いまや発展途上の後進的な貧困国家に転落した日本,いまだに奨学金制度が不備である現状など(後編)
【断わり】 「本稿(後編)」は以下の前編を受けて記述されている。
⇒ https://note.com/brainy_turntable/n/nf437a532b683
付記)冒頭の画像は末尾で言及がある本の表紙カバーから借りた。
※-1「給付型奨学金 中間層にも 子3人以上優先 2024年度から 年収基準,600万円案浮上 支援規模,調整続く」『日本経済新聞』2022年12月13日朝刊47面「社会」
返済不要の「給付型奨学金」の対象が低所得層から中間層に広がる。
文部科学省の有識者会議は〔12月〕12日,子どもが3人以上いる世帯を最重視するといった支援の優先順を柱とする制度案をまとめた。大学進学を後押しする狙いがあり,2024年度から始める。
焦点となっていた対象世帯の年収基準は示さず,政府内で2022年度中に調整する。大規模な財源が必要になり,年収基準がどこまで引き上げられるかは不透明だ。
高度人材の育成に向け政府は奨学金制度の見直しを進めている。
今回は学部生らを対象とした給付型の制度案が固まり,大学院修士課程を対象に国が学費を立て替える「出世払い」型奨学金の設計も近くまとまる。国の修学支援が2024年度から大きく変わることになる。
補注)この表現「出世払い」というのは,いかにもおおげさだという印象を抱く。奨学金を借金(貸付金)として運用する制度を主軸にした運用形態は,給与型奨学金そのものを考えるさい,本筋から外れているといわざるをえない。
〔記事に戻る→〕 給付型奨学金は2017年度に創設された。授業料減免と合わせ修学支援新制度と呼ばれ,2021年度は約32万人が利用。2022年度当初予算で約5000億円を計上した。家族構成や学部の優先枠はない。たとえば,両親と子2人の世帯の場合は年収380万円未満を基準とし,年収に応じて3段階の支給水準を定めている。
補注)昨今の日本の労働者・サラリーマン階層の場合,年収380万円という水準であるが,子どもを大学に行かせるための所得(可処分所得はもっと少なくなるが)としては,あまりにも低い。
せいぜい,その倍の金額あたりにまで引き上げないことには,単なる貧困階層への部分的な支援制度の意味しか発揮しえない。要は,奨学金という制度本来の意義が,いったいどのように発想されているのか,あるいは具体的に設計されているのかという前提からして,実に根深い「哲学の貧困」を強く感じさせる。
〔記事に戻る→〕 新たな制度案のポイントは,これを中間層へ広げるうえでの優先順位を示したことだ。
制度案は第1に,支援対象の選考では3人以上の子を扶養する家庭の学生を最優先するとした。高校生の大学進学希望率は子どもが多い世帯ほど低い傾向がある。奨学金で進学を諦める学生を減らし,経済格差の固定化を防ぐ狙いがある。
補注)厚生労働省『2019年国民生活基礎調査の概況』によれば,この2019年のデータになるが,世帯の人数別比率は以下のとおりであった。
全世帯のうち児童のいる世帯は21.7%(1122万1000世帯)にとどまり,これは1986年の46.2%と比べて半分以下に低下し,過去最少を記録した。
一方,単独世帯は1490万7000世帯,夫婦のみの世帯は1263万9000世帯で過去最多となった。
ちなみに,児童が1人いる世帯は10.1%(525万世帯),2人いる世帯は8.7%(452万3000世帯)3人以上いる世帯は2.8%(144万8000世帯)である。
つまり,いまごろにもなってから,子ども(児童)が「3人以上いる世帯〔2.8%(144万8000世帯)〕」を対象した「高校生の大学進学後押し」をするために,それも「年収に上限の380万未満」を付けて,それに給付型の段階的に差を設けた「奨学金の制度」を置くとした計画である。
いまどき,文系の学部でも,2年次から平均的には授業料関連の納付金だけで年間100万前後かかる私大はざらにある。そのなかで,チョボチョボした給付型の奨学金を,世帯の年収をさらにこまかく分類したうえで,それに合わせて段階的な制限を設けて分類し,支給するというやり方そのものが,給付型奨学金としてはみみっちい対応(発想)である。
