝したけれども,小西氏は,その3佐は自衛隊員と名乗ったうえで「お前は国民の敵だ」などとののしってきたという。

 この3佐の暴言が明らかになった17日,小野寺は報道陣に「若い隊員なので様々な思いもある」と3佐を擁護したのち,これには野党側が反発したため,小野寺は19日の委員会で「自衛官にも憲法で保障された内心の自由は認められるが,今回のような不適切な発言はけっして認められない」と強調,「不適切な発言をした者を擁護するつもりはない。厳正に対処する」と釈明した。

 もしも,小野寺五典防衛相がその3佐に対して示したように生ぬるくあつかっていたら,日本の軍隊としての自衛隊は「文民統制」が骨抜きにされたと観るほかない。

  だいたい,軍人たちに刃物をもたせているのは,彼らが気違いではないことを重々確認したうえであった。

 だが,意図して気違い的な言動を,つまり「文民統制」などクソ食らえで放言したような自衛隊員が,はたして「国民の生命と財産を守れる国家的な人材」たりえようか? 

 その答えは容易に出る,完全に失格であった。

 

 ※-3 戦前「2・26事件」で将官(陸軍の将軍)が同じような発言をしていた

 1936〔昭和11〕年に発生した「2・26事件」事件では,その黒幕と疑われた真崎甚三郎大将(前教育総監,皇道派)が控えていた。1937年〔昭和12〕年1月25日に反乱幇助で軍法会議に起訴されたが,否認した。

 論告求刑は反乱者を利する罪で禁錮13年であったが,9月25日に無罪判決が下る。もっとも,1936年3月10日に真崎大将は予備役に編入される。つまり事実上の解雇である。

真崎仁三郎・画像

 真崎自身は晩年,自分が2・26事件の黒幕として世間からみなされていることを承知しており,これに対して怒りの感情を抱きつつも諦めの境地に入っていたことが,当時の新聞からいかがえる。

 また,その2月26日に蹶起をしったさいには連絡した亀川哲也(「背後関係者」の1人として「叛乱罪(謀議参与)」を事由に「無期禁錮」に処された)に「残念だ,いままでの努力が水泡に帰した」と語ったという。

 しかし,真崎が反乱軍に同情的な行動をとっていたことはたしかであり,2月26日午前9時半に陸相官邸を訪れたさいには磯部浅一に「お前達の気持はヨウッわかっとる。ヨウッーわかっとる。」と声をかけたとされ,

 また川島陸相に反乱軍の蹶起趣意書を天皇に上奏するよう働きかけている。このことから真崎大将の関与を指摘する主張もある。

 整理しておく。「2・26事件」を起こした陸軍将校は大尉・中尉・少尉であった。つまり,尉官位(クラス)の若い将校たちであった。今回,2018年4月に民進党の国会議員に対して航空自衛隊3佐が投じた放言的な口撃と,戦前「二・二六事件」のときに真崎真三郎がクーデターを起こした尉官たちに返した言葉を,以下に並べておく。

  ▽ 小野寺五典:「若い隊員なので様々な思いもある」。

  ▼ 真崎甚三郎:「お前達の気持はヨウッわかっとる。ヨウッーわかっとる」。

 小野寺五典防衛大臣は当初,三佐(昔の少佐にあたり,今回は航空自衛隊員)の発言を「様々な思いもある」のは「若い隊員なので」,と説明していたのである。

 だが,軍人(自衛隊員)は文民統制の見地からすれば,そのような「様々な思い」があってもこれを公に口に出したり,ましてや与党の国会議員をつかまえてはそのように罵詈雑言をするかのように,

 しかも「3佐は自衛隊員と名乗ったうえで『お前は国民の敵だ』などとののしってきた」とすれば,これは完全に「文民統制」違反の(抵触する)行為であった。つまり,許容できない言動であった。

 さきに『西日本新聞』の関連する「社説」を紹介したが,つぎに『朝日新聞』の社説を引用しておく。  

     ★〈社説〉自衛官の暴言 文民統制からの逸脱だ ★
        =『朝日新聞』2018年4月19日朝刊 =

 現職の幹部自衛官が,国民の代表である国会議員に対して「お前は国民の敵だ」と罵倒を繰り返す。およそ考えられない異常事態である。暴言を吐いたのは,防衛省統合幕僚監部指揮通信システム部に所属する30代の3等空佐。

