こんなに死にたい夜なのに。

強い風。
窓の外で風が鳴っている。
その音に合わせて嗚咽を隠してみる。
誰も見ちゃいないけど。
まだ救われたいだとか思ってしまう私は、いつまでも誰かに見つけてほしい。
それが嫌だから、救う側になろうとしたのに。
水の音。
暗い部屋に反響している、律音。
身体の輪郭がはっきりしてしまわないように光から逃げる。
輪郭を知覚しないために目を閉じる。
誰も私を見ないで。
そうやって思うのと同じかそれ以上に、私は私を見て欲しいらしかった。
必要とされたい。
あぁ、でも必要としてくれる人に応えられる力なんてない。
風で冷やした本能は、内側から熱を帯びて。
ずっとずっと、承認してくれる誰かを待っている。

承認に足る価値がありますか?

いいえ。
だって、だって必要じゃないから求められないんだもの。

求められないから、こんなふうになっちゃったんだね笑。
自分を傷付けて、それを人に見せびらかして、それで満足?

いいえ。
なにをしたって満たされないから。

そんな欲深さだけは人並みなんだね。

欲深いのかな。
私はただ、求められた役割に応えたかっただけで…。

違うね。最初から求められてないんだから。
優しい人の優しさにつけこんで、その押し付けがましい優しさを対価に受け入れて貰おうとしたんだ。
迷惑だよハッキリ言って。みんな優しいから言わないけど。
かわりに私が言ってあげる。

あぁそう。ありがとう。
じゃあ私はどうすればいい?

死ねばいいじゃん。

そうだね。

本能なんて早く氷漬けにしてさ。
そしたらきっと楽に死ねる。

……。
目を開けてみる。
風が吹いて、身体の輪郭が明確になる。
手の形が、みんなと同じ形。
あぁ、やっぱりそこには本能がある。
無意識がある。
人のぬくもり。私のぬくもり。
一番嫌いな暖かさ。
本能が息をして、身体に酸素が回った。

どうせ死んじゃうのにまだ生きるんだ。
苦しむために生まれてきたみたいだね。

………………。

だからもう被害者ぶるのは止めなきゃね。
だって、生きるのを選んだのはお前なんだから。

私は、返事もしなかった。
簡単な厭世観で自分を慰めるだけじゃ満足出来ないから。
自傷行為も飽きたら次は何をしようか。
どうせ都合が良い玩具を見つけられるんだ。生きている限りは。
何もかも平等に許せないなら、なんだって同じだもの。ただの暇潰し。
ただ今は、昔の傷口が暖かいからそこで眠ろうね。

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