補注)本ブログの筆者の事例が絶対的な実例ではありえないけれども,参考にまで説明しておく。だいぶ昔の記録である。
大学院時代の話であった。年間の授業料と毎月の修学費名目になる一定の金額が支給されていた。この種の給付型奨学金が本来の奨学金制度の眼目であるはずである。
貧困層の世帯の子どもたちにも大学進学をできるかぎり実現させたいというのであれば,まず成績(高校段階でのそれ)を基準にして「これが一定以上のある高校生」に対しては大学進学後,1年次については納付金全額(入学金と授業料など)くらいは,最低限,支給したらよい。
世帯主(保護者)の年収だどうだこうだいっているようでは,奨学金本来の目標は実現しづらい。つまり,年収制限など要らない。裕福な世帯の子どもたちが給付型の奨学金を支給されていけないというべき「絶対の理由はない」。
前段(「本稿(前編)」のこと)で紹介した兵庫県明石市の子ども手当関係の福祉政策は,所得制限いっさいなしという市長の説明があった。もちろん,そのために財源が必要不可欠であったが,公共部門の事業費に大なたを振るい,予算そのものは難なく都合・調達したという。
日本国の財政次元でも同じ采配はやる気さえあればできる。防衛費2倍をこのさき5年間かけて実現する気があるならば,文教予算で大学生・大学院生向けの給与型奨学金の制度を拡大・充実することなど,格別困難な仕事ではない。
補注)まだこの※-1の途中だが,ここで関連した別の記事を挿入する。『東京新聞』2022年11月23日 06時00分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/215533 の議論である。
この記事の題名は「『防衛名目』で予算膨張,国民の税負担増す恐れ…でも財源や規模は示さず 敵基地攻撃提言の有識者会議」。
防衛力の強化に向けた政府の有識者会議は〔11月〕22日に公表した報告書で,反撃能力といいかえた敵基地攻撃能力の保有は「不可欠」と提言した。
保有を既成事実化したい岸田政権の姿勢が一段と鮮明になったが,予算面で新たな枠組みが盛りこまれたのも特徴だ。研究開発や港湾整備など,防衛費の本体以外でも必要と判断すれば,優先的に予算を振り向けることを明記。
現時点で規模は示さず,大盤振る舞いで関連経費が膨張する可能性があり,その分は国民負担に直結する。
◆-1 4項目,5年間の特別枠
有識者会議の報告書は,優先的に予算計上する「総合的な防衛体制の強化に資する経費」として,科学技術の研究開発,公共インフラ整備,サイバー安全保障,抑止力強化のための国際的協力の4項目を列挙している。
いずれも防衛省以外の省庁が主に所管する分野だ。
4項目には今後5年間,予算の要求段階で特別枠を設け,増額させる仕組み。岸田文雄首相は報告書を受け取り「(省庁の)縦割りを排した総合的な防衛体制の構築の検討を進めたい」と応じた。
国の予算は各省庁が要求し,財務省が査定する。特別枠が導入された場合,「防衛」に関連づければ認められる可能性は高まる。(以下は重荷小見出しのみ中心に紹介する)
◆-2 台湾有事想定の港湾補強も
特別枠は,防衛力を5年以内に強化する政府方針を踏まえた措置だが,反映されるのは2024年度予算からの見通しで,どこまで膨らむのかは分からない。
◆-3 財源に「幅広い」増税浮上
財源が見通せないまま,巨額の支出につながる議論が先行している。(引用終わり)
要は,岸田文雄政権にとって「5年の計である軍事予算」は,このように目前の課題となっていた。日本側がアメリカの軍需産業から兵器・武器など軍需物資の調達・購入するに当たっては,アメリカ政府を仲介させて迂回するたかたちを採っている。
ということは,日本が「アメリカ政府の示したその言い値」のまま軍需物資を購入する場合,すなわち先方主導の,それも「中抜き・し放題」の商取引がなされる。だから,日本は一方的に異様に高い価格での調達を迫られ,しかもこれを甘受するほかない立場を強いられている。端からみていれば,相当に景気よく「爆買いする」日本の立場がめだつはずである。
もしかすると(多分?)日本政府は,防衛費の問題に比べて,文教予算を「百年の大計」として計画し,実行することなど,想像すらできない問題とみなしているのか?