 東京・永田町の国会近くの路上で〔4月〕16日夜,ジョギング中に遭遇した民進党の小西洋之参院議員を,自衛隊員であることを告げたうえで「国民の敵」「(国会での)言動が気持悪い」などと執拗にののしったという。

 政治が軍事に優越するシビリアンコントロール(文民統制)の原則からの逸脱は明らかだ。

 「国民の敵」というレッテル貼りは,戦前,国策に非協力的とみなされた者が「非国民」と指弾されたことを連想させる。それは平和憲法のもと,災害派遣などを通して地道に積み重ねてきた自衛隊への国民の信頼を裏切る言動でもある。

 事態を重くみた制服組トップの河野克俊統合幕僚長がただちに,小西氏に直接謝罪したのは当然だ。

 自衛隊員の政治的行為の制限や,品位の保持を定めた自衛隊法に違反しているといわざるをえない。3等空佐といえば,一線の部隊の指揮をとれる中堅幹部だ。そんな立場の者が,なぜ,こんな言動に出たのか,事実関係の徹底的な調査と厳正な処分を求める。

 補注)この3等空佐は単なる三佐ではなく,防衛省統合幕僚監部に勤務するエリート将校であったから,この人物から吐かれたことばとして,より重大なものであったとみなしておくべき余地があった。つまり,事態はたいそう深刻であった。

 小西氏は国会で,安倍政権が進めた安全保障関連法に強く反対し,南スーダンやイラクの日報問題でも,政府批判の急先鋒(きゅうせんぽう)だった。矢面に立たされる防衛省・自衛隊のなかに,野党議員やメディアに対する不満が鬱屈してはいないか。そうした背景も調べる必要がある。

 小野寺防衛相は「小西議員に不快な思いをさせたことに関しては,申しわけないという気持だ」と語るだけだった。文民統制という民主主義の根幹にかかわる重大事という認識が欠けているのではないか。再発防止に向けた幹部教育の見直しなどに指導力を発揮すべきだ。

 近年,世論の分断が広がり,ネット上には「非国民」「売国奴」といった言葉がゆきかう。昨〔2017年〕夏の都議選で,みずからに抗議する人びとを「こんな人たち」と切り捨てた安倍首相の発言も思い起こされる。政治や言論の荒廃が,自衛隊内にも影響しつつあるとしたら見過ごせない。

 国会議員の背後には多くの国民がいる。そこにはさまざまな考え方があり,ていねいに議論を重ねることで結論に導く。「国民の敵」という暴言からは,そんな民主主義の基本への理解が感じられない。(引用終わり)

『朝日新聞』社説

 この社説は,安倍晋三という元首相がいままでさんざんに「荒廃」させてきた「日本の政治や言論」が,3等空佐による「文民統制」などクソ食らえといわんばかりであった,今回のごとき「国会議員に対する野外での突然の〔だが待ちかまえていたというから計画的反抗としての〕口撃」の様子は,

 日本国防衛省自衛隊3軍における,それも一番肝心である「エリート将校次元の文民統制に関する規律」が,どだいから完全に弛緩していた現実を教えたことになる。

 この国は,日本国憲法第9条というきわめて奇妙な「戦争放棄の条項」をもちながらも,当時,海上自衛隊のヘリ空母を本格空母に改装する案まで語られていたなかで(この改装はすでに竣工済みとなり,2023年11月には就航〔試験就航をした〕),

 いきなりであったかのように,飛び出してきた航空自衛隊のエリート将校(三佐)による『文民統制など念頭にはないかのような発言』,それも暴言そのものの「国会議員(野党)に対する言動」が発生していた。

 まともに考えれば即刻,懲戒免職に値する。一罰百戒である。

 このまま手ぬるい対応(なんらかの手抜きの処分)で済ましたとなれば,同様な事件が繰りかえし発生する危険を,自衛隊みずからが放置することになる。なにせ,あの最高指揮官(当時の河野克俊統合幕僚長)が存在していたからこそ,今回のごとき自衛隊員の暴言事件も発生したといえなくはなかった。

