厚黒学(本紹介)

厚黒学(こくこくがく)は、中国の作家である李宗吾(リー・ゾンウ)によって創作された概念で、彼の著書「厚黒学」において詳述されています。この学問は、個人の野心や欲望を達成するために用いられる狡猾さや冷酷さを肯定的に捉え、それらを戦略的に利用する方法を教えるものです。

厚黒学の根本的な思想は、「厚顔無恥」と「黒心」の二つの概念に基づいています。「厚顔無恥」とは、厚かましさと無恥、つまり恥を知らないことを意味し、自己の利益を最大化するためには、面の皮が厚く、恥知らずであることが求められるとされます。一方、「黒心」とは文字通りには「黒い心」を意味し、冷酷で無情な心を持つこと、すなわち目的のためには手段を選ばず、他者の感情や福祉を顧みない態度を指します。

李宗吾は、これらの特質を持つ人物が社会的、政治的に成功する傾向があると主張しています。彼の見解では、歴史上の多くの成功した人物、特に政治家や指導者は、これらの特性を巧みに利用して権力を握り、自己の目的を達成してきたとされます。

しかしながら、厚黒学は道徳的、倫理的な観点からは非常に問題があるとされています。自己中心的で無慈悲な行動が肯定され、人間関係や社会の健全性を損なう可能性があるためです。この学問は、目的達成のためには手段を選ばない現代社会のある種の風潮を象徴しているとも言えます。

また、厚黒学は現代のビジネスや政治の世界において、権力を得るための戦略として取り上げられることもあります。これらの領域で成功するためには、時には厚かましさや冷酷さが必要であるという考え方です。しかし、このような手法を取ることは、長期的な信頼や人間関係を築く上での障害となり得ることも重要なポイントです。

最終的に、厚黒学は道徳や倫理を超越した、権力獲得のための戦略として語られることが多いですが、その教えが普遍的な価値観や社会的な調和と相反する可能性があることを理解することが重要です。そのため、この学問に対する深い理解と批判的な観点を持つことが、現代社会においては特に求められていると言えるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?