補注)こうした恣意に流されているのかと思わせるほどに防衛予算を膨張させる計画に対してては,『しんぶん赤旗』の場合,2019年3月26日の時点ですでに,つぎのように批判していた。まだ安倍晋三が政権の座に居たころの報道であった。
米国製兵器の “爆買い” など安倍政権による大軍拡の予算案に反対する「武器より暮らしを! 市民ネット」は〔2019年3月〕25日,増えつづける軍事費を削減し,教育と社会保障の予算を拡充するよう求める7091人の署名を防衛,財務,厚生労働,文部科学の各省に提出しました。
注記)「高額兵器よりくらしに 教育・社会保障の拡充要求 市民団体 国に署名提出」『しんぶん赤旗』2019年3月26日,https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2019-03-26/2019032604_01_1.html
今月(2022年12月)になると,『しんぶん赤旗』2022年12月6日に報道された記事は,岸田文雄政権が安倍政権のそうした軍拡路線を継承した政治路線を,つぎのようにあらためて批判しなおしていた。
以上の記事に即していうと,給付型奨学金の財源確保・充当資金捻出は,「歳出改革,剰余金や税外収入の活用,税制措置など歳出歳入両面の具体的措置について,年末に一体的に決定するべく調整を進めること」で,やはり一気に実現可能になるのではないか。
奢侈税を設けてその資金(基金)を調達するもよしであり,本気になれば消費税1%分(現在の10%からのそれ)を育英費にまわす奨学金制度など,難なく実現できる。
軍拡ばかりに乗り気になっているその姿勢の10分の1でいい,少しは「百年の大計」である教育問題に本気で取り組まないことには,少子化が急激に進むこの国であるゆえ,その軍拡をするまでもなく衰退途上への歩調を速めるばかりである。
にもかかわらず,どこになにをどのように予算を立て,向けるべきか,近視眼の観点しかない。アメリカの意向であれば岸田文雄の「聞く力」は衰えていない。
〔ここでようやく記事に戻る ↓ 〕
ただし,児童の対象となるのは18歳未満の子に限られるため,大学生など18歳以上の子を養う世帯は含まれていない
第2に理工農系学部の学生も支援対象とし,私立と国公立では一般的により授業料が高い私立の学生を手厚く支援する。政府が重視するデジタルや脱炭素といった成長分野の人材育成を念頭に置いた。
奨学金の対象とする年収基準をどこまで引き上げるかが焦点だったが,制度案は提示を見送った。財源の消費税収に限りがあるなか,基準しだいで必要な予算が変動するため政府内で調整する。
会議では「ボリュームゾーンの年収600万~700万円の層まで支援するのが望ましい」との意見が出た。
補注)この意見は本ブログの筆者の考えに近い。その所得層であれば,子どもを大学に通わせる世帯が多い。だが,この程度の年収水準まで引き上げたところで,給付される金額そのものを再度こまかに分類し,減額するやり方では,奨学金本来の目的は中途半端になるどころか,効果が大幅に薄らぐほかない。
軍備のための兵器や武器を買うために大盤ふるまいで予算を充てられるくらいならば,ついで文教予算のほうでも少しは真似て奨学金用に,その調子で景気よく予算を確保・執行することにしたらよいのである。
ところがそれとも,日本の最高指導者は「国家の運営を世紀単位の視野」で観ようとすることなど,「もとより無縁の連中」だということであった。
政府内では,私立高校の授業料が実質無償化される年収水準と同程度の年収600万円前後を基準とし,支援額を低所得層の上限(約160万円)の4分の1程度とする案などが浮上している。
補注)前段補注と同旨の指摘になるが,この程度のちびた発想では,一国の教育問題を飛躍させうる展望をもたせることは,とうてい不可能である。教育は投資である。
投資だから,そのすべてがなんらかのかたちで,ただちに成功につながりうるわけではない。しかし,この点を併せて呑んだうえで,大きな視野に立ちおこなうのが奨学事業であったはずである。
奨学金を貸し付けてあとで返せなといったふうな,日本学生支援機構のサラ金まがいの事業展開は,その資金の一部を銀行筋から借り入れている実際に照らしてみても,邪道であった。
分かりきった理屈であるが,教育にはお金をかけろといわれつづけてきた。この「教育問題」にとって「要衝となる核心」を理解できもしない,感知すらできない日本の最高指導者たちだからなのか,「ロシアのプーチン」がウクライナ侵略戦争を起こして以来,軍事費の拡大ばかりに関心を向けてきた。