 要は「本当の〈国民の敵〉」は,ほかでもなく,この「航空自衛隊三佐」自身なのであったが,それ以上にまた,すなわち,「文民統制」など平然とないがしろにする〈軍事感覚の持ち主たち〉が,自衛隊3軍全体にまで蚕食している事実について,国民たちはつねひごろから不用心であってはいけない。

 今回は「国民のための自衛隊」員,それもエリート隊員が “文民統制の鉄則” を屁とも思っていない真情を,みずから吐露した。事態は深刻であり,誰しもが警戒すべき日本国防衛省「自衛隊事情」の一端が露見した。

 そのように本ブログ筆者が主張する理由は,後段の※-4の議論においても説明することにしたいが,ともかく,その前に関連する記述を続けたい。

 

 ※-3「〈天声人語〉自衛官の暴言」(『朝日新聞』2018年4月2日朝刊)

 戦時中は「敵」という言葉がひんぱんに使われた。日常生活にも及び,英語が「敵性語」とされて,サイダーは噴出水,フライは洋天になった。学校では青い目をした人形が,「敵性人形」といわれ焼かれた。「ぜいたくは敵だ」の標語もあった。

いまとなってみれば「お笑いのいいかえ集」

  ▼ いま日常語で敵を使うとすれば,スポーツでの「好敵手」「敵失」などだろうか。それだけに,ざわっとするいい方であった。「お前は国民の敵だ」。30代の幹部自衛官の男性が路上で,民進党の小西洋之参院議員に対して浴びせたという。

  ▼ 小西氏は安全保障関連法に強く反対してきた。議員活動を念頭に置いた暴言だとすれば,慄然とするほかない。さらに気になるのは,小野寺五典防衛相が一方で謝罪しながら「若い隊員なので様々な思いもある」と発言したことだ。気持は分かる,とでもいいたかったか。

  ▼ 実力組織である自衛隊には,強い中立性が求められている。1人の暴言にすぎないと,見過ごすわけにはいかない。日本には軍部が暴走し,国家を牛耳った暗い歴史があるのだ。

  ▼ 政治学者の石田 雄氏が,1930年代の小学校時代のことを書いている。学校に配属されている将校から,「あそこに国賊が住んでいるから毎日にらんで通れ」と朝礼でいわれたという。軍部が非難の矛先を向けている学者の家だった(『私にとっての憲法』)。

  ▼ 国賊や非国民という言葉が,有無をいわせぬ暴力となった時代があった。そして残念ながら,似たような言葉をもてあそぶ人がいまもいる。(引用終わり)

石田 雄(たけし)の発言

 ここに登場した石田 雄によるまとまった発言を,次段に紹介しておきたい。

 「新連載 石田 雄 軍隊体験者が次の世代に遺したいこと」「第1部 もう一度戦争を始めないために」「第1回 過去の経験から感じる恐ろしさ」『NPJ』2014年11月29日,http://www.news-pj.net/news/11721 から以下に引用する。長い参照となる。

【人物紹介】 石田 雄(いしだ・たけし,1923年6月7日-2021年6月2日)は,旧制成蹊高校から旧東北帝国大学法文学部に進学,在学中に学徒出陣し,陸軍東京湾要塞重砲連隊へ入隊。復員後,東京大学法学部を経て,東京大学社会科学研究所教授・所長,千葉大学法経学部教授などを歴任。 

人物紹介

 私は2015年で92歳になります〔上述のように2021年に死去〕。いまや数少ない軍隊体験者として,軍国青年になったことの反省のため長年政治学を研究してきた者として,安倍政権の政策に非常な危機感をもっています。

 本当であれば,デモなどで自分の意志を明らかにしたいのですが,身体が思うように動きません。それで,この場をお借りして,次の世代への「遺言」を語りたいと思います。不定期の連載ですが,ぜひともお読みください。

 --特定秘密保護法の制定や集団的自衛権の閣議決定などで,日本が戦争への道に進むのではないかという危機感を多くの人がもっている。それに対する批判や怒りの声を上げている人も多い。

 しかし,批判や怒りの表明にとどまっていることがほとんどで,危機感をもっている人がなにをめざして,どのような方向に歩み出せばよいのかについて触れる論考は多くない。

 4回にわたる第1部では,〔この〕1回目で問題提起をおこない,2回目以降では一歩でも前に踏み出すための提言をおこなう。

 補注)この石田 雄の議論はすべてを引用できない。今回のこの第1部の1回目だけを〈さわり〉の部分として紹介するに過ぎない。興味をもたれた人はリンクをたどって,さらに続編を読んでもらいたい。

〔記事に戻る→〕 最近の日本での政治的動きをみていると,過去の戦争に兵士として動員されたひとりとして,恐ろしい予感がしてならない。いったい,どの点で前の戦争に向かった点と共通しているのか,どの点で違うのかを明らかにして,もう一度戦争に向かうことを防ぐ方法を考えよう。

 1)思想言論の自由への制限

 まず似ている点からみてみよう。ひとつは特定秘密保護法の実施に伴って,言論・思想の自由が脅かされようとしている問題だ。私が生まれて2年後の1925年に普通選挙法と抱き合わせで治安維持法が制定された。「国体を変革」する組織を禁止するという名目で,最初は共産主義者が取締まりの対象となった。

 しかし,「危険思想」をもっているという疑いによって,取締まりの対象はどんどん広がった。出版法などもくわわって,取締まる相手は共産主義者だけではなく,共産主義に反対していた自由主義者も軍国化に反対するというので逮捕,処罰されるようになった。こうなると,軍国主義化の流れを止めることは不可能になった。

 今日の特定秘密保護法は,国家の安全保障のために必要だといわれている。しかし,なにが秘密であるかが明らかでなく,それをしっている公務員だけではなく,しろうと「煽動・教唆」した一般人も対象とすることになっているのが危ない。

 軍事化に反対する言論がその主張のために情報を求めようとすることじたいで逮捕される危険を伴うということになれば,かつて戦争に反対する言論がいっさい封殺された事態を繰り返すことになる。

 この危うさは,最初は気づかないなかに,しだいに取締まり対象が広がり,気づいた時にはどうにもならないという「ゆでガエル」現象が起きることである。戦前には,最初は共産主義者だけだから,自分は関係ないと思っているうちに,やがて戦争に反対する一切の言論が封殺されることになった。

 補注)戦前・戦中に関するドイツでの有名な文句:形容があった。こういわれた。ナチスに抵抗したルター派の牧師マルティン・ニーメラーが悔恨しつつ残した教訓である。

  ★-1 ナチスが共産主義者を攻撃したとき,自分はすこし不安であったが,とにかく自分は共産主義者でなかった。だからなにも行動に出なかった。
  
  ★-2 つぎにナチスは社会主義者を攻撃した。自分はさらに不安を感じたが,社会主義者でなかったからなにも行動に出なかった。
  
  ★-3 それからナチスは学校,新聞,障害者,ユダヤ人などをどんどん攻撃し,そのたびに不安は増したが,それでもなお行動に出ることはなかった。
  
  ★-4 そしてナチスは教会を攻撃した。自分は牧師であったから行動に出た。しかし,そのとき自分のために声を上げてくれる者はいなかった。

マルティン・ニーメラ

 2)排外的ナショナリズム

 もうひとつ戦前と今日の状況の類似点として危惧されるのは,排外主義的ナショナリズムが経済的な困難に伴う不安や不満を敵への憎悪に誘導するということだ。1930年代には世界恐慌の影響で貧しい農村では,「娘売ります」という広告が出されるほどで,「非常時」だといわれた。

21世紀のいまは自分で自分を売りますといった限界点にまで
追いつめられている女性たちがいる

 その困難を克服するためには,「生命線」としての「満州」に進出することが必要だというので,関東軍はみずから南満州鉄道を爆破した。そして,これを中国人がやったとして,それを口実に軍事行動を始めた。

 そうなると,軍事行動に反対する意見は弱腰であり,それをいう者は「非国民」だと非難され,多くの人は沈黙する。勇ましい軍事行動を支持する世論に支えられ,戦線はつぎつぎに広げられた。そしてアメリカからの石油輸出禁止に対して,中国からの撤兵という条件ではとても世論を説得できないと対米戦争に至った。