それも,安倍晋三がトランプが大統領のときに約束してしまった「爆買い」のための軍事費予算を,岸田文雄政権も無条件に継承した。岸田が菅 義偉の後継者に決まったとき,アメリカの高官がすぐ日本に来て,そのことを念押ししていた。岸田はうなづくしかほかにできなかった。
防衛問題に関して日本が,自国なりの軍事観にもとづいて判断をしたうえで,アメリカが兵器・武器の「爆買い」をするのでもなく,ただトランプがこわいおじさんだといって,びびっていた安倍晋三(元首相)が非常に割高な買い物することを事前予約していた。
その意味でも売国奴であった「安倍晋三の現役時におけるそうしたお買い物行動」は,まさしく「無駄づかいの,愚の骨頂」でしかなく,「われわれの血税」浪費になっている。
日本政府は,奨学金を給与型で支払う制度を本格的に導入しなければいけない教育界の必要など,完全に無視したまま,あいもかわらず貸与型奨学金を基本にした育成事業体制を維持している。
※-2 21世紀,没落への道を歩むこの国
このままだとこの日本国は,前世紀末に,森嶋通夫が『なぜ日本は没落するか』 岩波書店, 1999年(岩波現代文庫,2010年)を公刊し,警告した「日本没落の行程」を,とてもではないが食い止められない。
前世紀の末の10年間に始まった「日本国の失われた10年」というものは,その後3周回を重ねてきた。2020年代にその周回をさらに足していくような風景が広がっているではないか。森嶋道夫の予告どおりに,最近のこの国はヨタヨタしだしている。
森嶋通夫は2004年に公刊した『なぜ日本は行き詰ったか』(岩波書店,村田安雄・森嶋瑤子訳)は,21世紀に入ってから公刊された本だが,つぎのように「日本を問う」著作であった。
すなわち,「1980年代まで続いた日本の『成功』が,1990年代に停滞し,21世紀に入ってもなお立ちなおることなく,ますます深みにはまっているのはなぜか」という点に関してとなれば,
「経済的に分析し,そこから将来を予想するという方法はとらず,歴史学,教育学,宗教社会学などにもとづく,より広範な日本分析を試みた」というのであった。
さて,森嶋通夫のこの 『なぜ日本は行き詰ったか』に対して寄せられていたアマゾン書評のなかに,つぎのように感想を寄せていた読者がいた。この感想文から,冒頭と末尾の部分を除き,3分の2ほど引用する。
注記)この書評の寄稿者は「Kohei-S ベスト 1000レビュアー 5つ星のうち5.0 日本は長期的に没落する」2017年9月20日。
最後に出てきた文句「社会の経済的心理的な二極化」とは,社会学者が表現していた「格差社会」のことである。これはいまでは,日本の経済社会を真正面から捕捉した用語となり,定着した〈ことば〉である。
以上の書評にも表現されているこの現状日本のダメさ加減を,どうしたら少しでも改善していくかという課題は,これからでも遅くはないと考え,「教育百年の大計」という基本理念を踏まえた文教政策を推進するほかあるまい。
軍事問題の時代枠組はせいぜい10年単位である。だが,教育問題のそれは100年単位である。だが,前者が後者を矯める国家政策を典型的に採っているのが,いまの日本の政治・行政の具体的なありようであった。
さて,※-1の冒頭から引用していた「記事・本文」がまだ残っていた。これを最後に引用することになる。
〔記事に戻る ↓ 〕
文科省は年収基準が定まったのち,奨学金業務を規定する日本学生支援機構法の施行令などを改正し制度を具体化する。
政府が奨学金拡充に動く背景にあるのは学費の上昇だ。2021年度の私立大授業料は平均約93万円で,2011年度(約86万円)から8.5%増加。
値上げする国立大も相次いでいる。一方で賃金は伸び悩んでおり,中間層でも大学進学に伴う家計への負担は重い。
給付型奨学金の拡充により大学への公的支出が増えることになる。
少子化が進むなかで学生集めに苦慮する大学は増えており,奨学金の拡充策が教育の質が低い大学の救済措置とならないようにする制度設計が重要だ。
補注)この「奨学金の拡充策が教育の質が低い大学の救済措置とならないようにする制度設計が重要だ」という点を反映させた対策を設計することは,それほどむずかしい条件ではない。
ところで,この「教育の質が低い大学」とはなにを意味し,具体的に指すかという関心事は,事前にきちんと定義づけしておき,その判断基準や評価方法も準備しておく必要があるが,この問題がいかほど整理されているかといえば,実際には皆無である。