 今日の事態は,軍部の発言権は強くないから,当時とは違うというかもしれない。しかし,最近の「反日」や「非国民」「売国」などの言葉が横行する状態は,経済格差に伴う不安や不満が社会に充満しているだけに,それを国の内外の敵へと誘導する動きとして,同じような危うさを感じさせる。

 それは単なる一時的な感情的反応で,心配する必要はないという人がいるかもしれない。しかし,たとえば自治体の広報誌に憲法9条を詠みこんだ俳句を載せないようにしたり,自治体のイベントに「9条の会」の参加を拒んだりする動きが出てきている。これは面倒なことになるといけないから,「政治的」なものは遠慮してもらうという形での自主規制にほかならない。

 補注)しかし,ここまで来てみれば,あの安倍晋三こそが,まさしく「反日」や「非国民」「売国」などの言葉が,もっともよく当てはまった,それも「世襲3代目の政治屋」であったことになる。

 3)平和のための戦争の危うさ

 このようにして,軍事化を防ごうとする言論が不自由になることは,愛国心をめぐる忠誠競走を生み出す危険性と表裏をなしている。かつての戦争では「東洋平和」のための戦争を勝ち抜くことが日本の繁栄のために必要だといわれた。それと同様に,いまや「積極的平和主義」によって,世界のどこでも武力行使をすることが日本の繁栄に貢献するといわれるようになってきている。

 武力行使の名目は,過去の戦争でも在留邦人の生命を守るためといわれた場合が多い。日本人の生命を守るためということで一度武力行使がされれば,当然報復攻撃があり,それに伴って,戦火は拡大した。今日でも同じ結果が予想されるだけでなく,人の移動が自由になり,武器も高度化・小型化したため,報復は日本国内でのテロというかたちでおこなわれることも十分に予想される。

 補注)2022年2月24日,「プーチンのロシア」がウクライナ侵略戦争を開始した。プーチンのいつものいいぐさ,戦争を始めるさいに口にしてきた言葉は,隣国も位置する諸国においてだが,どの程度の少ない人数・比率であっても,そこで暮らしている「ロシア人の命を守るため」であった。

〔記事に戻る→〕 武力行使によって,自衛隊に死者が出たら,どうなるか。その死を無駄にするなと敵への憎悪がいっそう強くなることは過去の例からも明らかである。さらに自衛隊への応募者が減ることによって,徴兵制の可能性も考えなければならない。

 わたしは1943年学徒出陣で入隊し,殺人を使命とする軍隊という組織で毎日のように殴られる経験をした。いまや数少なくなった,そのひとりとして,つぎの世代が徴兵され,殺人を使命とする組織に参加させられるようになるのを黙って見過ごすわけにはいかない。では,どのようにすれば,戦争につながるいまの危うい道を阻止することができるだろうか。3回に分けて,考えてみよう。(続く)(引用終わり) 

 

 ※-4「驚愕の幹部自衛官-統合幕僚監部の三佐が国会議員に「国民の敵だ」と罵倒-」(『夜明け前の独り言 弁護士水口洋介』2018年4月18日,http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2018/04/post-6a09.html から)

 自衛隊の幕僚監部の三等空佐が,民進党の小西参議院議員に対して,国会近くの路上で夜9時に偶然にあったさいに,「国民の敵だ」「気持悪い」などと罵倒し,警備の警官が集まってきても罵倒をやめなかったという。

 財務省の事務次官のセクハラ問題の影に隠れていますが,この事件を軽視すべきではありません。「自衛隊員にも政治的意見をいう自由がある」などと三佐を擁護する声も見受けられますが,そのような意見は,自衛隊が実力組織(もっと,ありていにいえば軍事組織)であることを忘れた謬見だと思います。

 「三等空佐」とは航空自衛隊の三佐であり,旧軍で言えば「少佐」にあたる将校です。幕僚監部は,旧帝国陸軍では参謀本部,旧帝国海軍では軍令部にあたり,統合幕僚監部(統幕)は,陸上・海上・航空の幕僚監部を統合する自衛隊の中枢機関です。

 その「統幕」の「三佐」(少佐)が,国会議員に対して,勤務時間外だとしても,国会周辺の公道上で「お前は国民の敵だ」と罵倒したわけです,しかも,警官が集まってきても,現職の自衛官と名のって罵倒をやめなかったという。

 自衛隊法61条や自衛隊法施行令では,自衛隊員の政治的行為を禁止しています(刑罰規定あり)。つまり,自衛隊員は,政治的中立性を守らなければなりません。また,自衛官の服務等訓令では,「何人に対しても冷静で忍耐強く,正しい判断をし,野卑で粗暴な言語又は態度を慎まなければならない」と定めれれています。そして,「隊員たるにふさわしくなく行為があったとき」には懲戒処分を受けます(自衛隊法46条)。

 自衛隊は軍事組織にほかなりませんから,一般の国家公務員以上に,政治敵中立性を厳格に遵守しなければなりません。わが国には戦前の軍部テロ(5・15事件や2・26事件)の歴史がありましたから。

 ところが,統幕の三等空佐という幹部自衛官(昔でいえば「参謀本部少佐」というエリート軍人)が,特定の政党や国会議員の政策や方針について反対する意図をもって,公道にて周りの警察官が制止するのも無視して,自衛官であることを名のったうえで,「お前は国民の敵だ」と発言をしたわけです。

 統幕の佐官クラスが,このような政治的意図をもって,自己抑制もできずに,国会議員を罵倒することは由々しき事態であり,驚愕します。タガがはずれていると思います。罵倒された国会議員が民進党議員であるか,自民党議員であるか,公明党議員であるかは本質的問題ではありません。この自衛隊員の意見にあわない場合に,議員を「国民の敵だ」と決めつけて罵倒することが問題なのです。

 だからといって,すぐに戦前の軍部テロの時代が再来するとは思いませんが,統幕の佐官クラスの言動であることからみて,自衛隊の内部(統幕内部)に,自衛隊に批判的な政党や政治家に対して,「国民の敵」とか「反日分子」として攻撃すべき「敵」であるとの政治思想やイデオロギーが蔓延し,あるいは浸透していることがうかがわれます。あるいは,そのような政治思想グループがすでに形成されているのかもしれません。そうだとすると怖いですね。

 軍事組織である自衛隊の一部でも暴走しはじめたら,誰にも止められません。自衛隊では監察本部がその役目を担うのでしょうが,これも防衛省の内部組織ですから身内です。警察(公安部)も監視していると思います(戦前の5・15事件では,犬養首相警護の巡査らが軍に殺害されているので,警察は伝統的に「軍」を警戒しているとなにかの本で読んだことがあります)。

 この三佐を厳しく処分することは当然として,自衛隊内には自衛隊に批判的な政党や国会議員を敵視する政治思想グループが形成されていないか,徹底的に調査し,もし形成されていればその影響力を除去する措置がとられるべきです。将来の禍根を残さないように国会がきちんと対処すべきです。(引用終わり)

 以前の民主党政権の時代であったが2010年10月,官房長官仙谷由人が,自衛隊のことを「軍隊だから暴力装置」だと国会内で発言したところ大騒ぎになっていた。

 ともかく仙谷は,同月18日の参院予算委員会で,「自衛隊は暴力装置」と述べた点についてはその後,「実力組織」といいかえたうえで発言を撤回し,謝罪した。

 本日はこの記述で,航空自衛隊3佐の,野党議員に対する路上での暴言事件をとりあげ議論してきたが,自衛隊も軍隊である事実からして,暴力装置である真実になにも変更などくわえる必要などないと断言する。

 現在進行中である「ロシアによるウクライナ侵略戦争」もまた,その軍隊の本質そのものである暴力行為(各種各様の兵器・武器を使用するそれ)を実行中である事実に照らしてみるに,

 所与の軍事組織体制(軍隊編制)のもとで「最大限にかつ有効にその効果を発揮できるように」するための目的を,わずかでもないがしろにするがごときに「戦争という有事に備えている軍隊組織」なるものは,

 初めからありうるはずもない軍隊のあり方になる。

 この程度の理解は初歩に属することがらである。しかも今回のごとき統幕の佐官クラスの言動が,野党国会議員に暴言として吐かれていた事実は,文民統制の基本認識を崩壊させかねない結果をもたらしていた。

 堤防に発見して「蟻の一穴」は,ただちに確実にかつ完全に塞いでおかないと,いざとなったときには大洪水が起こる。

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