〔記事に戻る→〕 会議でも「経営難を脱するための制度利用を防ぐことも必要」という意見があった。奨学金が使える大学や専門学校などは全国に約3000校あるが,経営判断の指標となる定員充足率が低い学校もある。文科省は定員充足率など学校側の要件を厳格化する。
筑波大の金子元久特命教授は「中間層でも教育費支出は大きな負担になっている。わずかな年収の差で給付型の対象にならない世帯や学生が不利になりすぎないように,貸与型の奨学金も含めて高等教育費にかかる制度全体の改善が必要だ」と指摘する。
補注)この金子元久の指摘はまったくそのとおりである。要は,この奨学金の問題を,ある意味では踏み台にしたうえで「貸与型の奨学金も含めて高等教育費にかかる制度全体の〔抜本からの〕改善が必要だ」という経緯になっていた。
つまり,抜本改革が迫られている課題があったが,日本の大学制度は私立大学などの問題があって,及び腰である。《専門職大学》いう新しい種類の大学などが2019年度から発足していたが,これは屋上屋を架した「高等教育制度」の派生であった。
〔記事に戻る→〕 高等教育費の負担のあり方は税制や福祉政策の違いから各国で大きく異なる。経済協力開発機構(OECD)によると北欧は高い税率を課す一方で学費を無料とする国が多い。学費のうち家計負担の割合は英国(54%)や日本(52%),米国(44%)などがOECD平均(22%)を上回る。
金子特命教授は「公的支出を増やす方向に進めるのであれば,進学率への影響など社会に還元される成果を検証したうえ,国民のコンセンサスをえながら具体的な制度づくりをすべきだ」と話す。(引用終わり)
こんなそんな議論をしている最中にも,この国全般にわたる経済・社会地盤の沈下現象そのものがやまないでいる。
軍事費(防衛予算)を増やそうとする大いなる欲望に少しでも倣って,文教予算もただちに大幅に増やし,抜本対策を講じていかないことには,日本の高等教育に固有であった「勉強をろくにしない学生の問題」や「非一流大学の無用の問題」などは,いつまでも経ってもこの国の教育問題として残置されつづけ,その改善じたいすら先のばしにされるだけである。
そうこうしているうちに,この国は本当に沈没するかも……。そのとき,戦争に役立つはずの兵器や武器など,なんの役にもならない。しかも,18歳人口の源泉となる新生児の出生数は最近,みごとなまで減少傾向を表現してきた。
防衛費(軍事費)を倍増する意気ごみを,その物的装備品の領域だけで受動的に迫られて発揮したところで,現在でも定員を満たせていない自衛隊3軍の人員である。どのような軍備を計画し,どのような防衛構想を戦略思想として抱いているのか,いまなお「米軍のフンドシ担ぎ軍」をかかえている日本国防衛省が,明確に展開できていない。
『防衛白書』はもちろん毎年発行されているが,アメリカ太平洋軍の手足になるべき実際の戦術的な位置づけをされている自衛隊3軍であるゆえ,この日本国の軍隊組織の本質的な意味を解釈するには,専門家である学究のより念入りな分析・解明が要求されている。
最近というか今日たまたま,広告関係でみつけたばかりだが,こういうたぐい本が販売されていた。今日の話なので,その中身は未見である。
ジャニーズ・ハンドラーズの1人,マイケル・J・グリーンが2023年8月に,『 安倍晋三と日本の大戦略-21世紀の「利益線」構想』上原裕美子訳,日経BPを,公刊していた。
しかしながら,このグリーンはよくぞ,このアベ・ヨイショ本を,恥ずかしげもなく書いたものである。そういった第1印象を強く抱いた。
この本の執筆者としてのグリーンは,故安倍晋三(など!「日本の首相」たち)のことについて,実はたいそう上から目線で「バカにしか日本の総理はやらせない」などといい放っていた。
そのうち古書街の店頭にゾッキ本あつかいされ,50円くらいで売っていれば,これを「必らず買っておき,部屋のどこかに積んでおき,いつかは読みたくなる本」の1冊として記憶しておこう。
最後につぎの画像資料は,前段グリーンの本が副題のなかに使ってい用語「利益線」に関した解説文である。
最後に古関彰一『対米従属の構造』みすず書房,2020年という本を挙げておきたい。興味ある人は専門書であるが,ぜひとも読んでほしい本として推薦したい1冊である。
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